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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第六章 ダンジョン編
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第110話 一撃必殺の剣

 レオは少し遅れてブツブツ呟きながら巨大なモンスターがいる方向に歩いている。


「セキト、セキ、セ・・・、セッキだな」

「レオ、何ぶつくさ言ってんのよ?」

「これから戦うやつは大きさからして巨大だよな?

 余裕がないときの為にセキトモの呼びやすい名を決めておこうと思ってな。

 セッキにした」

「セッキにしたって・・・。う~ん、セッキか。案外いいかもね」


 ロッカは先を歩いているトウマとセキトモに向けて声をかけた。


「セキトモ、これからあんたはセッキね」

「は?」


 戦闘時はセキトモさんをセッキと呼ぶって事か。

 そう言えば短く呼ぶの課題の一つだったな。

 セッキ! お、意外と呼びやすいかも。


 4人は暗がりの中、巨大なモンスターの姿が分かる位置まで歩を進めて近くにある岩陰に身を隠した。大声だと反響するが会話は聞こえない程度に離れている位置だ。

 奥の通路のランタンの明かりもあるが周囲には少しヒカリゴケも生えていて何も見えないという訳ではなさそうだ。


「蛇ですね」

「頭3つあるね」

「多分、そんなやつ滅多にいないわよね。

 クエストにあった『三頭の巨大蛇』で間違いないでしょ。

 確か難易度はBだったわね」


「もしかしてあの蛇がいるせいでこっち側のランタン消えてたのかな?」

「あり得ますね。あんなのがいたら気軽に通れないだろうし」


「大きさは宿場町近くの泉にいた毒蛇と同じか少し大きいくらいかもね?

 頭はこっちのほうが小さいか」


「ほう。お前ら近いサイズのやつを倒したことあるのか。

 で、そいつはどうやって倒したんだ?」


「罠仕掛けてイズハの糸で尻尾側を切って、トウマが食われて中から切った」

「ロッカ、言い方! 省略し過ぎだって」

「トウマ、もう一回いけるか?」

「いけるわけないだろ!」


「そうか。ならこのメンツだと右がセッキ、中央がロッカとトウマ、左がオレだな。

 蛇は動くし、巻き付きや、尻尾の薙ぎ払いも警戒する必要はあるが、基本は対象の蛇頭を狙え」


「どういう事?」


「三つ同時に来たら中央の蛇頭と対峙してる二人はお手上げになるからな。

 左右の蛇頭が中央にいる二人を狙ったときに防ぐのがオレとセッキの役割だ。

 防ぐだけならセッキは中央でいいが攻撃するなら外側がいい。武器が長いからな。

 相手が複数体なら左配置のほうが無難なんだが今回の相手は頭3つでも1体だ。盾で2方向の攻撃を防げる右に配置するのが最適だろう。

 オレは左で問題ない。大剣は盾としても使えるし、内に斬りこむより外に斬ったほうがお前らへの被害が少ないからな。

 そんな感じだ」

「なるほど」

「へ~、レオ、案外考えてるのね」


 戦闘に関してはリーダーっぽいこと言うんだな。

 レオは俺と違って名ばかりじゃないのか?


 まずはロッカとトウマが正面から蛇の注意を引く。蛇が警戒しているうちにレオとセキトモは左右に別れて壊されない程度の位置に手持ちのランタンを設置し、明かるさを全開にしてから総攻撃という作戦だ。


「準備はいいな? 行くぞ!」

「「おう!」」


◇◇


 概ね作戦通りに始まった戦闘だが、三頭の巨大蛇は手強かった。


 レオが最初に左側の蛇頭に対して下から大剣を振り上げると、鼻先をかすめて深い傷を負わせた。しかし、その後左側の蛇頭はレオを警戒して少し引いて待機している状態を続けている。逃げたくても繋がったもう二つの頭がそうさせてくれないといった感じだ。レオが最初につけた傷はブクブクと泡を立てて修復が始まっている。


 一方、右側の蛇頭の相手をしているセキトモは攻防を繰り返している。右側の蛇頭はセキトモの攻撃によって傷だらけになっているが表皮が堅いようで深い傷まではつけられていない。何度もセキトモに襲い掛かっている。

 蛇頭の胴体は他の2つと繋がっているのでどこまでも追いかけてくることはない。全体重を乗せた突撃をしてくることもないので押し込まれずに戦えているようだ。


 中央の蛇頭と対峙しているロッカとトウマは上手く連携が取れずにいた。阿吽の呼吸とはいかない。それはお互いに突然真魔玉を使った攻撃をしないか注意を払っているからだ。

 トウマの炎熱剣、ロッカの電撃の双剣、二つの技はモンスター以外にも影響が出てしまう。互いに気を使って戦闘がぎこちないのだ。


 レオは少し退屈そうにしているが左側の蛇頭の警戒は怠っていない。


「お前ら、二人なんだからさっさと中央片付けろ。

 オレとセッキの働きを無駄にするんじゃねーよ」


「分かってるわよ!

 トウマ、このままじゃ埒があかないわ。

 堅いけど互いに真魔玉の力は使わない。ブーストのみで戦うわよ!」


「分かった!」


 襲って来た中央の蛇頭を左にかわしたロッカ、盾で受け流して右にかわしたトウマ。二人は左右から同時に蛇の目を狙って斬り裂いた!

 二人の剣の薄白い輝きが炎のように揺らめいている。


 両目を失った蛇は悶えながら大きく上にのけぞった。


 ロッカはそのまま三又に分かれている胴体に向けて走った。


「もう時間がないわ。皆、離れて!」


「おい、まさか」

「さっき、使わないって言ったばかりじゃん!」


 セキトモとトウマは急いで蛇から距離を置いた。


「痺れて貰うわ!電撃の双剣(ツイン・ボルト)!」


 ロッカの抗魔玉の力の残り時間は2分。残り全てを使ったブースト2倍の攻撃だ。


”バリリッ・・・!!”


 三頭の巨大蛇の全身にプラズマが走った。


 ロッカの左右の連撃により蛇の表皮はそれなりに裂けたが三又の部位は他より堅く奥深くまでは斬り込めなかったようだ。双剣の短さとロッカの軽さも関係しているだろう。


”ズシン!・・・”


 蛇の三つの頭が地面に落ちた。蛇は痺れている。


「今よ!」


 すぐに動いていたレオは左側の蛇頭を真っ二つに叩き斬った!


 セキトモは最大火力を出す為、慌ててショートグレイブに戻している。


「炎熱剣!」


 トウマが先に中央の蛇頭の首を一刀両断! 切り口から炎が噴き出した。


「重撃飛槍!」


 セキトモの一撃により、右側の蛇頭が粉砕された。


「終わったか?」


 だが、蛇の胴体は霧散しなかった。


「こいつ核は頭に持ってないようだわ。一番堅い三又の胴体部分にあるのかも。

 まだ痺れてるみたいだからレオとどめさしてよ。

 大剣でブースト使えば胴体の奥まで斬れるわよね?」


「何を言ってるんだ? ロッカ、オレはブーストなんて使えんぞ」

「ウソ?! 使えないの?」


 トウマとセキトモも驚いた。


「クルーロが使えるからてっきりレオも使えると思ってた」

「僕もだ」


「要は今より火力を出せればいいんだろ?

 一斬りで十分だ。お前ら少し離れてろ」


 そう言うと、レオは抗魔玉を付け替え、真魔玉【赤】を装着した。大剣を両手で上段に構えたレオは蛇の胴体に向けて凄まじい勢いで大剣を振り下ろす。


「すべてを焼き裂け、『剛炎剣』!」


 レオの大剣が振り下ろされる途中で刀身が発火、炎に包まれた大剣は蛇の胴体を真っ二つに斬り裂き、剣先の届いていない尻尾の方まで炎の斬撃が伸びて斬り裂いていった。

 地面にも亀裂が入るほどの一撃必殺の剣だ。


”ゴゴゴゴゴ・・・”


「あっつ!」


 凄まじい炎が二つに割れた三頭の巨大蛇を丸焼きにしている。


「むちゃくちゃじゃない! なんなのよ、このでたらめな炎は」

「・・・もう、凄いとしか言えない」


「オレのパーティーではこれを使っても誰も被害は被らないぞ。最前線がオレだからな。まぁ、かわされたら浄化する対象がいなくて周りがしばらく火の海になる」


「それって速いモンスターには危なくて使えないじゃない!」

「だな。わはは」


「しかし、同じ真魔玉の力なのに炎熱剣とは違うんだな」


 炎熱剣は衝撃による真魔玉の力の放出であり、熱で斬り進んだ切り口からの発火だ。しかし、レオの大剣は大気を斬り裂かずに叩いてしまい、モンスターに当たる前に真魔玉の力が放出される。

 そしてモンスターに当たるとまた真魔玉の力が放出され一度の斬りこみで2回分の力を消費しているとのことだ。

  誰でもできる訳ではない。大剣を軽々と扱えるレオの振りの威力が凄過ぎる故の特殊効果のようだ。


 剛炎剣か、凄い威力だな。

 でも使いどころは難しそうだ。影響範囲が広過ぎるよ。


 三頭の巨大蛇は消えゆく炎と共に霧散していった・・・。


 三頭の巨大蛇の落とした魔石とタグは燃えカスにならずに残っていた。魔石は魔石・大が1個と他にも魔石・小が十数個落ちていた。


「狭い場所だったら私たちまで危なかったわね」


「レオ、さっきのがブーストじゃないとしても使う場所は考えてくれよ。

 僕たちまで巻き込まれてしまいそうだ」


「分かってるよ。これでも使う場所は選んでるんだ。

 なかなか出す機会がなかったからな。久しぶりにスッキリしたぜ」


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