白
3日間に及ぶ誕生日パーティーもおととい無事に終わり、俺は今日から家の庭で魔法の練習が始まる。
家庭教師についてくれるのは、王宮魔術師のジョンさん。
ジョンさんはこの国のたった一人の大魔導士でもあるすごい人だ。
ちなみにこの世界では、魔法を使えない人がほとんどである。魔法には水、火、光、風、土、緑の6属性があり、これらのどれか1つを使えれば貴族になれる。そして3属性以上使えるのが大魔導士、全部使えるのが勇者と呼ばれる。ちなみにお父さんは土、お兄ちゃんは緑の魔法を使える。
「ジョンさん、今日からよろしくお願いします。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
「ミナト、この先生は僕も教えてもらっていたんだ。先生、ミナトは僕とは比べ物にならないほどすごいんだよ、絶対びっくりするから!」ノアが言った。
「そうなんですか??ノアさんよりすごいとは、期待できますね。しかし魔力が少しも感じられませんが、、、。」
「だってよミナト。力見してあげなよ。」
俺は生まれた後からほかの人に魔力量がばれないように魔力制御で力を隠していた。
俺はびっくりされないように、少しだけ魔力を開放してみた。
―――ズンッ、パアッ
「こ、これは、、、」
俺が魔力を開放した瞬間、反動で曇っていた空が真っ二つに割れて太陽の光が差し込んできた。
「すごい、こんな魔力量初めて見た。」
「ミナトはきっと神様に愛されているんだよ。」
ははは。その神様が俺なんだけどね。
「主~。こんな魔力地上の人間が持ってるわけないよ。力隠す気あるの~?」シロが小声で言ってきた。
少ししか魔力開放してないのに天が割れてしまったなぁ。シロにもバカにされたし、もっと調整しないと。
「ミナト君、魔力を抑えてくれるかな。怖くて先生ちびりそう。」
「わかりました。ご迷惑かけてすみません。」
「いやいや、迷惑だなんて。しかし魔力制御なんて高等魔術なのによくできるね。先生の教えることあるかなぁ。」
「先生にはないかもね~。」
「こらノア!訓練に行く時間だろ!いつまでもミナトのじゃましないの!」
「え~、父さん、もうちょっとだけいいじゃないか。」
「まったく、ノアのことになるとわがままになるんだから。」
兄さんがお父さんに引っ張られていった。
「それでは、何の属性魔法が使えるか調べていきましょう。手のひらを上に向けて魔力を手の先に流すイメージをしてください。魔力の属性によってその色の炎が出るはずです。」
俺はやってみた。
―ボァッ
「な、なんと、、、。これは、白ですね。初めて見ました。」
「これは何の属性ですか?」
「わからないです。普通は1つの属性ならその魔法の色になりますが、白はどの属性にもないです。2色以上ならその属性の色を混ぜた色になります。勇者は虹色を出すそうです。そして聖女は透明。白は何でしょうか。とりあえずすべての属性を試してみましょう。」
「主は勇者の力のほかにも神聖力とか何でもできちゃうから多分白になっちゃったんだね。僕主とおそろいの色だ~。やった~。」
「まずは水魔法からやっていきましょう。全身に魔力を満たすイメージをして、手のひらにその魔力を流すことを想像したら、向こうにある的を狙って打ってみてください。もし水属性なら水が出るはずです。」
「わかりました、やってみます。」
津波くらいの威力があれば一流って聞いたから水鉄砲くらいの威力にすればいいかな。
「主、嫌な予感する。」
―――スパァン!
よし、これくらいなら大丈夫だろう。
「なんと、この速さでど真ん中を板を割ることなく打ち抜いている。私でさえ板にひびが入るというのに。」
「え?!そうなの?!津波くらいの威力で打てるんじゃないの?!」
「それは神様に力を与えられた勇者のみがなせる業です。今の世界に1人しかいませんよ。」
そ、そうだったのか。またやりすぎた。
「ほらいったじゃん。主のバカ。」
「水属性だとわかりましたが、一応他の属性もやってみましょうか。次は火の魔法をやってみましょう。やり方はさっきと同じで、火で何か形を作ってみてください。こんな感じです。」
そういって先生は炎でクマを作り出した。
「すごい!クマすっごく強そう!」
「はい、クマはライオンやワニと並ぶ1番強い火魔法の動物です。」
「そうなんだ!じゃあ先生とってもすごいんだね!!!」
「ありがとうございます。」
「さすがお兄ちゃんの師匠だ!俺もやってみる!」
「主、次も絶対やらかすよ。」
シロがなんか言っているが、無視して、と。
鳥を出したら一緒に空飛べるかな。
全身に魔力を流して、
―――ボオッ
「うわぁぁぁ!ドラゴンだ!!!」
え??ドラゴンなんて出るの?
「先生、これはライオンよりも弱いですか??」
「いやいやいや、ドラゴンは伝説でしか聞いたことない火魔法ですよ!1000年前に勇者がドラゴンを出していたとかいなかったとか。」
「あーあ。主ここまでいくとさすがだね。」
「なにごとだ!!!!」
騒ぎを聞きつけたお父さんとお兄ちゃんがやってきた。
「ミナトさんが火魔法でドラゴンを出したのです。」
「はぁ?!ドラゴン?!?!あの伝説の?!もうミナトはなんでもありだな。すごいなミナト!しかし、あああ、王様になんといわれることか。」
「主とってもバカなんだよ。」
「ハリーさん。ミナトさんに教えられることは私にはなさそうです。炎魔法以外にも、水魔法が使えました。しかも炎は白色です。ミナトさんは、今まで誰にも持ってなかったすごい力があるのかもしれません。」
「白だと?!そうだな。しかしこれほどの力をもっていたらミナトの力を欲しがるものも出てくるだろう。しっかり魔力制御なども教えてあげてくれ。」
「もう魔力制御できているんです。」
「なぬ?!そ、そうか、、、。では、魔力を完璧に無にするとか?」
「それができているんです。」
「ほぇ?!そんなの勇者でも難しいといってなかったか?」
「それができるのがミナトさんです。ハリーさん。ミナトさんの力を理解するのは私たちには無理なのでもうそういうもんだと諦めましょう。」
「うんん。そうだな。」
「そうだよ、僕の自慢のミナトだからな。」
「僕の自慢の主だし!バカだけど。」
「ひ、ひどいよシロ~。」
「それより、お父さん達はどうしてここにいるの??今って訓練中じゃないの?」
「そうだ!!!ミナト!急いで家に行くぞ!」
俺たち3人は急いで家の中にいるお母さんのもとに走った。
お母さんの部屋の前に着くと、部屋からうめき声が聞こえた。
「うんんんんん!あ!あなた!生まれるわ!!!」
俺とお兄ちゃんは顔を見合わせた。
「「お母さん!がんばって!」」
―――「おぎゃー。おぎゃー。おぎゃー。」
「元気な女の子よ。この子の名前はオーロラ。ノア、ミナト、お兄ちゃんとしてこの子を大切にするのよ。」
俺は人間の赤ちゃんというのを初めて間近で見るので慎重に触れた。
―ぷにっ。
なんてやわらかくてかわいいんだ!!
俺は一瞬で赤ちゃんというもののとりこになった。