神様、赤ちゃんになる
「フォッ。フォッ。フォッ。お主は前世でたいそう得を積んだようじゃな。よし、次は勇者として転生させよう。」
そういって神様は今日も天国で死んだ者の行き先をきめるという仕事にとりかかっていた。
「ふう。やっと片付いた。暇になったのう。どれ、久しぶりに地上の様子でも見に行くかの。」
神様はペガサスにのって地上の空を飛んだ。
「人間界は楽しそうじゃ!うらやましい。そうじゃ、わしも人間になえばいいのじゃ!
わし頭いい!」
そうして神様はその日、天国からいなくなった。
―――「おめでとうございます!元気な男の子です!」
「ミナト、お前は今日からうちの子だ。」
そう、今生まれた男の子はさっきの俺、神様だ。
ここは人間界、魔物界、獣人界の3つから構成されており、俺は今までこの3つの界を見守ってきた。
俺が生まれたのはこのうちの1つ、人間界だ。
しかしここでは魔法が使える。俗に異世界といわれる場所だ。
「かわいい~!!触ってもいい?」
そういって俺のほっぺを触ってきたのは、5歳の兄、ノアだ。
ノアは剣と魔法に優れ、5歳なのに来年から騎士団の訓練に参加するらしい。
ここは人間界にある2つの国のうちの1つ、サウス王国の王国騎士団を代々つとめているマーティン家だ。父のハリーは、そのリーダーであり、王様の親友でもある。
「ノア、触りすぎるとミナトが痛いかもよ。」
そういってノアのほっぺスリスリ地獄を止めてくれたのは母のアメリアだ。
彼女もまた、王妃と仲が良い。
「それより父さん、ミナト、すごい魔力だねー。」
「ん?そうか?俺には逆に魔力がないように見えるが、、、ノアには見えるのか?」
「うん。これ以上の魔力は見たことないよ。無限にあるから上限が見えないんだ。」
「そうなのか。俺よりお前の方が魔法に優れているからお前だけ見えたのか。その魔力量なら王に報告しないといけないな。」
その瞬間、部屋が光に包まれた。
「主様。ようこそ地上においでくださいました。」
俺はめっちゃ焦った。
なぜなら今窓から部屋にやってきたこの3体の動物は、聖獣だからだ。
人間界にいるアザラシのシロ、魔物界にいるイルカのシズク、獣人界にいるオオカミのオーガだ。
それぞれがそれぞれの界を見守っている。
俺は急いで部屋の時を止めた。
「なんでお前たちがいるんだ。」
「ひどいよ主~。僕たち主の気配がして急いで会いに来たのに。」そうシロがいった。
「お前たちは人間にとって崇拝する存在なんだぞ。俺に会いに来たらおかしいだろ。」
「主様、なんで人間界に?」オーガが聞く。
「ん?暇だったから人間になるのも悪くないと思ったんだ。」
「そんな理由で来たのですか。私たちはうれしいですが天国の皆さんの慌てているのが想像できます。」シズクが言った。
「とにかくお前たち次来るときはせめて召喚獣の姿で来てくれ。みんなびっくりするだろ。」
「また来ていいのですか!それでは主様のおそばにいさせてください。」オーガが言う。
「お前は獣人界にいないとダメだろ。シズクも。」
「じゃあ俺はずっと主と一緒~。」
「シロだけずるいです。私も主人と一緒が良かったのに。」
「いつか3つの界が統合されたらそのとき一緒にいよう。」
「「約束ですよ。」」
シズクとオーガを見送り、俺は時空を戻した。
「な、なんだったんだ今の光は。」
「父さん、みて!!ミナトの隣に何かいる!」
「僕はミナト様の召喚獣、シロだ。これから主の隣にずっといるんだ~。」
「しゃ、しゃべった。召喚獣はふつうしゃべらないのに。」
「生まれた瞬間に召喚獣と契約するとは。ノアが言ったようにミナトにはすごい魔力があるようだ。ああ、王になんといわれることか。」
「ミナトは将来大物になりそうだね。」