アビボ共和国②!
こんにちは、ナコです! 私は前回、大親友のミーコを見捨てるところだった⋯⋯でも、絶対に助けるって誓った! 今から私は、アビボ共和国に行きます!
「すみません、具合が悪いので早退します」
私はそう言って教室を抜けようとした。
「ナコ、嘘ついちゃだめだよ」
ゆっこが私に言った。彼女はいつも私の家で集まっている5人のメンバーの1人だ。
「自分では気づいてないかもしれないけど、すごく思い詰めたような顔してる。さっきの電話、何だったの?」
ゆっこには全てお見通しだったようだ。
「そうだよ、私たちが気づかないわけないじゃん、友達でしょ!」
サンバサンバブンバボンバも同調している。
「みんな⋯⋯! かくかくしかじかで⋯⋯」
私はミーコのことを2人に話した。
「あさひと麤珠美も誘ってみんなで行こうよ! 5人集まれば怖いもの無しだよ! 呼んでくるね!」
ゆっこはそう言って2人を呼びに行った。でも、私は本当は1人で行きたいんだ。さっきは心配してもらって嬉しかったけど、やっぱり危ないよ。アビボ取りがアビボになることだってある。もしものことは私にだけしかあってはならない。
「ナコ、あんたまた悩んでる! もっと友達に頼りなさいよ! サンバサンバブンバボンバなんていつも私たちに頼りっぱなしだよ!」
2人を連れてきたゆっこが少し怒っている。
「そうそう、私を見習ならならならならいなさいよ!」
サンバサンバブンバボンバの奈良出身アピールがウザいが、みんな心配してくれているようだ。
「みんな、ありがとう! 私はダメだね、もっとみんなを信じなきゃ! 頼りにしてるぞ、みんな!」
私がそう言うと、みんな笑ってくれた。
「でもさ、アビボ突入するんなら私たちだけだとちょっと危ないんじゃない?」
いやそう言ってるやん。つい突っ込んでしまった。心の中だから許してね麤珠美。
「まあ、私が居れば大丈夫でしょ! どんな相手でもぶっ飛ばす!」
あさひちゃんが自信満々に言っている。そういうことではないのだ。アビボ共和国の力はそういう力ではなく、もっと特殊な、身体に悪影響を及ぼすような。
「こうなったらアイツに頼るしかないね」
ゆっこがなにか思いついたようだ。アイツとは一体⋯⋯
「今からアイツのところに行こう!」
ゆっこがそういうのでアイツのところへ行くことになった。アイツって誰なんだ。なんで説明ないんだろう。
みんなで電車に乗って、歩いて、結局私の家に着いた。なんで? うちにそんな強い人いるの? もし居たとしてなんでゆっこはアイツって呼ぶの?
「ナコ、そっちじゃないよ! こっち!」
隣の鬼屋敷さんの家の前にみんないる。鬼屋敷さんの家はごく普通の親子3人家族で、私の3歳上の海麿ちゃんとは昔よく遊んだけど⋯⋯アビボに対抗できる気は正直しないなぁ。
「ゆっこ、久しぶりだねぇ」
中から鬼屋敷家の飼い猫のしっぽが喋りながら出てきた。⋯⋯え? しっぽって喋るの!? 喋ってるの見たことないんだけど!
「ナコちゃん、驚いた? 君には私が猫に見えてるはずだよね」
見えてる? どういうこと?
「あたしも猫に見えてるけど」
ゆっこも猫に見えているようだ。
「そりゃ猫だからね」
しっぽはそう言った。何この会話。早くミーコを助けに行かないといけないのに⋯⋯
「この猫はね、『ナコの街』の作者なの」
ゆっこは当たり前のように言った。当たり前のように言うことか? 私たちはこいつの傀儡に過ぎないってこと? でも意思はある。こいつなんなの?
「どうも、七宝です。私が喋ってるの海ちゃんに見つかるとヤバいから、ナコちゃんの家に行こうか」
七宝と書いてしっぽと読むそうだ。海麿ちゃんのこと海ちゃんって呼んでるんだね。皆私の家に入ってくつろぎ始めた。
「いきなりで驚いてると思うから、軽く説明するね」
そう言うと七宝は自分がどういう存在なのか説明してくれた。600年前に3人の仲間と世界を滅ぼし、新しい世界を作ったそうで、今は6人の仲間とともに悪と戦っているらしい。世界を滅ぼしたんならお前が悪だろ。
また、140歳までは人間だったらしく、人の言葉は普通に話せるそうだ。それから猫になり、1人で世界を回ったという。その旅の途中で新たな仲間を見つけ、魔王ムナムナを倒すため、そして、海麿ちゃんをムナムナから守るためにここにいるそうだ。魔王なんているのかよ。平和な街だと思ってたのに。
「まあ生い立ちはこのへんにして、私の最大の特徴を教えよう」
七宝は基本的になんでも出来るそうだ。ビームも出せるし、魔法も使えるし、目で見たものを録画し、プロジェクターのように壁に映し出すことも出来るそうだ。しかし、頭があまり良くないのでムナムナを追い詰めるところまで行っても、毎回仕留め損ねるんだとか。長々と話したが、七宝の最大の特徴とはこの事ではなく、自身の尻尾の事だという。
彼の尻尾は70mあり、毛はいろんな商品に加工されており小動物が沢山住んでるという。門は6個あるそうで、中々豪勢な尻尾となっている。
中は意外と住みやすくて、キッチンやこたつもあれば雀荘もある。かつては七宝の尻尾をアパート代わりに借りていた人もいたそうだが、所在地がしょっちゅう変わるので泣く泣く立ち退きしたそうだ。
「さて、アビボ共和国に行くとしますか。とりあえず私の背中に乗ってね」
七宝は説明を終えると、オープンカーの形に変身した。いよいよアビボに突入するんだ⋯⋯気を引き締めないと!