三途の川
「輸血だ! 同じ血液型の人はいないのか!」
うっすらと目が見える。ここはしゅずつっちゅ、しゅつ、手術室なのかな⋯⋯
「富士通に連絡して富岳で調べてもらってくれ! 一刻を争う、早く!」
そんなに血を失ったのか。人の血を入れるのって初めてだからなんか怖いな⋯⋯富岳?
「先生! 富士通からメールで返事が来ました!」
早いな。さすが富岳。でもなんで富岳?
「先生、ダメです! 血液型ウーロン茶の人は地球上にいません!」
え? 私血液型ウーロン茶なの? あ、思い出した。気を失う前に血の匂いじゃなくてウーロン茶の匂いがしたんだ。あれ私の血だったんだ。
「クソ! どうすれば⋯⋯! 今までどんなしゅずっ、ちゅっ、手術もこなしてきたこの俺の経歴に傷が付いてしまう!」
自分のことだけかよ。堂々とそんなこと言わないでよ。でも頑張れ! 経歴が傷付かないように私を助けて!
「先生、富士通からまたメールが! 火星人の三村 良夫さんがウーロン型だそうです!」
ウーロン型って呼んでるのか。⋯⋯ってえ!? 三村くんもウーロン茶なの!? ていうか火星の情報まで調べられるのすごい!
「そうか⋯⋯あと何分くらいで着くんだ?」
「いや、それが、火星からこちらに来る手段はないそうです」
期待させんなよ!
「クソぅ! 俺が患者を救えないだなんて⋯⋯!」
先生⋯⋯
「娘に! 娘に会わせて! 部屋に入れなさいよ!」
外からお母さんの声がする。私が心配で来てくれたんだ⋯⋯うれ⋯⋯し⋯⋯
「先生、心拍が!」
「クソーーーー!!」
「ウーロン茶飲めば治るから! 持ってきたから早く部屋に入れて!」
結局、お母さんが持ってきたウーロン茶を飲んで私は一命を取り留めた。外科の先生は自分の経歴に傷が付かなくて良かったと喜んでいた。私が助かって良かったって言えよ。嘘でも。
後日、手術代と富岳の利用料9900万円を請求された。
ナコの異変①血液型がウーロン茶になった




