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ナコの街2  作者: 七宝


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12/13

日常

「フフフ、お主も悪よのう」


「いえいえ、あなた様には敵いませぬ」


「「ハッハッハッハッハッ!」」


 おはようございます、ナコです! 私の部屋の押し入れで牛丼とハンバーグが悪代官ごっこをやっていたみたいで、その笑い声で起こされちゃいました。


 でも、こんな朝って懐かしいなぁ。私が中学校に上がる時も牛丼とハンバーグが悪代官ごっこしてたっけなぁ。


――


「ナコちゃん、おめでとう!」


 裕一おじさんがお祝いの言葉をかけてくれた。


「はい、ランドセル」


 もう持ってるよ! でも嬉しい! ありがたく頂くとしますか! ムシャムシャ!


「さきいか食ったな!」


 おじさんが驚いている。私が食べていたのはランドセルではなく、さきいかだったようだ。


「ランドセルって言ってさきいか渡すんじゃねー!」


 私は嘘つきが大嫌いなのだ。それは裕一おじさんに対しても例外ではない。嘘つくやつはみんな殺す、と卒業文集に書いた。


「さきいかとランドセルの区別もつかんのか!」


 おじさんもヒートアップしてきて語気が強くなっている。


「つくわけないやろまだ中1やぞ!」


 私も反論する。高校生の今ではさらに実感が湧いている。中学生などまだまだ子どもだ。


「ところで、何のおめでとうだったんだっけ? 誕生日? 誕生日おめでとう!」


 適当に生きてきたんだろうな、この人。お祝いに来たんならせめて何のお祝いなのか把握しとけよな!


「誕生日じゃないから! 誕生日って言う方が誕生日なんですー!」


――


 さて今日は何をしようかな。また散歩でもしようかな⋯⋯プルルルルルル! 電話だ。この番号は師匠だ! 師匠から電話なんて久しぶりだなぁ。


「今家の前にいるから、出ておいで! ご飯食べに行こ!」


 ご飯に誘ってくれるなんて珍しい! パチンコで負けてばかりでいつもお金ないって言ってるのに。勝ったのかな?


「了解でーす! すぐ行きます!」


 着替えて外に出ると、ジャージ姿の師匠がいた。師匠は私より4歳上の大学4年生。就職先が決まっているので毎日パチンコ屋さんに入り浸っているらしい。夜は毎日浴びるように酒を飲むんだとか。そんな生活してるくせにこの美貌、ずるいよねぇ。


「杏仁豆腐落ちてないかなぁ」

 

 師匠が地面を見ながら歩いている。どこかに連れていってくれるのかと思ったら、また拾い食いの同行かよ。この前師匠に勧められたルアー食べてお腹壊したから怖いんだよね。


「発見!」


 杏仁豆腐落ちてたよ。落ちてるもん喰うなよな、ほんと。私が言えたことじゃないけど。


「くしゃみ止まらなくなりますよ、師匠」


「だがしかし、これも運命(さだめ)⋯⋯受け入れるしかあるまい」


 師匠は杏仁豆腐をぢゅるぢゅると口の中に吸い込んだ。とても幸せそうな顔をしている。杏仁豆腐美味しいもんね。


「びゃっひょい! ばぁっひょい!」


 ほら言わんこっちゃない。あ、プリン落ちてる!


「師匠、プリン落ちてますよ! 食べますか?」


「お前が食え。それもまた運命」


 仕方ない、食べるか。うん、美味しい。外プリンにしてはなかなかの味なのではないだろうか。


「師匠、おしっこが止まらなくなりました!」


 くしゃみのほうがマシだった。


「フッ⋯⋯さすが私の弟子。立派だ」


「師匠、またよろしくお願いします!」


 ということで、師匠と別れて家に向かう。結局散歩することになったね。裏の道から帰るかな。


「お、ナコちゃんじゃないか! 獲れたてのトマト、食ってくかい?」


 農家のおじさんだ。いつも何かしらくれる人。美味しいけど、私はトマトが嫌いなので今日はスルーしたい。


「ごめんなさい、私トマト苦手で⋯⋯」


 こういうのは正直に言った方がトラブルとかにもならなくていいのだ。


「トマト嫌いなのか! それは良くない、緊急手術だ!」


「トマト嫌いを治す手術なんて聞いたことないですよ!」


 聞いたことあっても嫌だけどね。


「いや、そうじゃなくて。トマト食べないなら胃要らないよね。だから手術で取るね」


 私は全力で走って逃げた。2kmくらい走ってようやく家に着いた。いい運動になった! ありがとうトマトのおじさん!

 けっこう私誤字に気づかないので、感想ページで教えていただけるとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  嫌いな食べ物は申告しといたほうが、お互いのため。  勉強になりました。  私、嫌いなものないや。
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