かぐや姫=ウサギ
「なあ、俺思ったんだ」
神妙そうな顔をして、皇太は語り始めた。無論、隣にいる少女に向かって、である。
「なに?」
「かぐや姫って、ウサギじゃないか?」
「病院行く?」
皇太に対して冷たく返した少女。彼女はかぐや、皇太の生まれたときからの幼馴染である。
「大丈夫、俺はまともだ」
「とてもそうとは思えないけど?」
「かぐや姫って月に帰るだろ?」
「そうだね。確か月からやってきた天女達に連れ戻されるんだっけ」
「そうそうそれ」
「で? それが何?」
「一方で、月にはウサギが住んでいるともいうだろ?」
「それはクレーターの陰影がウサギに見えなくもないからだね」
「かぐや姫が帰る月には、ウサギが住んでいる」
「うん」
「これっておかしくないか?」
「うん?」
「明らかにおかしいだろ。人間同士ならまだしも、天女とウサギ、仲良く暮らせるわけがない」
「偏見じゃない?」
「そこで俺は気付いたんだ」
「無視すんな」
「かぐや姫をはじめとする天女こそ、月に暮らすウサギなんだって」
「そうはならなくない?」
「そしてかぐや、君の番さ」
「え、私?」
「かぐや、ご存じの通り、君の名前はかのかぐや姫からきている」
「うん、そうだね」
「つまり、君のご両親は君にかぐや姫を重ねていたというわけさ」
「うーん、そうとも取れなくも……取れないね」
「君は親孝行としてウサギの恰好、ひいてはバニーガールの恰好をする義務があるッ!!」
「は?」
「馬鹿なの? やっぱりおかしくなっちゃったの? 何をどうとればそんな解釈に行き着くわけ?」
「かあーー!! やっぱだめかあ」
「今の論理で通せると思うほうがおかしいよね」
「はい、すんません」
「しかもこの寒い季節に……」
「あはは、ですよねー」
「用件も済んだろうし、今日はもう帰りな」
「はーい……」
「じゃあね」
「おう、また明日な!」
「ふーん。バニースーツ、意外と高いんだ」