化物たち
毎日一話、短くても2000字を超えていこう。
森が燃えている。
犯人は分かっている。隣にいるこの奇妙な生き物、ルル。
火をつけようとしていたところで、ルルが不思議そうな顔をしているもんだから、木の棒で目の前に炎の形を見せてみた。
そしたらこの有様だ。
……結局、コイツも小さいだけで化け物なんだな。
「よし、ルル」
「キュウ?」
「ここ、燃やしたのお前だから、お前がなんとかしてこいよ」
「キュ?」
「と、いうわけで俺は逃げる。じゃあな」
ルルが愕然とした表情を浮かべているのを尻目に、全力で背後の木に登り、隣接している木を渡って燃えている木々から離れていく。
異臭が凄い。風が吹いているからか、こちら側に煙が来る。その煙が臭い。酷い匂いだ。
あのキノコもどきを食べてからというもの、毒というものには恐らく耐性が備わっている。だが、そんな耐性持ちの俺でも感じるほどの強烈な匂い……あのキノコ食べてなかったら確実に気絶してるな。
その匂いから逃れるべく必死で遠くへ、遠くへと進む。
どこに向かっているのかなんて分からない。途中途中に現れる化け物は皆みたことがある。ならば森の中だろう。周り全部木だし、景色変わらないし?
「はぁ、はぁ、はぁ……」
気づけば匂いはしなくなっていて、一番最初の白い地面……自分の部屋からいきなり出た場所に戻っていた。
相変わらず、この紫色の世界に似合わない青い色をした花が四つ。場違いなほど綺麗に咲いている。
「……はぁ」
その綺麗な花の前に体育座りをする。
特に意味はない。
「ここからじゃ全く分からないな……」
この白い地面一帯は、辺りの木の高さも他とは段違いのため、燃えているであろう木々が見えない。
……ルルはどうしたかな。
俺が追い払った形になる、のか?いやだってあんな火炎放射器もびっくりの特大炎(紫)が横から吐き出されたら逃げるって。誰だって逃げるよ、そりゃあ……。
忘れていたんだな、俺は。
ルルは、俺よりも前からこの森にいて、一人の時から生き続けていて。
結局それは、そういうことで。
あれくらいの攻撃手段持っているならもっと前から使ってくれよ、とか。
あのギャグのような慌てた様子やジャンプ失敗は演技だったのか、とか。
見た目がヘンテコなのもその高火力の攻撃手段を隠すためのものなのか、とか。
言いたいことはたくさんある。聞いてみたいこともたくさんある。
ただ、もうアイツはここにはこないだろう。……あの燃えている木々をどうにか出来る気はしない。
「はぁ~……これからどうするかなぁ~……」
「キュウ?」
……?
なんか聞き覚えのある声が聞こえた。
「キュウ?」
右横を見る。
不思議そうにこちらを覗き込むルルの姿。
………は?
「は?」
「キュ!?」
「うん、えっと、待って?いや、マジで待ってくれ、何、お前なんでここに……って、ソイツ誰?」
「キュ!」
「ニャア~」
ルルがいた。そしてその隣にまた変なのがいた。
見た目は骨。骨だ。なんかスラってしてる。あと手に剣のような骨を持っている。
人の形に近いけど人じゃない。人の骨には背中から羽根も生えてないし、足に羽根もない。おまけに尻尾なんてなかった。
……見るからに凶悪そうな化け物だった。小さいけど。推定140センチあるかないか。
それと一番の違和感……そう、鳴き声だ。
「なんでニャア?」
「ニャー」
「キュー」
「いや、ルルはいいよ。キューはもう分かってんだよ。いや分かってないけどね?でもその見た目でニャーはないわ、ニャーは」
「ニャニャ!?」
「キュ!?」
「え、何、俺がおかしい感じ?そのコイツマジか見たいな視線やめて。二人でヒソヒソしながらこっち見んな!」
奇妙な生物が増えた。骨だけど紫色とピンク色が部分ごとについている。なのに頭蓋骨は白!羽根は黒!尻尾も黒!
もうちょっと色どうにかならない?
「……つーか、なんでルルここにいるの?あの炎は?消せたの?」
「キュキュキュ……キュキュー!」
「ニャ~」
聞いて驚け!みたいな、腕を腰に当てて胸を張ったポーズで息を吐くルル。
その息が熱い。こいつ、また炎吐きそうだな……。
ルルの示す先にいるのは猫の鳴きまねをする骨。
……えーっと。
「そいつがやってくれたと?」
「キュ!」
「ニャ~」
「いや、信じられるか。どうせ逃げてきたんだろ。ほら、消してこい」
「キュ!?」
だから本当だって?いや、だってコイツ骨だよ。格好と鳴き声が明らかにおかしいけど骨でどうやって火を消したんだ……しかもあの炎紫色してたぞ。
ルルを掴む。首根っこを掴むと大人しくなるから、その状態で大きく振りかぶり……
「寒ッ!」
「キュ!」
突如として、右側から冷たさを感じた。
いや、冷たいなんてものじゃない。寒い、昔行った北海道での猛吹雪よりも酷い寒さ。
なんとかその寒さの原因を見るために右を向くと……骨が吹雪を出していた。
骨が口の部分から猛烈な吹雪を発射していた。目の前にあった木々が凍り付いていく。
「ニャー!!」
「わわわわかった、うう、う、疑ったお、俺れが、わ、悪か、った!だ、かから……も、もう、やめ……」
「ニャフ~……」
言葉が届いたのか、骨は吹雪を発射するのをやめてくれた。
残ったのは凍り付いた目の前の森。
まあ寒いのでルルに小さい炎を出してもらい、悴む手を温かくしてもらう。
「……なるほどなー、これであの炎を凍らせたんだな」
「ニャニャ」
「え?違う?」
「キュ!キュキュッキュ!」
「相殺した?相殺が限界?……もうなんでもいいって」
相殺が限界だとすれば、こいつらどっちもとんでもない能力持ちだけどお互いに火力は互角ってわけか……どっちにしても化け物確定だな。
「ニャ~」
「キュ?キュ!」
「おい、何の話してんの?」
「ニャニャ」
「キュ」
「あーうん、おっけおっけ」
どうやら仲間になったらしい。いや、ルルもまだ仲間にしたつもりはないし、仲間じゃないんだけど。
し、知り合い?顔見知り?相棒……は仲間通り越してるな。適当な表現が見つからない。あれ、俺文系だったのに……語彙力なさすぎ!
呼び方はニャ~にしたかったが拒否された。でも冷たい息はやめてくれ。死の危険をビンビンに感じるから。
「キュ―リ」
「ニャ?ニャー」
「キュキュ!」
「ニャー!」
名前がどれがいいのかわからず、適当に思いつく言葉を言っていったらきゅうりをキュ―リと伸ばしたのが気に入ったらしい。
ごめん、全くこの猫骨……キュ―リの感性が分からない。もちろんルルも分からない。
ともかくにも、ルルもキュ―リも一緒に行動するらしい。
一先ず、もう夜になる。ルルとキュ―リに挟まれた場所で寝よう。化物だからこそあの力があればここにいる化け物を大抵は倒せるだろうしな。
久々の白い地面の上に寝転がりつつ、俺は静かに目を閉じていった。
終わり方が分からん……。書き終わりの書き方の練習だなぁ……。