野性化
ここで一話の最後に追いつきます。
「……ん……」
なんだよ……もう朝なのかよ。あ、課題やってねぇな。まあ、どうとでもなるか。電車の中でやるとして、今日の最大の敵となる教科は……。
「……そうだったな」
目を覚ました時に見えた光景は、前と変わらない紫色の世界。
どうやら本当に、これは現実のようだ。
「……二度寝するか」
思ってた以上に、自分の腕で寝るのは悪くなかった。
女子にやってもらえる膝枕と比べると……いや、比べるなんて悲しくなるだけだが、それでも悪くないと思える。
……やってもらうにしても、形と柔らかさって大事なんだよ。
目を瞑る。腕の位置を微調整して、いざ夢の世界へ。
……なんか足がムズムズする。理由は昨日風呂に入らなかったからだ。腕も首も痒い。あと背中も痒いし。
……なんか冷たいな。冷気?いや、ヌメヌメしてる。汗かきすぎだろ……ちょっと拭こう。気になって眠る気が失せたし。
「……」
……俺の目はどうかしてしまったのだろうか。
昨日、足に巻いていたお気に入りのパーカー。
それを、謎の生き物が自らに巻いてニコニコしている。
「な、なんだこの生き物……」
つい、声に出してしまうくらいには、珍妙な生き物がそこにはいた。
ピンク色をした体に、黒い羽根。足元には歩いてここまで来たのか、紫色をした液体が付着している。
目はクリクリとしていて可愛らしさを感じる。俺のパーカーを羽根の上から着て、クルクルとその場ではしゃいでいる。
だが……一番の問題は……
「うぐぉ……」
息を止めろ息を止めろ息を止めろ。吸うな、次に吸ったら確実に吐く。
匂いだ。そう、匂いが腐った牛乳を何百倍にもしたかのような匂いがする。
目から水が止まらない。鼻を抑えてないとひん曲がりそうだ。口も抑えておかないとまずい。
「キュウ……?キュ!?」
謎の生き物がこちらに気づいたのか、驚いたように後ずさった。
……俺のパーカー返せよ。もうほとんどの部分が紫色に変色してるから、触りたくはないんだけど。なんでそんなに自分の宝物みたいに抱きしめてんだよ。人のだよな?俺が足に巻き付けていたのを、勝手に奪ったんだよな?
しばらくの間、お互いに目線を合わせ、向き合う時間が続いた。
向こうは恐らくだが、態度からも考えて俺の持ち物を勝手に使っている自覚があるから、「え、こいつ起きたの?これどうしよ……」とか思ってるのだろうか。
こちらとしては近づいてさえ来なければそれでいい。さっきからこっそりと呼吸をしているのだが、毎回吐き気が酷い。これ以上近づかれると、後ろの紫色の地面に全てを吐き出してしまうだろう。
「キュウ~……キュ?キュキュ~!キューキュー!!」
しばらくした後、謎の生物が何かを羽根で指しながら、アピールを始めた?
その示されたものは……これまた怪しさ満点のキノコらしきもの。
キノコに近しいからキノコと呼ぶことにするが、俺は生まれてからというもの、こんなにもあからさまに危険なキノコは初めて見た。
まず、大きい。両手いっぱいに収まりそうにないくらいには大きい。
柄といい、傘といい、まず紫色だ。加えて、傘の部分には黄色と黒色の模様が至る所にある。
「……なんだよ。これ食えって?」
「キュウゥ~!」
その代わりこれもらうね!みたいな様子をされても困りものなんだよな……本当なら譲りたくない感があるので、もしかすればここらでは珍しいものなのかもしれない。
だけど……あれを食うのか?今から?ここで?つーか昨日なかったよね?あんな大きなの見逃すわけないし……どうしろと?美味しいのか?そんなわけあるか。確かに昨日の夜から何も食べてない。せっかくのおでんはどこかに行ってしまったし、餅巾着もどこかに行ってしまった。ああ、あの揚げと餅のコラボレーションによる好きなものランキング第10位の餅巾着。食べたかったな……。
「キュウ……?」
そんな「どうして食べないんだ?不満でもあるの?」みたいな目と鳴き声やめろ。鳴き声無駄に可愛く感じるし……ぶかぶかのパーカーを羽織っているのを見ると、愛くるしさが倍増している……あれ?なんだかコイツが可愛く感じてきたな。
「……っし」
とりあえず食べるか。食べて死ねば、それはそれでこの悪夢のような現実……かすら分からないが、この場所から意識はどこかに行けるはずだ。怪しさしかないし、食べたら恐らく即死だろう。恐怖感はもちろんあるし、なんなら食べたくない。口につけるふりだけしようかなとも考えている。
それでも動く理由、それは。
「キュウ?キュキュ?」
「オーケー、大丈夫だ。食べる。食べるからこっちくんな!」
腐った匂いの元凶が、どんどん近づいてくるからだ。
もう一思いにやってしまおう。うん、だから一回深呼吸……すると異臭でどうにかなりそうなのでやめる。
胸を叩く。両頬を二回たたき、覚悟を決める。
……よ、よし、食べるぞ。俺は食べる!あの大きくて毒々しい危険なキノコもどき……なんか食べる気なくなってきたわ。触るのもばっちぃし、足で蹴飛ばして食べたことにしておこう……食べる!食べるから近づいてくんな!
「ふぅ、いただきます」
どんなものでも、口に運ぶのなら挨拶はしなければならない。挨拶をしない奴は大抵、まともな人間じゃないからな。つまり俺はまとも、クラスの連中はまともじゃなかった。
手で触るのも嫌なので、キノコもどきの手前に両腕を突き立て、四足歩行の獣になったイメージで一齧り。
「……ん?なんだよ、普通に美味いじゃんか。歯ごたえあるし、これなら全部食べてお……こ…………う……?」
熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!身体の最深部から焼けるように熱い、全身が熱い、あれ、腕、腕は?俺の腕はどこに行った?感覚がない、動かそうとしても動かせない、足、いや、全身が動かせない、痛い、痛い?痺れ?麻痺?ビリビリするのが全身を駆け巡っている?なんだよこれ、なんだよ、なんなんだよ?キノコだ、あのキノコもどきのせいでこんな目にあってるんだ、ちょっと美味しいからってこんなのってねえだろ。あ?なんだ、キノコがない?どこに行った?熱い、熱い、熱いのは変わらないけど世界が明滅している?ピンク色の物体が目の前にいる?あ………
それからはよく覚えていない。
あとから考えてみると、恐らく俺はこの時、嘔吐に発狂、失禁、泡を吹いた上に、鼻血に吐血……まあ、他にもあっただろうが、俺に理解できたのはこれくらいのことだった。
***
「……キュウ!」
「うわっ!?」
目を開いた瞬間、飛び込んできたのは謎の生物だった。
どうやら俺は気絶していたようだ。って、こいつから異臭が……しない?
「あの後、俺はどうなったんだ……おえっ」
俺の目に飛び込んできたのは、嘔吐物にまみれた汚れた自分の服。
空はまだ明るい。明るいというよりはオレンジ色をしているだけだが、周囲一帯を見られるくらいにはまだまだ明るい。
まずは服を脱ぐ。どうせ誰もいないのだ。助けてと何回叫んでも無駄だったのに、俺が脱いだ瞬間誰かがくるわけもない。
幸いなことに、下着は汚れていなかった。ラッキーだった。さすがに誰もいないとはいえ、最初に見た芋虫もどきがいる以上、全裸はまずい。最悪な死に方をする危険性がある。
「キュウ?キュッキュッキュー!」
「あ?ああ、これ?やるわ、いらん」
「キュッキュ~」
謎の生き物が俺の服を欲しがっていたので、くれてやった。嘔吐物と血で汚れた服なんて持っていても仕方がない。むしろ処分してくれると嬉しい限りだ。
俺の服を羽根……翼の先の方にある爪らしき部分で掴むと、紫色の地面を歩いていき、数歩で止まってから俺の服を地面に押し込んでいった……っていうかなんだこいつ。明らかに前より大きくなってんだけど。羽根が翼になっているのに体の大きさ変わってないのかよ……。
「キュウ~」
楽しそうにニコニコしながら、こちらに一礼したかと思えば、次はズボンを持っていくらしい。先ほどの服同様、地面の中に服を押し込んでいく。
……?なんでこいつ地面に服押し込んでんの?え、どうやってんだあれ。何してんの?
次は下に着ていたシャツのようなので、ついでについて行ってみる。
紫の地面が怖かったが、それよりも好奇心が勝った。初めて紫色の地面の上に立ち、謎の生物の後を……謎の生物って言いにくいな。うーむ、名前でもつけておこうか。ルンルン楽しそうにしているし……ルルにしよう。
ルルはまた同じ場所で立ち止まり、さっきまでと同じように、地面に押し込んだ。
何が目の前で起きているのか相変わらず分からなかったので、左腕でルルが服を押し込んでいた場所を探ってみる。
左手なのは、もし何かがあったときの保険だ。右利きの俺は、幼少期に左腕を骨折した後遺症もあるためか、左腕を使うのが下手なのだ。もし使い物にならなくなっても……ピアノを弾くとき以外に困ることはないだろう。ピアノなんて、もう弾くことはないだろうけど。
押し込んでみた正直な感想を言おう。
……深い。
紫色の液体だと思われるが、それがどこまでも続いている……わけではないと信じたいが、現段階ではどこまでの深さがあるか分からない底なし沼のような場所になっていた。
……反対側の地面に手を当てようにも、かすりもしなかったので地面を伝ってこの沼の大きさを探る。
「……これってさ」
「キュウ?」
「俺落ちたらどうなるんだろうな」
「キュ?キュウ……キュ!」
沼は想像よりも大きすぎた。
ルルが同じ場所で止まるため、小さいのだろうと勝手に決めつけていたが、なんと俺の身長……170を軽く超えるくらいの大きさだった。恐らく三メートルはある。
もし普通の地面を踏む感覚で、ここに片足を突っ込んでしまえば……まず左右にも腕が届かないし、前も触れない。沈むしかない。
泳げばなんとかなるかもと思ったものだが、ルルの足元に生えていた小さなキノコもどきを沼に入れ、引っこ抜こうとしたものの、引っこ抜こうとすればするほど俺自身まで中に引きずられていく感覚を味わった。
キノコを放し、ゆっくりと腕を引き抜けばなんともなかった。激しい動きのみを中に引きずり込んでいる感覚だ。
……俺は俺自身のことをよく分かっている。もし落ちれば最後、冷静になれと、どんなに考えてもパニックに陥って沈んでいくのだろう。砂地獄の沼版だ。落ちたら呼吸困難に陥って死ぬのだろう。
ルルが何故かサムズアップしているので間違いない。「確実に……死んじゃうね!」みたいな様子なのだ。
あれ……別に死んでもよくね?
さっきまた酷い目にあったのだ。キノコもどきを食べたのは俺の自爆だろうが、どちらにせよ気持ち悪かったのは変わりない。地獄に来てしまった気分なのだ。
なら、この沼に沈めば……俺はこの苦しみから解放されるのか……?
一歩。また一歩。更に一歩。
少しずつ、少しずつ近づいていく。
ルルが俺のやろうとしていることに気が付いたのか、必死に止めようと足に翼を巻き付けようとするが、まず無理だろう。
それに誰のせいであんな苦しみを味わったのかと思えば、元はと言えばコイツが元凶だ。
「あっち行ってろ」
「キュウゥゥゥ!?」
今までの恨みを込め、ルルを蹴っ飛ばした俺は改めて沼の直前まで迫った。
あと一歩。あと一歩踏み出すだけで楽になれる。
沼の中に引きずり込まれ、俺の着ていた服共々、沼の奥に沈んで行く。
息が出来なくなって、苦しくなって、藻掻こうとして、景色が白くなっていって……
「……おい、おいなんだよ。今更怖がってんのかよ。だっせーな俺、そんなんだからいつも中途半端なんだよ。あと一歩だろうが、一歩。それだけで全てを終わらせられるんだ。だから早く……その一歩を、踏み出してくれよ、踏めよ、ほら、早く……」
死んだら、どうなる?
苦しみから解放?されるだろう、ああされるはずだ。それでどうなる?その後は?
……怖い。
そうだ、死ぬことは怖いんだよ。
臆病で何が悪い、死ねば楽になれる。家で何度、自殺を考えたことか。
それがこんな場所にいきなり放り出されて、地獄のような苦しみを味わって。
だから、死にたくなって。
でも、死ねない。
死ぬのは怖い、先が見えないのは怖い、いつだって、どこだって、俺が死ぬことが出来なかったのはそのせいだ。
先が分からない、死んだらこの光景も、匂いも、音も、触り心地も、感覚も、全てが失われるんだろう。
失うのは、怖いんだ。
「ああ、そうだな……俺は、まだ……」
――――――生きたいんだろう。
***
一先ず、生きてみることにした。
まだここがどこかも分かっていないのに、人生を終わらせるのもどうかと思うしな。
……人間に会えたりしないだろうか。
「キュウ~!!」
「何だお前、Mか?帰ってきた……うわおおおお!?」
ルルが走って帰ってきた。
何故帰ってきているのかは分からないが、異臭さえ消えればただの奇妙な生き物だ。コミュニケーションが取れることも考えると、いてくれた方が嬉しくはある、のだが……。
なにあれ?全身紫色の骸骨?骸骨なのに四足歩行?って、獣か何かの骨なら普通なのかもしれんが、なんでこっちきてんの?ルルもこっちに来るな、その「道連れにしてやるぜ!」みたいな顔やめろ!
逃げるにしても、安全が確保されているのは最初にいた場所までしかない。他の紫色の地面は沼の可能性があるので行くのは危険すぎる。……沼?
ああ、なるほど。
「ルル、大ジャンプだ!!」
「キュウ~!!」
俺の意図を理解したのかどうかは定かではないが、ルルが翼を広げて大きくジャンプする。
追ってきていた骨の化け物は、突進の威力そのままに、俺に標的を変えて向かってくる。
そして、目の前に広がる沼にハマった。
ルルは前方から来ていたのだ。俺は沼に落ちるかどうかの瀬戸際にいたので、俺の目の前には沼が広がっている。
骨の化け物も沼の存在には気づけなかったのだろう。慌てて出ようと藻掻いているが、それは失敗に終わる。
なにせ暴れれば暴れるほど引きずり込まれていくのだ。明らかに身体の大きさが合っていないが、どんどんどんどん沼に沈んで行く骨。
それを見る俺と……あれ、ルルはどこに行った?
「キュッキュッキュ……キュウ!」
どうやら大ジャンプは失敗したようだ。というか飛んだだけで翼が機能していなかった。飾りなのか?
そんなルルは、骨の化け物の背後から足をぐりぐりしている。全身全てを沼に沈める気だ。
……俺の服もここに入ってるんだよな。嬉しそうにしていたのに何故入れたのか……謎だ。
「キュッキュウ~」
「お掃除完了~みたいな感じか。……でも」
「キュウ!?」
「お前がアイツ連れてきたんだろうが!?」
「キュワー!?」
とりあえず、もう一回蹴飛ばしてやった。
しばらくするとまた戻ってきた。
……次は棒を持った紫色の鬼だった。
いや、怖い怖い。顔が非常に怖い。あれ口の位置おかしいよね?それに眼も五つくらいあるんだけど?鬼ってあんな感じなの?実物半端ないな……角だけ黄色で違和感ありすぎない?
もちろん、また沼に落とした。
これの繰り返しだった。
骨、鬼、骨、骨、竜、骨、鬼、鬼、骨、猫、犬、犬、狼?骨、骨……分かったことは、この紫の森には複数の化け物が生息していること。
その化け物達でも、沼に吸い込まれてしまうこと。
そして……俺に毒が効かないこと。
「グエェェェェェ!!」
「何すんだっ!?ぺっ、ぺっ!」
紫色の液体を竜のような化け物にかけられた時のことだ。
その液体の範囲は凄まじく、白い地面の上にまでかかったのだが、その地面が、ジュッ!と音を立てて紫色に変色。加えて、咲いていた花の一つが一瞬にして枯れてしまったのだ。
―――――これは毒だ!!
気づいた時にはもう遅い。全身に隈なく紫色に包まれていた。
ああ、肌がジュ!とか音を立てて溶け出していくんだろうな……服、って言ってももうパンツしか残ってないんだけど、それも溶けるんだろうな……あ、これ普通に死ぬヤツだ。
「……あれ?」
「キュウ?」
竜が藻掻きながらあっけなく沼に沈んで行くまでの時間。
俺に全くの異常が見られなかったのだ。
隣にいるルルは、いつの間にか全身の液体を舐め終わり、俺の方を見て、「こいつなんで生きてんの?」みたいな表情を浮かべている。
いや、そんなの、俺が知りたいんだけど。
このままというのもあれだし、手で腕を擦り、液体を少しでも減らそうとしたのだが、やはり残る。
手にべっとりとついた紫色の液体を、ルルがとても美味しそうに食べているので、好奇心から食べてみることにした。
「……うめええええ!!」
「キュ!」
なんだ、なんだこの味!?蜂蜜のサラサラ濃厚バージョン!?甘すぎず、でも甘い。何だこれ、なんだこれ!美味すぎる!ルルも「だろ!」って言ってるようだし、ご馳走じゃないか!
あのキノコもどきと違って全身麻痺からの地獄絵図状態になることもない!神だ!これは神からの授かりものだ!
「……おい、ルル」
「キュ?」
「あいつって、どこにいるか分かるか?」
「キュ!」
「……決めた」
全身についた紫色の液体を舐めながら、背中についたのはルルが舐めながら、これをどう手に入れるかを考える。
沼にハマるとお終いだ。んあ、だからと言ってここで待ち続けても次がいつになるか分からない……ぺろぺろ、地面にさえ、足をつけなければどうとでもなりそうだが……ちゅうぅぅ、よし、決めた。
「ルル、お前は沼の位置を把握してんのか?」
「キュウ~……」
「その様子だとしてないようだな……よし、ならこれだ!」
「キュキュ!?」
「そうだ、お前も来い!この木に登って木を伝っていくぞ!」
「キュウ!!」
そう、最初からあった、紫色の木。
どこまでも続いているこの木なら、生えている場所が近づき合って、俺の身体能力でも渡っていけるほどの低難度木登りで十分対応可能だ。
「よっしゃ行くぞ!!」
「キュウー!!」
これが、俺たちの始まりだった。
……それが、数日の前の話。
「うがああああああ!!」
「ウギャァ!?」
「次に獲物はてめえだぁぁぁぁぁぁ!!」
「ギィ!?ギャアァァァァ!!?」
「よし、今だルル!」
「キュウ!!」
「ギャ!?」
今では連携して、竜もどきを追い込み、あの極上の蜂蜜砲を出させるまで粘り続ける日々を送っていた。
更に新たな発見として、竜は蜂蜜、蛇はオレンジジュース、虎はジンジャーエール……など、希少種は美味な液体を攻撃手段に使ってくることが分かった。
大体は骨と鬼で、どちらも外れなのだが、合わせて二十ぐらいを沼に落とし込むと希少種の何かが姿を見せる。
俺とルルは入念な準備をした後、確実に味わえるように時間を使い、襲い掛かったり、おちょくったりと工夫を凝らしている。
極上の飲み物を味わうためには、奴らを追い込むか、イライラをMAXにさせなければならないのが面倒だが……この世界も案外、悪くないのかもと思い始めている。
なんというか、中身が物足りなく感じてしまう……。
基本的に、影人君はルルの表現を半分しか理解していません。なので彰人君の考えているルルの言っていると思われることは、半分正解で半分間違いです。