ここは……どこだ?
世界観どうなってるんだろう……自分でも分かってないです(笑)
「え、っと……」
おかしな光景が目の前に広がっている。
紫色、というよりも毒々しい色をした木々が立ち並び、今立っている場所以外に紫色をしていない場所が見当たらない。
「……幻覚か。一度部屋に戻って一回に寝れば治るだろ」
勉強をしているという嘘を母親についたものの、全く勉強しないわけではない。
気が向いた時には問題集をやっているし、何より通っているのはここらで一番の進学校。課題と予習、当てられた時の対策として復習をすることもあるので、世間の平均よりは勉強をしているはずだ。
疲れが出たか。確かに今日の模試は悪かったし、どうあがいても来週の試験には間に合わない。精神的に疲れてしまっているのだろう。主に、試験の結果をどう両親に伝えるかで。
……しかし。
振り向いた先に見えたのは、先程と同じく毒々しい地面と木々だった。
「いや、待て、待って。ここどこだよ?俺部屋出ただけじゃん。俺の家はこんな危険地帯なんてなかった……つーか、どこの家にもこんな場所ないだろうけどさ」
独り言が続く。
「絶対触ったら駄目な感じだ。それに、俺の立っている場所以外紫色してる地面しかない。動けないんだけど。ここどこだよ、いや、ほんと、マジでどこだ」
元々俺は独り言が多い。
考え込む癖があるのも一つの要因だが、何より頭の中だけで考えるよりも声に出した方が整理しやすいのだ。
それでも。
今回ばかりは今までとは違う。
「紫色の木って趣味悪すぎだろ。紫色の地面もいい感じしない。俺の立っているところだけ白い……花が咲いてるな。真っ白な花?それも五つしかないってどうなってんだよ。ここの大地育ち悪すぎだろ。いや、こんな毒まみれのような場所に五つも咲いていることが凄いのか」
なんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれ。何が起きてる何が起きている俺は今何を目にしている?部屋から出るとき一瞬目を瞑っただけでこんな場所に出た。俺の部屋のドアはどこでもドアなはずがないし、今までこんなこと起きたことない。さっきまでしていたおでんの匂いはしないし、何より家の外は真っ暗だったはず。それが今は夕方だ。全く違う場所にいてしまっている。
寝落ち?ドアを開けた瞬間に倒れた?そんなわけがない。これまで見てきた夢は、全て夢の中だと自覚するのは終わりの方だけだ。こんな最初から寝落ちなんて言葉を思いつく時点でまず間違いなく現実……。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ~……」
一つ息を吐く。
一旦目を閉じ、再び開ける。
景色は変わらない。
肩を回す。足首もプラプラさせてみる。
首も一回り回し、手首もプラプラさせてみる。
右腕で右頬を殴りつける。
「痛っ……」
痛みが走る。頬骨に当たり思ってたよりも痛かった。
景色は変わらない。
「……ああああああああああ!!」
息を大きく吸って、今まで出したこともないほどの大声を出してみる。
少しばかり紫の木々が騒めいた。ただそれだけ。
……ちょっと楽しかった。
景色は変わらない。
「いやっほぉぉぉ!!バァァァァァァァァァァカ!!」
もうどうすればいいのか分からないので、とりあえず、楽しかった叫ぶことを続けてみる。
「青春なんて終わっちまえェェェェェェ!!今日のテストは508点!!目標点に遠く及ばず!!だからどうした!俺が楽しければそれでいいんだよぉぉぉぉぉぉ!!」
今日あったテストが頭に浮かんだのでとりあえず声に出す。
相変わらず、木々が騒めいているだけで何も変わらない。
それからはずっと、ひたすら叫び続けた。
くだらないことや、普段なら口にしないことまで、なんでも思いついたことを叫んでみた。
次第に、空の色がオレンジから黒色に変わっていった。
その変化同様に、俺も叫ぶのをやめた。
「はぁ、はぁ、はぁああ……」
紫色じゃないことを確認しながら地面に腰を下ろす。学校でやっていた体操座りは座る場所を確認しながらのものだったので、スムーズに座ることが出来た。
「………」
膝に頭、正確には目を押し付けながら左右に揺れる。
目にぐるぐるしている光景が浮かぶ。
……認めるしかない。
ここは、家なんかじゃない。
助けてくれよなんで俺だけがこんな目に合ってるんだよふざけんなよ……俺部屋から出ただけだろうがここどこだよ誰か教えてくれよ……マジで何なんだよ意味わかんねえんだよ状況が理解できねえよおでん食わせてくれよ……俺が何したってんだよ勉強?勉強してない奴なんてザラにいるだろうが理不尽だろ……あとなんか寒いんだよ風吹いてないのに鳥肌が止まらないんだよイボイボ気持ち悪い触り心地悪すぎだろ……あとなんか足裏がずっと痒いんだよむずむずするんだけどこれ絶対何かいる……何かいる?
「……うわああああ!?ぁぁあぁああぁあ!?気色悪っ!?手触りぐちょぐちょしてる。うえぇぇぇ……」
闇に慣れた俺の目に飛び込んできたのは、身体をぐねぐねと左右に揺らす芋虫のような何か。虫の幼虫?みたいな気持ち悪さMAXの何か。
部屋では裸足だったので、足の指を動かせば何かの液体が足についていることが確認できた。
咄嗟に手で足からどかしたのだが、その時の感触が直に手に来て鳥肌が凄いことになっている。感覚的にはっきりと分かるほどには鳥肌が立っている。
「ティッシュ……はないからタオル……もないからハンカチ……もない」
仕方なしに着ていた服を脱いで足の裏を入念に拭く。
よく見れば反対側の足も液体まみれになっているので、こちらも入念に拭く。
モコモコのお気に入りパーカーが謎の液体まみれになってしまっているが、背に腹は変えられなかった。というより、こんな異常事態にパーカーなんてどうでもいい。
「……寒いな」
先程の寒気はパニックによる恐怖からの寒気だと思っていたが、どうやら普通にこの場所自体が寒いようだ。
「でも、なんか……眠い」
身体の疲れというよりも精神の疲弊か何かは分からないが、物凄く眠たい気持ちになってくる。
寝たらまたあの芋虫のような何かが足に来る可能性がある。眠るわけにはいかない。
……ん?でも、どうでもよくないか?
意味の分からない場所に突然来てしまった。辺りは紫色の、見るからに毒だろうと思われる木々や地面が広がり、気色悪い何かに液体をかけられる。
ここがどこだか分からない。家はどこだよ、あの温かい空間はどこに行ってしまったんだ……もう、疲れた。
眠いなら、眠るべきだろう。俺がここで死ぬにしても、寝ている間に死んだ方がいい。気づかずに死にたい。
「……じゃあな、世界よ。また会おう」
俺は、眠気に従って眠ることにした。
どうでもいいのだ。どうでも。ここがどこであれ、なんであれ。
俺にはどうすることも出来ないのだ。
幸いにも、横になっても問題ないような地面だ。腕を枕代わりにしたら……もう、眠る以外には何もない。
……パーカーを念のため、汚れていない方を足に密着させるようにぐるぐる巻きにして。
俺は、気持ちいい眠りについたのだった……。
文章の書き方ってどうすりゃいいんだろう……。