自殺した大神王ニート様
俺はニートで引きこもりである。
満たされない日々を送っているある時、なぜ俺がニートで引きこもりであるのかを熟考した。
結論はシンプルだった。
1つ
「俺は神であり宇宙の王である」
1つ
「俺はこの世に生まれてくる際その力を封じられた」
1つ
「神である俺が力を失ったことをいいことに、歯向かう反逆者であるこの世界のため俺の人生は不遇だった」
完璧な結論と言えよう。非の打ち所がない。
そして俺はさらに熟考を重ねた。
神である俺に『俺』などという俗な一人称は適切ではない。
うむ、これからは朕を称することにしよう。そう決めた。
朕こそ宇宙の王であり所有者である。
ところで、この世界の邪悪さの被害者である朕を示す尊称は「南無阿弥絶対超絶不可侵極限神聖被害者尊」というのはどうだろうか。
ふむ、悪くない。
朕を呼ぶ際には「南無阿弥絶対超絶不可侵極限神聖被害者尊」様と呼べ。
朕はこの世に生まれてくる際に失った力を取り戻し、宇宙の王である地位に返り咲かなければならない。
朕はさらにさらに熟考を重ね、朕の高貴なる魂を肉体の軛より解き放つため死ぬことにした。
早速部屋をガムテープで密閉し、練炭を炊く。
そして朕の魂は霊界へと帰還した。
霊界では高位の神々が朕にひれ伏して待ち構えていた。どうして高位の神とわかるのかと問われると困るが朕が神の王であるからわかるとしか言いようがない。
まあ、とりあえず朕が自殺によって宇宙の王たる地位に返り咲いたことだけ伝われば良い。
「「「おかえりなさいませ、大神王様」」」
「うむ、朕は尊称を『南無阿弥絶対超絶不可侵極限神聖被害者尊』とすることにした。これからはそう呼ぶがいい」
「「御尊称たしかにうけたまわりました」」
朕は一番近くにいた下僕の神にこう命じた。
「朕は朕の不興を買ったこの世界に罰を与えねばならぬ」
「それでは、今地球の近くを通る隕石がありますので、少し軌道を変えてしまいましょう」
「うむ、良きに計らえ」
そうして地球は巨大隕石の落下により滅び、人間達の魂は全て霊界へとやってきた。
朕に地獄の閻魔が話しかけてきた
「南無阿弥絶対超絶不可侵南無阿弥絶対被害者尊様、あまりにも大勢の魂のため天国行きと地獄行きの裁定が滞っております」
「地球の民は朕の不興を買うというこの宇宙で最も重い罪を犯したのであるから皆等しく罪人である。よって全て無間地獄行きである」
「ははーっ。仰せのとおりに」
こうして地球の人間は全て無間地獄へと送られた。
数日後朕の脳裏を一つの考えがよぎった。
朕が不遇だった世界で幸せに暮らした度し難い大罪人と、比較して罪の軽い者が同じ無間地獄で苦しむのはおかしいではないか。
朕は閻魔を呼びこう命じた。
「偏差値60以上の大学に入学したことのあるもの、年収が日本円で1千万以上あったもの、預金が1億以上ある家庭に生まれてきたものには無間地獄を超える罰を与えよ」
しかし、朕の完全な提案に対して返ってきたのは拒絶であった。
「南無阿弥絶対超絶不可侵極限神聖被害者尊、それは無理でございます」
「なぜ無理なのだ?」
「無間地獄は窮極の苦しみであり、これ以上の罰は存在しないのです」
比較的罪の軽いものとはいえ、朕が不遇の世界を構成した一員であるという罪を犯したことには違いがない。無間地獄が適当であろう。しかし、大罪人共との境遇に差はつけたい。
朕は熟考を重ねた。
そして素晴らしい考えが浮かんだ。
「うむ、先程述べた者たち、すなわち偏差値60以上の大学に入学したことのあるもの、年収が日本円で1千万以上あったもの、預金が1億以上ある家庭に生まれてきた者は全てその目をえぐり出して、涼しい風が吹いても元通りにはならぬようにせよ」
その命令が達せられた後、朕の高貴なる魂、略して朕魂は無間地獄の上空に降臨した。
朕魂よりいづる高貴なる光は無間地獄をあまねく照らし、無間地獄の罪人は不断の苦痛に苛まれながらも朕魂光を目にする栄光に涙した。しかし目をえぐり出された大罪人たちはそうではなかった。
朕は1日1度無間地獄に降臨し、自ら罪人と大罪人の境遇に差をつけることを日課とするようになった
これにより宇宙はあるべき姿に戻され、朕が永遠に君臨することとなった。そして朕の統治下のもと罪人は永遠に苦しむのである。
めでたしめでたし