第24話 皇帝カールマーン②
「陛下、フランデアンの王子が到着されました」
近衛騎士ヴォイチェフが魔術評議会が管理する転移の塔からの報告を皇帝に告げた。
ヴェーナ新帝国の89代目の皇帝の名をカールマーンといった。
本来皇帝になるのは彼の兄だった。現代では帝位につくには議会により有力皇家が選定され、選帝侯により選帝され、皇室会議により承認される。
彼の兄は承認を受けた後、病死した。
選帝選挙に敗北した他の候補者による暗殺が疑われたが証拠は何も出なかった。
先帝も既に死亡していた為、皇室会議は協議してカールマーンを選んだ。
反発はあったが、この時の皇室会議は議会の選定に漏れた残り全皇家と従属国の監視者として各地に小なりとはいえ直轄地を持つ皇家により構成されていた。
東西南北の行政長官からの報告を鑑みて継承争いに発展する可能性を危惧し皇室会議はトゥレラ家自体に最も皇位継承の優位性があると認めた。
昨今の各地の騒乱を見るに帝国本土で紛争を起こすべきではないと判断し、選帝の早い段階で漏れた有力皇家もその判断を推した。
皇家では兄を助け領地をよく運営し、官僚としても天文官として職務を果たしていたカールマーンには政敵もおらず最も無難であるとされた。
先代の近衛騎士隊長と宮廷魔術師長、近衛兵団長、首都防衛軍団も皇室議会を支持し最終的に有力皇家のフォーンコルヌ、オレムイスト、ガドエレ家もその判断を受け入れた。帝国史ではあまりにも帝位が長く空いた場合は帝国騎士が推薦されて臨時の軍人皇帝となる事もあった。その後皇家から后を得て正式に皇帝になるか、軍の監視の元で再度選帝が行われて新皇帝と交代する。
「で、ヴォイチェフ。何人来たと?」
「6名です。評議会の魔術師も含めて」
「内訳は?」
「ご本人と魔術師を除くと神官らしきものが一名、侍女が一名、執事が一名、学友であろう貴族の少年が一名です」
「そうか10名までは転移陣を使ってよいという許可を与えていた筈だが遠慮したかな?」
「さて、私にはわかりかねます」
ヴォイチェフは北方圏の男でカールマーンが学院で学んでいた頃気に入って親友となり、そのまま交流が続いていたがカールマーンが皇帝となった時蛮族との戦いで既に功績を上げていた彼を招聘して自分の近衛騎士とした。
帝国騎士や自家の魔導騎士から近衛騎士を選ぶのが通例だが、カールマーンは珍しく我を通したのだった。
「ああ、悪い。・・・ゾルタン、誰かひとをやって紋章院総裁と外相、内相を呼んできてくれ」
「かしこまりました」
カールマーンは侍従に指示を出し、すぐに三人はやってきた。
彼らは皇帝の大宮殿の内部に執務室を与えられており、市内にある役所で執務を取る事もあるが今日は宮殿にいるよう命じられていた。
「陛下、お呼びとのことで」
「フランデアンの王子の件ですかな?今は魔術師の塔を見学しているかと思いますが、お会いになられますか?」
「・・・・・・」
寵姫と食事をしていたカールマーンは三人にそれぞれ呼んだ目的を告げた。
寵姫は皇家の一つアルヴィッツィ家に破産させられてカールマーンが保護してやった愛人であり、常に側に置かれていた。彼女は次のカールマーンの発言に眉をひそめた。
「せいぜい惨い仕打ちをしてやれ」
竹千代~




