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誓約の騎士と霧の女王  作者: OWL
第一部 第一章 妖精王子の誕生
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第9話 妖精宮

「実家に帰らせて頂きますっ!」


一家で夕食を取っている時、突然マルレーネがそんなことを言い出した。


「どうした?」


マルレーネはよく突飛な事をいって周囲を困らせる。

別に夫婦喧嘩していたわけでもないのに突然こんな事を言い出したのはどうせ一度口にしてみたかったとかそんな理由だろうと考えたフリードリヒは慌てずに理由を聞いてみた。


「貴方ばっかりミーちゃんの教育仕切ってズルい!わたしだってミーちゃんの事育てたいの!これ以上任せられません!だから実家に連れ帰ります!」


軽く考えていたフリードリヒだったが、思っていたより不味い理由だと内心慌てた。


「マルレーネ。そなたの母として子を思う気持ちはわかるが、この子は玉座を継がなければならないのだ。たとえ母でも個人に王国の将来を担う王子の教育を任せるわけにはいかぬ」


マルレーネが不満をため込んでいたようにフリードリヒにも不満はある。

彼女が甘やかし過ぎるから必然彼が厳しくしなければならなかった。

てっきりマクシミリアンには嫌われてしまっているかと考えていたが、先の事件の時にマクシミリアンが父への侮辱を許せず怒った事を嬉しく思ったものだった。


彼としては下女風情、手打ちにして他の召使への教訓としても良かったのだが、それよりは息子に自分の言動の重みを理解させる事に使った。

息子は期待に応えてよく学び、行動し、怒りを制御し、か弱き者への労りの心も忘れなかった。そして神々への敬意をも見せた。


「それが気に入らないの!」


マルレーネがキレて駄々をこねている。


「ははうえ?」

「ミーちゃん。お母さんの実家に行って見たくない?」

「ごじっか?ディリエージュですか?」


ディリエージュはヴォーデヴァインが治める都市で妖精の森と外の世界の境界線である。人間社会に出てみたい妖精の民と彼らが生みだす特殊な道具を買いにやって来る人間との交流がある街だ。混血化が進んでいて、数世代を重ねて普通の人間とあまり変わらなくなってからフランデアン国内に出たりそのままずっといついている者も多い。

王家が国を統治するのに現王都の場所の方が便利だと遷都した際にディリエージュは妖精の民に与えられた。マクシミリアンも何度か連れられて言った事があり、優しい祖父に会うのが楽しみだった。


「違うわ、妖精宮の方よ」

「妖精宮?」

「そう妖精宮、もしくは・・・<<イルミンスール宮>>」


「マルレーネ」


この場では家族しかいないとはいえ口にするなとフリードリヒは妻を窘めた。

マクシミリアンには言葉の響きがいつも使っている言葉と違ってよく聞き取れていなかった。


「じゃあ世界樹の宮殿」

「世界樹?」

「そう、世界樹。巨人ウートーが泥へと還った時、泥の中から生まれた神々とは別に生まれた世界を支え、ありとあらゆる命を育んだみんなのお母さま」

「ふうん」

「お爺ちゃんもお母さんもそこで産まれたの。そこに行けるのは純血の妖精の民か王様だけ。行って見たくない?将来お父様の跡を継ぐにはどうせ行かないといけないのだし」

「マルレーネ、一歳の時に連れて行っただろう」

「覚えてないでしょ。そんなの。ね?」

「・・・え、ぼく行った事あるの?」


実はマクシミリアンは既に一切のお披露目の儀式の後で連れられて行ったのだが、現地で神獣クーシャントに出会った際に巨大な姿に怯えて泣き出してしまった。

クーシャントは悪いと思ったのかあやそうとしたが、さらに怯えてしまい手が付けられなかった。


「そうよ。天の神様達の事ばっかりじゃなくわたし達の守護神の事も学ばないとね。お父様の教育は不公平過ぎっ、偏ってるのっ!」


マルレーネはマクシミリアンの成長が早いのでこれ以上俗世の影響を受ける前に王家の本来の守護神について教えたかったようだ。


「仕方の無い奴だな。ディリエージュから先は護衛の騎士も連れさせてくれないのだろう?ちゃんと身辺は守ってくれ」

「もちろん」


クーシャントがいるので妖精の森はおおむね安全だが、隣接する神々の森には危険な魔獣がうようよいるし、妖精の民を連れ去って珍しい奴隷にしてやろうという悪人も侵入してくることがある。


妖精宮から見えるクンデルネビュア山脈には蜘蛛の魔獣アラネーアがいて、時折麓まで降りてくる。そして妖精の民を狩り、クーシャントと争いに発展することもあった。

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2022/2/1
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