鉱山の採掘をさせつつ災害対策の普請も進めさせているぜ
昨年末に第78部分として”無事子供が生まれてよかったぜ”を加えておりますのでできれば先にお読みください。
さて、昨年の年末に生まれた息子も無事一年を生き延びることができたようだ。
それと他の二人の奥さんたちの子供も無事生まれて日野家の嫁さんのほうは女の子、正親町三条家の嫁さんのほうは男の子だった。
「近衛家と正親町三条家は男の子か。
実家のほうで家督争いを起こさせないようにせんとな」
むろん日野家の嫁さんにも男の子がまた別に生まれる可能性はあるけども、基本は長子相続であることを明言するべきだろう。
そしてこの時代だと出産時に母子ともに死亡したり、子供が生まれて一年以内に夭折することは珍しくないのでとりあえずはそういったことがなかったのはまことめでたい。
それはともかく主に海岸近くにおける地震による津波や台風による高潮対策の高台への避難場所の用意と、避難した人間が飢えてもともとの住人たちなどと問題を起こしたりしないように、避難先への食料の備蓄をさせるために赤米などの飯付き銭の手当付きでの普請を開始させた。
「上方では不人気な赤米でも伊豆では十分ぜいたく品だしな。
これで稗などを備蓄に回せればいざというときにも食うものには困らんだろう」
俺がそういうと大道寺重時はうなずいた。
「まあ、このあたりは田んぼを作れる場所自体が少ないしな。
これで俺たちを支持する民衆も増えると思うぜ」
そして風魔小太郎もうなずいた。
「赤米でも十分ありがたいものでございましょう。
普段は雑穀しか食べられぬものも多いのですからな。
むろん草を忍び込ませるのも忘れてはおりませぬが」
「お、おう、それはいいことだな」
俺は純粋に明応地震などでもっとも大きい打撃を受けるのが遠江・駿河・伊豆の西海岸であるからまだ余裕があるうちにという防災意識から行わせようとしているのだが、大道寺重時は東と西が一時的に落ち着いていて、俺たちにいろいろ余裕が有る内に飯付き手当付きの様々な普請を行うことにより、伊豆の住民の囲い込みと旧国人勢力からの民衆の切り離しを行って支配の強化に利用しようとしているっぽいし、風魔小太郎はこれ幸いとあちこちに間者を潜り込ませ風魔の情報網の構築、強化を行っているっぽいけどな。
まあそれらもやっておかなくてはならないことではあるんだけど。
国人というと支配者がだれであっても自分たちを庇護してくれればいいみたいな者が多いと思っていたが、伊豆の狩野氏のように古くから土着していて守護や堀越公方などでもその扱いに注意が必要とされていた存在もいるし、伊豆の宇佐美氏や関戸氏のような重臣扱いで簡単には従わない連中もいるのはよく分かった。
だからこそそういったものがいた場所は直轄地にして、現在を飯付き手当付きの様々な普請を行わせているわけだ。
実際問題として沼津や下田の港湾機能がマヒしてしまうと俺たちにとってはかなり厄介なことにもなるのは間違いない。
駿河や伊豆は、鉱山は多く海産物にも困らないがやはり農業向きではない土地が多いので生活は楽ではないものが多い。
守護などの中には民のご機嫌取りなどなぜ行う必要があるのかと思うものもいそうだが、そもそも国の基礎は民あっての物だ。
天災を防ぐことはできないにしてもそれに対しての事前対策を行っておけば混乱も最低限で済み、他の国へ逃げ出したりするものも減るだろう。




