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荏原荘付近の金や鉄の鉱山の採掘にも手を付けたいな

 備前や備中はたたら製鉄が盛んだが、その理由は鉄鉱石が取りやすいという理由がある。


 では鉄鉱石などが取れる理由そのものはこのあたりにも大昔に活動していた火山があるからということになる。


 荏原荘にも行基によって「烏休の湯」と命名された河原に湧く古湯である烏休温泉(うきゅうおんせん)があるし、日吉鉱山では銅や鉄鉱石が取れ、金山谷(かねやまだに)鉱山では金が取れたりもするが、このあたりは江戸時代以降に採掘が開始されてる場所でまだ手付かずのはずだ。


「銅や鉄鉱石に金が取れることが知られてれば、当然それがある山を巡って奪い合いにもなるよな」


 山林はまず竈での炊事や囲炉裏の暖房に必要な燃料となる薪炭にくわえて、建築資材として重要な木材の供給元でもあり、山菜や茸などの食料の供給源でもあるから、普通でも境界や使用をめぐっては大きな争いとなることが多いが、このあたりではそれに加えて、たたら製鉄に必要な鉄鉱石のある鉱山などの領有権を巡っても当然争いになることがあって、結局それは武力で解決することも多い。


 これは水争いでも同じだが、山争いは集落全員の生き死にすらをかけた争いでもあるから道理・道徳・法律などで穏やかに話し合い解決などできるわけがないのだ。


「水や山の土地を得られないなら死ぬしか無いという状態じゃそりゃ殺し合いにはなるよな。

 しかしいい湯だ」


 河畔にある烏休温泉の湯に浸かり、兵法のための鍛錬や農作業で疲れ果てた体を癒やしながら物騒なことを考えざるを得ないのはなんともではあるが、農地としてもそれなりに豊かで、鉱物資源もあるという意味ではこの江原荘を与えられたのはそれなりに意味があるのだろうな。


 備中の守護は備中守護家の細川勝久なので本来なら俺にも細川と対立していて、度々幕府に圧迫をかけてくる大内政弘の足止めをさせたいという意味合いもあるのだろうが、備中は承久の乱や南北朝時代を経てもまだまだ広大な朝廷の直轄地である国衙や公家領、寺社領が多く、さらに細川京兆家が備中を事実上の直接支配下においており、細川備中守護家は税金の取り立てなどを行なうにしても京兆家の意向を伺う必要性があったりして、結構不満もあったりするらしい。


「なんともめんどうなことだ」


 備中の有力国人としては吉備津神社の社家で足利尊氏に従って転戦し、備後に進出した足利直冬を撃退し備中国の守護に任ぜられた宮兼信の子孫の宮氏、もともとは武蔵七党と呼ばれる武士団の一角を占める児玉党の本宗家5代目である庄太郎家長が一ノ谷の戦いで平重衡を生け捕るなどの武勲により、備中国小田郡草壁庄を得て移り住み、南北朝時代の動乱で細川氏の指揮下に入って勢力を伸張させ被官となった備中庄氏、鎌倉幕府の御家人で承久の乱後に備中星田郷の地頭となって当地に移住した備中三村氏、足利庶流で備中松山城を基盤にしていた備中上野氏などがいるが……。


「よほどこのあたりの歴史に詳しくない限りはほとんど知らないよな」


 それなりに有名なところでも備中三村氏の三村家親は戦国時代に毛利の後ろ盾を得てほぼ備中を統一したが、宇喜多直家に鉄砲を用いて暗殺されたというくらいだろうか。


 備中は守護の権威が強くなく、国人もそれほどでかい勢力はない。


 そういう現状では金山などを採掘しはじめても、他所にあっという間にかっさらわれるという可能性は少ないのが救いか、どこもそこまで大きな勢力ではない上に荏原荘は東西は河沿いの平地でつながってるが南北は山があって攻め込むのもそんなに簡単ではない。


 実際に北条早雲が京都の伊勢本家の養子になって荏原荘を立ち去ったあと、その役目を引き継いだ備中伊勢氏は毛利に降伏するがその後も家はちゃんと残っている。


 もっとも北条早雲が荏原荘にそのまま残っていたとしても勢力を伸ばすのは難しかっただろう。


 北条早雲の伊豆討ち入りなどは今川の軍事的支援があったからこその成功だからな。


「まあ、いずれは京に上って幕府に仕えることにはなりそうだが」


 応仁の乱で京から続々と守護が離れて地元に戻ると、幕府で政務に携わる人間が激減するからな。

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