ようやく俺の奥さんたちに子どもが出来たようだ
さて、現状は狩野城攻めを行っている最中だが、そちら方面とは別の吉報が入ってきた。
俺の奥さんに子どもが出来たのだ。
「おお、ようやく懐妊したのか。
流れてしまわぬように体を冷やさないようにさせねばな」
侍女が俺の言葉にうなずき答えた。
「はい、手はずは整えております」
「うむ、ではよろしく頼むぞ」
実際の所、奥方の日常生活に俺が関わることはほとんどなくそれぞれ住まう屋敷へ俺が通っているわけだが、この頃はこういうことは珍しくない。
文明2年(1470年)に俺は公家の娘を奥方として娶ったが、何やかやで文明3年(1471年)に駿河にまずは単身でやってきたりしていたために、落ち着くまで奥さんたちをこちらへ呼ぶことも出来なかったりしてなかなか子作りが出来なかったが、駿河に直轄領を得て足場も固まったので奥さんたちを呼び寄せて、夜な夜な子作りに励んでいたがようやく近衛のお姫様が懐妊したようだ。
まあ日野家や正親町三条家からうちの娘の懐妊はまだかと催促がきそうだし、石女扱いされても可愛そうだから残りの二人にも子どもが出来るように頑張るけどな。
そして、俺が嫁さんに出来ることは寒くなっても来たので、衣服を袷にしてその中に綿を詰め込み可能な限り暖かくさせて流産しないように取り計らうことくらいだが。
弟の弥次郎もようやく10歳になったので元服も近いがやはり子どもの存在は大きい。
それはともかく養育院の孤児たちを育てているのは慈善事業というわけではなく、風魔や歩き巫女などのような破壊工作や諜報要員として役に立ってもらうためである。
「駿河の諏訪神社から分祀して沼津でも諏訪神社を建てて、そこで歩き巫女を抱えて、素養がありそうな養育院の孤児たちの女の子を養育してもらうか」
俺の言葉に大道寺重時がうなずく。
「まあ、そっち方面で情報を得るのは大事だしな」
「それとは別に京都から遊女を呼び寄せて沼津に遊郭を作ってもいいと思うが」
「それもありだな」
とはいえ京ほどには遊郭の遊女の需要はないだろうから、指導育成する遊女も含めてたいして人数は必要ではないけどな。