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西国で二毛作三毛作が普及していた理由は深刻な旱魃が多かったこと、そして害獣退治にも真剣に取り組まないとな

 この時代では二毛作や三毛作が西国を中心に発達している。


 二毛作は水田での稲と田の水を抜いての麦の栽培、三毛作は麦のあとに蕎麦も入れるのが基本。


 こういった事が行われたのは農業技術が発達して人口も増え需要が増えたからというわけでは必ずしもなくて、平安時代後期からは西日本は旱魃が度々起きることで、稲の収穫が必ずしも期待できないことが多いために、二毛作や三毛作をできる場所ではやむなく行っていたという側面が大きい。


 もともと九州から畿内はこの時代ではまだまだ様々な技術の先進国である中国と近く、農業技術も進んでいるわけで施肥や灌漑・排水技術の向上もあるわけだが、土起こしや田起こし、種まきや田植え、雑草取りや施肥に刈り取り、田畑への給水や排水などはとてつもない重労働なので一年中ずっとそれを続けるのはものすごく大変だ。


 だが毎年のように旱魃が起こり、稲の収穫があまりにも不安定だと稲に比べれば比較的水が少なくても大丈夫な麦や蕎麦を栽培して飢饉に備えないといけなかったわけだ。


 それでも3年にも渡って飢饉が続くとどうしようもなかったり、そもそも明治時代の初期ぐらいまでは、田んぼには1年中水がある湿田がほとんどで、この湿田は湿田で鍬を振り上げて泥水をかぶりながら、田んぼの土を掘り起こす田起こしをするのも大変だが、そもそも二毛作や三毛作ができなかったりもする。


 かといって秋口に水を抜く乾田では粘土を多く含む土は乾くと非常に硬くなってしまい、まずは備中鍬で土を細かく砕いたあとで改めて平鍬で土を掘り起こすという作業をしなくてはならないから大変な重労働であったからやらなくてよければやりたくなかったろう。


 それはともかく和尚の監督の元、俺は足場の悪い河原で下駄履きでの歩行や走行による修練、河で泳ぐ水練などに加えて寺の石段や山の上り下りやらもして、主に下半身を優先して鍛えつつ、禅や外交戦略戦術謀略などの座学も寺で習いながら、環濠兼用水路の拡張整備にも精を出している。


「かなりきついし適当に体を休めないとやってられないんだが……」


 鍬を振るうことで腕や胸などの上半身も十分鍛えられるからこれもトレーニングだと考えるべきだろうが。


 もともと小作農をやっていたときも田んぼが狭かったから機械ではなくて鍬などの手作業でやっていたのでこのあたりはなれているがそれでもやはりきついことに変わりはない。


「それにしても鹿や猪、猿、羚羊や熊に鼠や雀などを追い払うのも大変ですね」


「それもまた弓矢のよい修行と考えるのが良いのではございませんか」


「それはそうですが、鼠ばかりはどうにもなりません」


「それはたしかにそうですな」


 平野部ではなく山間部の農業だと旱魃や冷夏、ウンカなどの害虫や病気以外にも頭がいたいのが(いのしし)鹿(しか)羚羊(かもしか)(たぬき)穴熊(あなぐま)、猿、月輪熊(つきのわぐま)(ねずみ)(うさぎ)などの動物や(すずめ)(からす)(はと)(かも)雉子(きじ)などが農作物を食べてしまうという問題もある。


 あちらにとってはなぜかうまいものである種がいっぱい蒔かれたり、苗が生えた場所という認識なのだろうけど、これは割と深刻なのだ。


 また土竜(もぐら)が畔をこわしてしまうこともある。


「とりあえず対策をいろいろやらんとな」


 猪や鹿、羚羊や狸、穴熊、猿、月輪熊などはまずは田畑に入れないように山の近くに先を尖らせた木を外側に向けた侵入防止の柵を作って、あとはこういった獣は大きな音を嫌うので水車と組み合わせて”鹿威し(ししおどし)”水が貯まるとカコンと音がするあれを設置して、音を立てて脅かしたり、また犬を飼って市に唸り声や匂いで近づきにくくしたりするのが無難だな。


 そしてうまくすればウリンボや子鹿、兎くらいなら犬が自分で狩ってくれる。


 とは言えこういった獣は夜行性で昼間の対処は難しいのである程度は山に入って昼間に寝ている時に狩ったほうが良いし、その時は弓矢や手ぬぐいを使った印地打ちでそれらの実践訓練とするのも大事だが。


 鼠や野兎対策にはストレートに猫を飼うのもよいが、人間の手が届きにくい3メートルほどの高さの木の枝に巣箱をかけてやって、(ふくろう)が巣作りしやすいようにしてやれば鼠が動き出す春に雛が孵って鼠を狩りまくってくれる。


 雀や鳩や鴉、雉子などの鳥に対しては鷹を飼うのが一番だな。


 ウンカなどの害虫や雑草に対しては鮒や鯉を田んぼで放し飼いにして食べさせるのがいいが、雀もこれらを食べるから雀を狩りすぎないのも大事だ。


 モグラ対策としては、竹で風車(かざぐるま)を作り畦に挿しておく。


 風で風車の羽が回ると、その音や振動が地面に伝わり、目が殆ど見えない代わりに音や振動に敏感な、モグラをそこから遠ざけることができる。


 また畦などに彼岸花をうえると害獣や害虫の対策になるが、モグラ対策でも、土竜の主なエサとなるミミズや昆虫が彼岸花の咲いている場所には近づかないためにそれなりに効果がある。


 とは言え多少の被害は仕方ない部分もあるが。


 仕留めた鳥獣は鍋にして野菜やきのこと一緒に味噌と生姜を入れて煮込めば美味しく食べられる。


 皮は武具を作るのに使えるし田畑に被害を出す害獣もうまく狩れば食生活の改善には役立つだろう。


 そして柵は他所の村の人間などの侵入の防止にも役に立つのは言うまでもない

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