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経済の根っこの権限を持つと面倒事も増えるらしい

「どうぞこれからもよしなに」


「ああ、こちらこそよろしく」


 俺が遊郭と商業の座の権利を抑えると、優先的に便宜を図ってほしい商人やおこぼれに預かりたい武家などが頻繁に伊勢屋敷へやってきては、付け届けの品をおいていったり、挨拶をしていったりするようになった。


 伊勢貞親が政所執事として絶大な権力を持っていた頃はこういう光景もよくあったようだが、文正の政変で失脚するとそういった物もめっきり減っていたらしいんだけどな。


 で、現状そういった付け届けに関してうまくさばけているのはそういった過去もあってなれている伊勢貞親の被官の者たちの協力があるからで、それには実父の伊勢盛定や養父の伊勢貞道なども含まれている。


「父上たちのおかげで助かっております」


「うむ、困っているならばどんどん頼るがいい」


「うむ我々はお前の父なのだからな」


 さらに伊勢貞親が政所執事に返り咲いたことで今川の申次衆から将軍の申次衆へ回され、細川勝元や山名宗全、日野勝光や足利義政の使いなども頻繁に屋敷に来ては、俺はそこへ出向いて、自分たちに有利になるように取り計らえとか、ああだこうだと言われたりして正直疲れ果てていた。


「どいつもこいつも金金金。

 まったくもって胃が痛いが、なんでこんな面倒くさいことになったかな」


 無論軍を維持するには大量の銭がいるし、応仁の乱以降は守護や守護代が地方から年貢を送ってこなくなったことで、朝廷も幕府も困窮しているからなんだが政治とか経済の中枢に関わるとこんなにも神経をすり減らす事になるとは思わなかったし、荏原荘の経営だけ考えていただけのころが正直懐かしい。


 まあ母さんが好きにさせてくれてあれこれ口を挟んでこなかったからっていうのもあるんだろうけど、それをさせてもらえたのはどちらにせよ荏原荘からは離れることをわかっていたからなんだろうな。


 とは言え内大臣の日野勝光、将軍足利義政、管領の細川勝元、政所執事の伊勢貞親などはもっとあれこれと面倒事を片付けないといけないのだろう。


 それを考えれば申次衆や奉公衆というのはまだまだ楽なのだろうとはおもうが、理不尽な命令でも受けなければならないというあたり別の意味で大変ではあるんだろうけど。


 大内と山名という圧倒的な軍事力を誇った西軍に対して東軍は軍事的に劣勢で、花の御所を中心とした「御構」という土塁と堀で囲まれた地域での防御を余儀なくされていたが、狭い範囲に人が密集していたことでしばしば疫病や火災が発生し、疫病の「赤疹」が大流行したことで、疫病の原因である怨霊を鎮める盛大な御霊会が開かれたが、それに対しても御霊神社や天満宮を焼いたことが原因なのではないかと京雀の間で噂になっていたようだ。


 ちなみに伊勢家では患者は出ていない。


 そういった事もあって細川勝元と山名宗全の間で和議の話し合いがもたれ始めた。


 応仁の乱の開戦要因の一つであった山名の領国の播磨・備前・美作は赤松政則に全て奪還された上、山名宗全の息子達もかねてから畠山義就の支援に否定的であったからだ。


 しかし、この和議は身の危険がある足利義視、山名への領土返還や山名氏の再侵攻を怖れた赤松政則、家督を奪われたままの畠山義就、細川と特設的に対立していることから守護職や領国を奪われるのではないかという危惧を抱いた大内政弘らの反対で失敗した。


 ちなみに今までの合戦の結果で官職があがったり、領地が増えたりしたような守護は赤松を除けばほとんど誰もおらず、討ち死にした人物もほとんどいない。


 そして11月、東軍の畠山政長を支えた興福寺の僧兵頭の成身院光宣じょうしんいんこうせんが80歳で没した。


 この光宣の死は興福寺の後押しを受けていた筒井順永の大和における政治力を大きく低下させ、大和の東軍方は苦境に立たされた結果、越智家栄により大和は西軍が制圧していくことになる。


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