集会場のような大きな竪穴式住居を作って皆で飲み食いをするか
さて、とりあえず木綿の種は手に入った。
「とは言えこれで衣が作れるわけではないがな。
やはり竪穴式住居を作ろう、しかもでかくて皆で集まって飲み食いできるものを」
というわけで地侍や百姓の次男次女以下の者たちを集めて、まずは皆に言った。
「せっかくの収穫の秋だし皆で飲む食いできて暖かく過ごせる集会場を作ろう」
「ん? 飲み食いできて暖かく過ごせる集会所ですか?」
「ああ、みんなの合力があれば早く作れるはずだ」
多くの者はよくわからんという表情だったが大道寺重時は賛意を示してくれた。
「まあせっかく今年は割と作物も取れたし、いいんじゃないか」
「ああ、そうだな」
「じゃあやってみよう」
というわけでまずは皆で備中鍬を使って土を砕き、平鍬や鋤で地面を掘って、長さ30m×幅10mほどに端は丸くしながら約1mほど土を掘り下げ、掘った土は周りに積み上げて穴に雨水などが入らないように、しながら土で階段を作って、それを上がることで簡単に外との出入りができるようにする。
掘った土を積み上げて土塁にするのは環濠でもやっているが、こうすることにより、穴を深く掘らなくても内部空間の高さを確保する事もできるわけで2mくらいの高さになるわけだ。
人の出入りする入口の部分に積む土は低めにして、その他の場所は高くすれば出入りも楽だしな。
そして、入り口から新鮮な空気を入れ、真ん中に囲炉裏を壁際に竈を設置して、それらの熱で暖まった空気は、上昇して一番上の採光窓を兼用する換気口から出て行き、其れにより建物内は熱によって乾燥しつつ湿気もいっしょに上から出ていく。
そして地面の温度は15度くらいで周囲の気温や地温よりは温かいと思うが、直接寝ると体温が奪われるので笹の葉を敷き詰めた上で茣蓙を敷いて座り心地も良くする。
中間となる場所に8箇所ほど直径50cm程度、深さ80cmの程度の穴を掘り、そこへ枝を切り払った竹を柱として建て、その穴を埋めて固定する。
その頂部を横に梁でつないで、周囲に対して放射状に垂木を架け、そこへ笹の枝をかぶせて覆えば屋根が完成、あとは土をその上に被せれば風で跳んでいくこともなくなる。
「よしできたな!
中に入って飲み食いするぞ」
囲炉裏に関しての燃料は竹炭を使い薪はなるべく少なくする。
天井部の採光用の窓があるから、そこまで真っ暗という訳ではないので昼間なら竹炭だけで十分だな。
「おお、意外と暖かいな」
「本当だな」
「環濠だって水を入れなきゃ同じように使えるが用水路としても侵入防止としても大事だしな」
酒は赤米酒や雑穀酒のどぶろくだが、まあたまに飲む分には悪くない。
川で魚を取りワタやエラを取って塩を振って竹串に挿して火で炙り、山から降りてきた鹿や猪など害獣として駆除した肉を干してあったものを味噌汁で煮込んで戻し、赤米を炊いて皆で食らう。
まあ肉は食いたくないものには無理には食わせんが。
「今年はよそも飢えないですんでよかったな」
「全くだ、作物を食われないように夜に見張ったりするのは獣だけで十分だ」
この時代の人間の命の重さは平等ではない。
俺たちのような古くからの武士階級と地侍もそうだし、百姓でも父親や長男とそれ以外の扱いはまるで違う。
惣村同士の争いで前に立って戦うのは次男以下次女以下で、最悪彼等は土地を継ぐわけではないので死んでも構わないと思われているのが現実だ。
だからせめて余裕がある時は彼等にも楽しい思いをしてもらいたいと思うんだ。
「それにしてもこれはいいな冬の間はここで寝泊まりするか」
「それもいいな」
「たしかに」
掘っ立て小屋でも部屋は壁やドアの鍵などで別れているわけではなく、プライバシーなど無いのが実状だし、こっちの方が暖かくて過ごしやすいのは確かだしな。
「ああ、それもいいんじゃないか、必要ならもう一つ二つ作るのもありかもな」
とりあえず今日はここでみなでごろ寝になりそうだけどな。