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スクリュー式の圧搾器はこの頃使われてる長木式より断然楽で絞れる量も多いが木製は壊れやすく鋳鉄製は高価なのが欠点だな

 さて、赤米や稗、大豆などと共に荏胡麻の収穫も終わったので、赤米は千歯扱きで脱穀しているが、それと同時に荏胡麻を圧搾して油を絞る作業も開始される。


 ああ、収穫の一部は情報をもらってるお礼として法泉寺や諏訪神社に寄進しているよ。


「ようやくネジ式圧搾機の出番だな」


 この時代における油の圧搾は事務室にある裁断機のように、長い材木の片方を固定し、反対側に持ち手をつけ、固定された側の近くに石臼をおき底にえごまを入れて、その部分に杵となるものを取り付けて、麻縄で持ちての部分を下の部分に対して縛ることで強い圧力を中央の杵の部分に加えて絞る仕組みだがそれほど効率は良いものではない。


 それでも荏胡麻はその種子の40%ほどが油なのでその1割から1割5分ほどの油を絞れたが。


 江戸時代には油搾木(あぶらしめぎ)という圧搾方式が開発される。


 搾木(しめぎ)と呼ばれる木材を2本の立木(たつぎ)の穴を通して置き、その真ん中に臼を置き、搾木と立木の上に間に矢と呼ばれるでかい楔を打ち込んで強い圧力をかけて、油を搾り出す方法だ。


 これにより搾油できる割合は上がった。


 更には水車を使って油を絞るとさらに効率は上がる。


 江戸時代は平和な時代になったこともあり、さらに菜種は耐湿性が麦類より強いため麦に変わって稲の裏作で菜種を栽培する農家が増えて荏胡麻から菜種油に主流は変わった。


 しかし、室町時代ではまだ油菜をたべる習慣はなく、食べられるようになったのは違う品種が西洋からはいってきた明治時代以降で、室町時代では麦栽培が優先されていたこともあって菜種はあまり栽培はされていない。


 菜の花は「食用」「油」「観賞用」でそれぞれ違う品種なんだ。


「米を油で炒めるのは流石に寺社でもやってないが、油揚げとか厚揚げにはしてるんだよな」


 寺社で食べられる精進料理には油脂成分が少ないのでそれを補填するため、豆腐を揚げて、油揚げや厚揚げ、がんもどきなどにしたり、饅頭やそうめんなども場合によっては揚げてたべたりもする。


 で、西洋ではローマ時代から木製のスクリューを使ったオリーブオイルやぶどうの搾り器があるのに、中国や日本にはないのは釘はあっても、ネジというものが中国で発明されなかったからだ。


 西洋にはネジが昔からあったからポルトガルの火縄銃が日本にはいってきた時には尾栓のネジの製造法が最初わからず苦労したらしい。


 雄ネジは糸を等間隔の螺旋状に捲いてヤスリで削ることで作れるが、雌ねじは筒の中だからそうは行かない。


 現代だとタップと万力があれば簡単にねじ切りはできるし、その頃の西洋ではハンドタップもすでにあるのでそれを用いて加工したようだが日本にはそんなものはない。


 仕方なく最初は銃身の底を鍛接したが、それでは銃底にたまった火薬のカスを取り除くことができず、導火孔が目詰まりするため、不発や暴発を引き起こす致命的な欠陥銃となって実用性は皆無だった。


 それ以前にも日本には東南アジアからで鳥銃と呼ばれる鉄砲が倭寇経由などはいってきていたが、威力があまりなく暴発しやすいため普及しなかったらしい。


 最終的には真赤に焼いた銃筒に冷水で冷やした雄ネジをハンマーで叩き込んで入れてから冷やしてまわして外すことで雌ネジを作ったが、ねじそのものの溝が統一された規格で作られるわけでもなく、マスターとなる雄ねじ以外の鉄砲には使えないわけだが。


 そしてねじ圧搾機そのものは、古代ローマでの発明品だが、ねじ式は構造が比較的単純かつ小型にできる上に、テコの原理などよりもずっと多大な圧力をかけることが可能。


 これは万力でガッチリ固定できることがわかってれば納得できるだろう。


 ただ木材の欠点は金属に比べるとやはり強度的に弱くて、溝が細いとネジが折れたりして詰まったりしやすくて壊れやすいことだな。


 これは強度を維持するためにネジの溝の幅をでかくして、圧搾機自体も大きくすることでも解消はできるんだが……。


「溶かした青銅か鋳鉄を型に入れる時にヤスリで削った雄ねじを入れ込むか?」


 これは鉄砲の尾栓の雌ねじを作るのと同じような考えで柔らかいうちに雄ねじを突っ込んで形にさせればいいってことだ。


 ちなみに活版印刷機の発明で有名なグーテンベルグはオリーブやぶどうの圧搾のねじ回しの技術を応用して、版画の凸面に付いたインクを紙に押し付けて印刷を行う、活版印刷機を発明した。


「一年中油絞りをやるなら水車を使ったほうが楽なんだけどな……」


 水車を作れば米の脱穀や雑穀の製粉などもだいぶ楽になるが、水車はメンテナンスがとても大変なのが問題だし、俺はずっとここにい続けるわけでもないが水車は持ち運びができないというのが最大の問題でもある。


「小型で持ち運びできる程度の鋳鉄製圧搾機を鋳型とヤスリで削った雄ねじで作るくらいにした方が多分良いな」


 というわけで一日で絞れる油の量よりも効率と持ち運びを優先して鋳鉄の圧搾機をいくつか作り、手が空いているものにそれを使って油をしぼらせることにした。


 油の量もネジ式だと3割位は絞れるようになったし効率自体は上がってるからいいと思う。


 それに荏胡麻油は酸化しやすいから食用に使うなら使う直前に絞ったほうが良いしな。


 灯火や油紙に使うならそこまで気にしなくてもいいわけだが。

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