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塩と交換するためにも荏胡麻を増産して圧搾しやすいような油搾り器も作ろうか

 さて、荏原荘のある後月郡(しつきぐん)は海に面している場所ではないので、自分たちで製塩して塩を手に入れることはできない。


 瀬戸内海は潮の満ち引きによる潮位の差が大きく入浜式塩田にむいているが室町時代にはそれに近い古式入浜塩田が既に作られており、遠浅の海を低い堤防で囲んで、満潮時には海水が入るようにして干潮時に天日と風で乾いた塩の砂を沼井に集め、海水を注いで鹹水を採り、釜で塩焚きする方法で製塩を行っている。


 これでも揚げ浜式に比べ海水を桶で担いで塩田にぶちまけるという重労働をしないで良い分だいぶ楽になっているのだな。


 とは言え河はあるが海に直接面しているわけではない荏原荘では塩田で塩を作って儲けるということはできないが。


「まだ刀や荏胡麻と行った特産品がある分だけだいぶましだがな」


 荏原とは荏胡麻の生える原という意味であり、この時代では油の原料として重要な荏胡麻栽培に適している土地であるのだから、それを塩と交換することで足元を見られないで済むわけだ。


 荏胡麻は紫蘇と同種の変種で、日本ではあまり好まれないが葉っぱを食べることもでき、別名ジュウネンと呼ばれ、荏胡麻を食べると10年長生きできるといわれているが、これはエゴマに含まれる、必須脂肪酸であるα-リノレン酸の割合が、全脂肪酸の6割以上と非常に多く含まれていることにあり、α-リノレン酸は、血管の中に沈着した中性脂肪を溶かして、血栓を解消し、血液の流れをよくすることで血圧を下げ、炎症やアレルギーの症状を抑えるとされ、おなじオメガ3脂肪酸であるEPAやDHAを含む青魚を食べられない山間部では特に重要なのだが、この時代は海の近い場所に住んでいても青魚をたくさん食べられるわけでもないので、オメガ3脂肪酸を摂取できるのは大きいわけだ。


 そしてこの時代では油を紙に塗り込んで油紙にして防水のため利用したりもする。


 和傘に油紙をつかったり、合羽代わりに着込んだりもできるし、行灯などの灯火用にも利用される。


 そしてやや冷涼な気候を好むため米に対しての救済作物としても栽培され、吸肥力が強いため、施肥をあまり必要とせず油を搾ったあとの油かすでも十分で、そのため土壌を選ぶことが少なく、雨にさらされて酸性度の高くなっている開墾地やリン酸の欠乏している火山灰地などでも栽培できるメリットも有るのだな。


「荏胡麻はたしか石灰の施肥効果がかなり高いんだったっけ?」


 近くの山では石灰石も取れるからそれを加熱して粉々に砕き苦土石灰を作ってそれを蒔いて育ててやれば収穫量はぐんと増えるはずだ。


 この時代の油絞りは二枚の板の間に荏胡麻の種を挟んで、その板を同士を締め付けて油をしぼりとる長木(ちょうぎ)という道具が使われているが、これはあまり効率がよろしくないので効率よく油を絞るためにローマ時代にオリーブオイルを絞るために開発された螺子式(スクリュー)プレスを作るのが一番いい気がするな。


 これはハンドルを回転させてネジのついた棒を上下させてその圧力で油を絞るもので現代でもオリーブオイルのハンドメイドなどに使われている。


 東洋ではネジの開発が行われなかったので馴染みがないのではあるが、日本で搾油に使われるものに比べかなり小型化もできるしな。

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