A.D.4021.驚異のナイン
宇宙空間でセブンスは茫然としていた。
ドーラカノンによる攻撃が効かなかった、そうではなく、カノンを打ったことさえ、無効にされてしまった。
「意味が分からない! どうなっているのファルコン!?」
記録した情報を基にファルコンが、推測した内容は驚くべきものだった。
「ブルーノヴァは、未来を書き換えたと思われます。こちらのエネルギー、カノンの状態が発射前とまったく変わっていません。時間もです。導きだされる推論は”攻撃した事実を消す”こちらがいくら攻撃しても、その動作自身が削られ、無かったことにされてしまいます。つまり、フェニックスのいかなる攻撃も無効です」
「そんな……まるで神の所業じゃない……そうか相手は神なんだ……ファルコン、最大パワーでドーラカノンを打ち出して。同時にM・G・Fを張ってブルーノヴァに突っ込む。私の最高の攻撃と、物質を完全に捉える重力シールド、この二つでいくしかない」
再びライフルリングが輝きだすドーラカノン、今度は許容できる最大のパワーを込めて、ブルーノヴァを直接狙う。同時に重量シールドを全開にして、前にフィフスを捉えたように、重力を発生させた。
「フィフスに言われた。同じタイミングでの攻撃は重ねさせない、リズムを読まれない。この攻撃で勝負をかける」
ドラーカノンが聞いたこともないうなり音をあげ、砲身からは稲妻が周囲に走り、フェニックスも真っ赤に燃え出す。青いライフルリングビームーが放射され、先ほどとは比較にならない高エネルギーが打ち出された。同時にブルーノヴァへと重力子移動で突入するフェニックス。
フェニックスがラストドール、ナインの騎乗する、ブルーノヴァへと向かう。
ドーラカノンを打ち出したフェニックスだが予想通り、攻撃時間が削除され、全てが元に戻ってしなった。二段攻撃として接近して重力でナインを捕まる作戦を実行。
「どうしました? なにか意外そうですねセブンス」
戦う意思どころか、優しい視線を向けるナインに、大きな違和感を持つセブンス。柔和な顔に優しい視線を変えないナイン。
「なぜ、そんなに必死な顔をしているのです? セブンス。可愛い小鳥が遊びに来てくれたのが私はとっても嬉しいのですよ」
セブンスが二刀を引き抜き、怒りを見せる。
「私は……可愛いペットというわけか」
問いには答えず、柔和な笑顔のままのナイン。
「その笑顔を止めてあげる!」
M・B・F、重力シールドを全開にして、ナインをフェニックスの重力に捉えた。
フェニックスの重力は木星から拡張され、銀河の中心にある巨大なものと同等、逃げられる者などいない。
「ナイン、動けないわよ。マイクロブラックホールエンジンを積む、銀河唯一のフェニックスの力を見くびらないで」
「まったく。そんなものがなぜ必要なかしらね」
「何!?」身構えるセブンス、近づくナイン。
「なぜ……動けるの……理論上あり得ない。あ、もしかして私より強力なエンジンを積んでいるの? それなら……」
目の前まで接近したブルーノヴァ、危険を感じて距離を取ろうとするセブンス、だがフェニックスが動かない。
「なんで? どうしたの私のフェニックス!?」
焦りと恐怖がセブンスを包む。それを感じたようにナインが優しく言った。
「怖がらなくてもいいのです。私はあなたのような強力なエンジンも武器も持っていません。ただ、この宇宙に存在する力を借りている……ただそれだけです。セブンス、あなたは自分の重力に魅かれ過ぎています」
ブルーノヴァがフェニックスを抱きしめた。そして伝えた。
「解放しなさい。あなたは自由になるべきです。この世界を守る義務もなんかない、七海の呪いも捨ててしまっていいの」
ビク、セブンスの身体が金縛り状態になり、声も出せない。
だがナインとの会話は続く。
「怖がらないで……私の亜種として成長したセブンス。可愛そうな人形、何も知らなければ、今もきれいな姿でティータイムを過ごしていたでしょうに」
心に直接話かけてくるナイン、身体を縛られているのに心地よい声。
浮遊するセブンスの心が自分に呟く。
「私は何も知らなかった。左目の人が教えてくれた。死に方を見つけなさいと。そして戦った。多くの者を殺した。それは間違いだった……」
頷くナイン。
「そうです、人は愚かな生き物。生きているかぎり罪を重ねるのです。だから戻りなさい、何も知らない純粋な人形に」
セブンスは意識が遠くなっていく。フェニックスを抱きかかえたままで、ブルーノヴァが少しだけ力を込めた。
砕けるセブンスドール・フェニックス。宇宙に放り出されたセブンスが無重力に浮かぶ。
「力が入らない……ナインの言う通りなの? 私は人形の方がいいの……?」
漆黒の宇宙に答えは無かった。
「さあ、セブンス、戻りなさいあの頃に幸せな時に」




