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セブンスドール  作者: こうえつ
(最終章)まだ宇宙に神はいない
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A.D.4021.神の葛藤

[……セブンスが来ました。フェニックスとなって」

 青い瞳の少女がバルコニーから空を見ている初老の男に近づく。

「ついにこの時が来てしまったようだな」

 老人の言葉に静かに頷く青い瞳の少女。

「どちらをお望みですか。レべリオンとアルモニア、いや本物の神と七海の生まれ変わり、その方があなたには大事かと思いますけど」

 少女の問いに老人は目を閉じた。

「私はもう疲れてしまった。哲士は200年前に偶然発見され再生されこうして生きておる。しかしその事が、私を助ける為に七海が考えた蟲毒プログラムと合わさり複雑な状況を生んだ」

「そうでしょうか」少女は老人シルバに尋ねる。


「シルバ、あなたは七海との再会を望み、計画にない事を始めました。救済対象は七海の”哲士”から”人類”へと変更されました。しかし、あなたはドールズを造り、セブンスを生み出し七海の左目も与えてしまった」

 シルバは青い目の少女である十五代皇帝を見つめた。

「本当ならおまえ、九番目のラストドールであるナインだけが世界を決める神……だったのだ」

 セブンスと同じ銀色の腰まである髪が、風で顔にかかった右手で払った銀河皇帝ナイン。

「私に七海の目を与えなかった事は人間性を低くして、より神により近づきました」

 深く項垂れたシルバは、バルコニーの手すりを掴んで、青い空を見上げた。

「生まれながらに神の力を持つナイン。七海の生まれ変わりのセブンス。戦わないといけないのか……この落ち着いた安息の日々。それがいけないというのか」 

「ええ」頷いたナイン。


「この惑星は別の種族が住んでいました。それを絶滅させ星の環境も激変させ、多くの原生生物も消滅しました。こんな事が銀河中で起こっています。人類だけが安楽に異常な数を維持する為に、この銀河は死にかけています」

 力なくナインへ言葉を返すシルバ。

「たしかにそうだ。不完全な魂を持つ人類は滅ぶべきなのかもしれんな。だが、一方的な破滅への誘導は私には納得できない部分もある」

 悲しそうに眼を閉じたナイン。

「だから私が十六年前に完成したのに、ドールの研究を続けて七海の生まれ変わりを造り出し、私に向かわせたのですね」

 額を右手で抑え、深い悩みを表情に出すシルバ。


「忘れるはずだった。二千年前の恋など。人類の行く末や神の創造などと比べて些細な事。だが、年を重ねるたびに、会いたい、その想いがどんどん強くなる。人間というのは矛盾の塊だ。七海の生まれ変わりを作り私の生まれ変わりを作り、二人には一緒に生きてもらう。それだけで我慢するはずだった、できるはずだった」

 青い目の皇帝はシルバの肩に手をつけ顔を寄せた。

「それがセブンスとクロムなのですね。神の私も矛盾しています。神になりたくないのです、それはずっとあなたと一緒にいたいから。この美しい世界の終わりを二人で過ごしたいのです」

 ナインの肩にかかった手を握ったシルバ。

「皮肉なものだ。七海として作ったセブンスではなく、神として作ったナインに七海の魂が宿るとは。結果、滅びと革新の女神の二人を造り出してしまった」

 シルバからゆっくりと離れたナインは空を見上げた。

「間もなくセブンスが来ます。本当に良いのですか戦っても」

 振り返ったシルバが悲しそうな表情を見せる。

「仕方ない事だ。私の行動が大いなる矛盾を生み出した。銀河の行く末をきめるは、おまえたちナンバーズドールだから」

 視線を下げ昔の事を思い出しているナイン。

「他のドール、私の姉たちはセブンスに味方しているようですね。母である鈴々でさえもです。でも仕方ありません、神は一人孤独ですから」

 振り返り歩き出すナイン。後ろから言葉をかけるシルバ。

「調和と反抗は同居できないか?」

 一瞬、立ち止まりシルバの方に顔を向けたナイン。

「ええ、セブンスは死ぬでしょう。それに他のドールも母もです。そして、あなたが自分の代わりに、この時代の哲士として育てたクロムも一緒に消し去ります。そしたら……お別れです……愛するシルバ……私は神となりこの銀河に……秩序をもたらします」

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