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セブンスドール  作者: こうえつ
(最終章)まだ宇宙に神はいない
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A.D.4021.訪ねてきた者

惑星ソフィア。

 革命軍のジャンプを阻んでいた砂の惑星と、帝国の首都星と丁度中間に位置する。

 帝国内にもかかわらず、自立と自由権を持たされた星系で、帝国軍の常駐もされていない。帝国から見れば国民に自由を与えている印象を見せるため、そして反乱軍、辺境の連邦との商売にもばかにならい、利益と情報が得られる場所となる。

 帝国の力が及ばない辺境にはまだ貴重な資源が残っており、主義的に敵対する自由連邦から奪うより簡単で、安全な取引の場として暗に認められている。

 自由連邦から見れば、戦いの資金を得て兵器を買う場所として必要だった。

 お互いの都合で出来た自治区ではあったが、レニウムやテルルが身を隠し、情報を集めるにはよい場所であった。


「それにしても、サンタナ、私たちの船を停泊させても、おとがめなし。なんか不思議な感じ。自治区といえ、帝国内なのにさあ」

 テルルが小さな身体いっぱいに、食料品の袋を抱えながらレニウムに話しかける。同じく日用品を山と抱えたレニウムが、荷物の隙間からテルルの方を見た。

「まあ、金さえ払えば何でもオッケーなんだろう。外で戦争していても、ここには影響がないからな」

「まったく、気楽なもんね」

 テルルの不満に、袋からはみ出したフランスパンも、否定するように左右に揺れていた。

「まあ、そういうなテルル。今の俺たちにとっては良い隠れ家だ。ここなら帝国軍の情報も豊富だしな。クロム達の事も調べられる。おっと!」

 抱えた荷物が崩れそうになったので、ポンと軽く空中に浮かして、再度、抱え直す。二人がこの星に潜入して十日あまり、まだここでの生活は続きそうだった。


連邦と連絡はついたが、クロム達の情報は得られなかった。

セブンスが放った相違転送キヤノンは、星の表面を完全に破壊した。

スキャンの結果、残骸さえ見つかっていなかった。

「アンノン」行方不明との報告。レニウムとテルルが見た景色。

真っ白な光に壊されていく星。二人とも希望は持てないでいた。


「ふぅ、クロムはおろかセブンスも消えたまま。あいつらが簡単にはくたばらないとは思うが」

 滞在しているアパートの階段を必死に登るテルルは、レニウムの呟きには反応できない。

「もぉーー今頃、四階まで階段っておかしくない?」

 すごく古くアメニティ設備などまったくない。科学が発達しても、世界から貧困は消えていなかった。

「四十世紀、つい最近まで人は未来を信じて進んでいたが、今では資源を食いつぶし、貧富の差も大きくなっている。まるで二十一世紀のようだ。二千年前も戦争、テロ、人種差別、宗教の違いで人類は孤独だった。働いても裕福にはなれず、一部の特権階級が世襲制で地球を抑圧していた。二千年経っても、人はまったく変わってないな」

テルルは歴史に興味があるレニウムの言葉には、反応しなかった。

 それはテルルが歴史に興味がない、だけではなく、自分たちの部屋の前に立つ、男女に警戒を見せたからだった。


「あなた達、何者? 私達に何のよう?」 

 二人の美少女と一人の男。三人のうちのリーダーらしい少女が答えた。

「私は元帝国軍の……あれ?」

 帝国軍という単語に反応したテルルが身構え、その緊張が抱えている紙袋に伝って、落ちた。フランスパン。

「よっと。はい、これ」

 少女が長いフランパンをキャッチして、テルルに手渡そうとする。

 だが、テルルは逆に一歩下がり、緊張を警戒レベルへと押し上げた。

「その速度。見かけは可憐だけど、やはり軍の兵隊。ドールもしくは私と同じ強化人間でしょ?」

 まてまて、とレニウムが前に出る。

「これ以上、食料を落とされても困る。それにお嬢さん二人より、おれが気になるのは後ろの男だが……あんた軍人だね、しかも強者のようだ。とりあえず帰ってくれないか。こちらも生活なんてものがあるんでね」

 リーダーらしい少女は、真っすぐなストレートヘアを揺らし、頭を軽く下げ、自分の身分を名乗る。

「すまない。今じゃないと困るんだ。時間がない。私はフィフスドールの操縦者、この子も一緒だ。後ろのフードの男は君たちの出方を見ないと、正体は明かせない」

 紹介された身分にレニウムも驚き、警戒色を見せた。

 それを右手で制した少女、アイアンサンド。

「まあ、待て。君たちは知りたくないか? あの時、砂の星で何があったのか。そして銀河帝国の真実を」

 顔を見合わせたテルルとレニウム。

 長い髪を右手でさらりと流し整えたアイアンサンド。

「どうやら興味がありそう顔だな」

 少女の言葉にレニウムがため息をつく。

「ああ、知りたいね。今すぐにでも。中に入ってくれ。フィフスのチームなら、どうせ俺たちの事は調べてあるんだろ? 今更騒いでも遅いだろうしな」

 仕方なく同意するテルル。

「そうだね。後ろの軍人さん。おとなしくしててくれれば、お茶くらいは出すよ」

 フードを深くかぶり顔が見えない、男は背が高く、厚い衣のせいで分かりずらいが、骨格もガッシリしているようだ。レニウム、テルルの睨んだ通り軍人だと思われた。

「ありがとう。今は身分を明かせないが、この会合の結果が予定通りなら、君たちに協力すると約束しよう」

 低いトーンだが力あふれる声に、経験を得た戦士だと確信したレニウム。

「そうか、あんたならかなり頼りになりそうだ。さあ、中にはいってくれ。あ、すまんがパンは持ってきてくれ。今更、テルルの腕に差し込むのは危険だからな」


 三人を迎え入れたレニウム、テルルは席を外し隣の部屋でセイロンティーを入れている。殺風景なリビング。手前の二席の片側にレニウムが座り、奥の二席にアイアンサンド、リンが並んで座った。フードの謎の男は二人の後ろ、窓際に立つ。

「さて、まずは砂の惑星での出来事を説明してもらおうか」

 頷くアイアンサンド。

「まず、君たちの隊だが、残念ながら全滅した。三機がフィフスまでたどり着いたが、やはり彼女には敵わない」

 うなだれたレニウム。覚悟してたとはいえショックは隠せない。

 だが、レニウムはアイアンサンドが続けた話に顔を上げた。

「ただ、クロム・サードの生死はわからない。クロムがフィフスにたどり着いたのは確かだが、なぜか抗戦していないふしがある。もしクロムが戦いに参加していれば、フィフスも無傷ではいられなかっただろうし、黒いヘルダイバも確認できなかった」


 お茶を配りながらテルルが目を輝かした。

「じゃあ、クロムは生きているのね?」

 首を傾げるアイアンサンド。

「あくまでも私の見解はそうだ。もう一つそう考える要素がある、それは後で見せよう。だが、なぜクロムが戦闘を放棄したのか、今なにをしているのか、どちらも説明できない。生死についても確信はない」

 落胆を見せるテルル。レニウムがセブンスについて聞くと、引き続き黒髪の少女が答える。

「セブンスは帝国軍に捕まり、現在はロイド星に拘束されている」

 レニウムが驚き聞き返す。

「あのセブンスが捕まった? フィフスを倒したのだろう? 帝国軍ごときに捕まるとは思えない。それにロイドは首都星の次に警戒が厳しい監獄星。助けるのは無理だ」

 アイアンサンドも同意見だった。

「セブンスの奪還は難しいだろう。我々にはな。ただし方法はある、それも後でみせよう。セブンスが拘束された事は謎が多い。フィフスに追い込まれたセブンスは、セブンスドールを進化させ、フェニックスとして蘇らせた。あれはとんでもない兵器だ。銀河で立ち向かえるものなどいないだろう」

「それじゃ、なぜ」とレニウムが聞き直す。

「セブンスが見つかったのは惑星から少し離れた宇宙空間だったようだ。フェニックスはそこになく、ただ、セブンスが戦闘服のままで浮かんでいたようだ。体の損傷もひどいが心は完全に壊れていた」

 テルルが意味を問う。

「壊れたったって、どういう事なの?」

 下を向いてうなだれ答えたアイアンサンド。

「……まったく、反応しないそうだ。ただ独り言を繰り返すだけ、誰の問いにも答えない状態。姉のフィフスを一方的に殺し、クロムも間接的に自分が殺したと自分を責めるあまり、セブンスの心の寛容を越えたんだろう」


 レニウムが希望を絶たれたように首を振る。

「つまり、クロムは生死不明。セブンスは廃人。最悪な状況か……まったく」

 アイアンサンドがポケットから、小さな金属の箱をテーブルに出す。

 一瞬緊張がはしり、隠しておいたブラスタガンを構えたレニウム。

「心配するな。武器ではない。メモリカード入れだ。いいか、開けるから打つな」

 アイアンサンドが右手で静止の仕草で、左手でゆっくりと箱を開けた。

 現れた二枚のメモリカード。アイアンサンドはレニウムを伺いみる。

「このメモリカードはフィフスが私達に託した希望。君たちの逆転を実現する情報が入っている。どうか内容を見てくれ」

 真ん中のカードを抜いてレニウムへと差し出した。

  

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