A.D.4020.鈴々の秘密
「ありがとうクロム。今日も来てくれて」
鈴々の言葉に少し照れたクロム。
「集合まで時間が出来たからな」
「フフ、優しいね」
鈴の微笑に益々、照れるクロム。
「そんなことはないぞ。仲間だろう? 当たり前の事だ……そうだ、うん」
少し赤みを帯びたその顔に鈴々がほほ笑むが、どか表情に影が見られる。
「捨てられた私が仲間に囲まれて生きてこられた。クロムが傍に居てくれた。私はとっても幸せだった」
「どうした鈴々。今日はおしゃべりだな。さっきの画像でショックを受けたように思えたが」
鈴々は新しい銀河の支配者、幼き青い目の女王にショックを受け、体調を悪くしたように見えた。心配したクロムが病室を訪れたのも、先ほどの鈴々の様子から加減を見るためだった。
「そのぶんだと、調子はまあいいようだな。少し顔色が悪いが。やはりさっきの放送が……病人のおまえには見せるべきじゃなかったな」
クロムの武骨だが男らしい優しさが伝わる。
「やっぱりクロムは優しいね。ねえ、お願いしていい?…クロム、私の横に来て頂戴」
「うん? いいが、身体は大丈夫なのか」
鈴々は笑いながら自分のベッドの端に座り、ポンポンと右手で横を叩く。
それを見たクロムはぎこちなく鈴々のベッドに座った。
大きな体はベッドスペースの大部分をを占め、自然に鈴々との距離が近くなる。
クロムの肩に顔を乗せ、クロムの手を握る鈴々。
「どうした鈴々。本当に大丈夫か? 疲れているじゃないのか」
項垂れかかった鈴々を心配するが本人は首を振る。
「ううん。こうして触れられるの。久しいから。とっても落ち着くわ」
鈴々の態度にクロムは少し安心した。
「そうか。こんなのでいいなら、ちょくちょく来るぞ」
「本当にそうなら、いいでしょうね。でも、あなたにはセブンスがいる」
一瞬困った顔を見せてしまったクロムが慌てて否定する。
「今はセブンスとは殆ど会っていない。嘘じゃないぞ」
鈴々はうんうん、と頷いた。
「知ってる。時間があれば私の所に来てくれているもの。それにあなたは嘘はつかない。いや、つけないが正確かな。でも責任から生まれる行動と、心が望むものとは違うの。私はクロムが好き、あなたはセブンスが、セブンスもあなたが好き。どちらの元にいるのが自然なのか。悲しいけど私はあなたの側に居られるのはこのケガのせい。負傷させた私を気遣ったあなたの責任感のせい」
査定も否定もできないクロムを見て頷く鈴々。
「ほらね。こんな時は普通の男は、否定してあたしを大事だとか、フォローするものよ。固まるなんて……もってのほかよ。まったく……図星だと認めているわよ」
「いや、俺はその……鈴々は大切で……セブンスとはその、あれだ」
「いいの。正直な私のヒーロー。あなたと過ごした時間は忘れない」
いつもと違う鈴々の言葉に不安を感じ始めるるクロム。
「どうしたんだ。今日は変だぞ? 確かに今日の出来事はショックだったろうが、俺たちが敗北したわけではない。俺たちのチームなら帝国と戦える、十分にな」
「そうね。あなたは全ての逆行を苦しみながら越えていく。そして必ず望みを叶える。私の好きなクロムはそんな人」
もたれかかった姿勢を戻しクロムの顔を見つめる鈴々。
「ねえ、クロムお願いがあるの」
急に改まった姿に構えたクロム。
「なんだ。急に姿勢を正してお願いなんて」
鈴々は本当に嬉しそうにクロムへ頼みを伝える。
「私を殺して」
「!」声にならない驚き。そして思わず出たクロムの大きな声。
「ふざけるなよ! こんな時に」
それでも鈴の笑みは消えない。
「いいえ。あなたは私を殺すの。殺されるはあなたがいいの」
意味がわからないクロムが鈴を見つめる。
「おまえの言っている事がわからないぞ鈴々。なぜ死ななければならないんだ? 先の戦いで命を拾った。それに順調に回復している」
鈴々が窓に広がる宇宙を見て、初めて寂しそうな表情を見せた。。
「私は……人間じゃない」
「バカな! 確かに優秀な遺伝子だったが、ここの医師はおまえを人間だと言っていたぞ」
視線をクロムに戻した鈴々。
「ドールを元に人として造られたの。だから限りなく、いえ人そのものに見えるはず。それも平凡な女にね」
「わからん! 何のために誰がそんな事をしたんだ」
悩むクロムに優しい視線を向けた鈴々。
「私が人間として造られたわけは、王の子供を産むため。十二歳で慰み者として、先代の王の傍に置かれた。幼女趣味な王は私を玩具にして体もいたぶり続けた。そして十四歳の時に身ごもり……青い瞳の娘を産んだの」
鈴々の突然の告白に言葉が見つからないクロム。鈴々が言葉を続ける。
「役目を果たし壊れた私は、放浪しそしてあなたたちに出会った。そして魅かれたクロムに。でもね、それは仕方ない事なの。七海の遺伝子を持つ私達はどうしてもあなたを好きになってしまう」
「七海? 誰なんだそれは。遺伝子……おまえの母親か? それに私達とは。鈴々には兄弟がいるのか?」
うん、頷いた鈴々。
「暴れん坊の姉と出来の悪い赤ん坊な妹。そして優等生な末っ子」
クロムの顔色が変わった。
「バカなおまえはナンバーズドールの姉妹だと言うのか」
「ええ、私の六番目のドール、シックス。あなた達の敵。でもね、王の子供を産んだ壊れた私は自由になれた。あなたに会えて仲間もできて、全て忘れられたと思っていた。でも違った、私の娘、新しい女王エルセルは望んだアルモニアを。だから私は……」
鈴々の言葉をさえぎるクロム。
「例えおまえがドールズだとしても、命を懸けてみんなを守ってきた事実は変わらない。俺たちは仲間だ。過去は関係ない」
「嬉しい……本当に。でもね娘はアルモニア、調和を求めた。私はそれに答えなければいけないの。それが私の最後の役割。コドクプログラム」
「鈴々、おまえは自由なんだ! そのコドクプログラムなんか無視しろ!」
「蟲毒……無理なの。これは二千年を越えた愛。哲士への七海の想い。いや呪いね……だから壊すしかない赤いレべリオン……反乱するセブンスを」
「……セブンスが反乱? それが王女と関係有るのか」
「ナンバーズドールは神を出現させる為に造られた。それが七海が造ったコドクプログラム。でもシルバは二つの可能性を開いた。滅びゆく人類に革新をもたらす者。人類を守護する滅亡を静かに見守る者」
「その革命を起こすものがセブンスだと言うのか」
「そう、セブンスは戦い、悲しみ、喜び、そして愛を得て世界を滅ぼす神となる。だから壊すの。私の戦闘兵器シックスドールが」
病室のディスプレイがオンになり、血だらけのセブンスと見知らぬ女が映った。
急ぎセブンスの部屋に向かおうと立ち上がったクロムの手をつかんだ鈴々。
「セブンスの部屋はロックされている。部屋の画像は加工され、誰も異常には気づかない」
立ち上がり鈴々を悲しい目で見たクロム。
「それがお前たちの運命だというのか。そんなもの変えればいいだけだ!」
心の底から嬉しさを表した鈴々。つかんだクロム手を自分の首に近づける。
「うんうん、あなたはそう。今回もできるセブンスを助ける事は出来る。私を殺せばセブンスは助かる。お願いクロム。ドールとしてではなく……鈴々、人間として。あなたを愛した女んとして。私を……殺して」




