A.D.4020.新しき青い瞳の王女
超大型輸送機アーバンウェイが急速降下。床が開き、大型の装甲アーマを射出。
レーザー誘導がシュティレの乗るヘルダイバから送られ、合体体制に入る。
「合体シーケンス正常、アーマ減速開始、当機の上部装甲を射出、コネクタリフトアップ」
ラバーズはシーケンスが正常に行われている事を報告。
ヘルダイバの上部から誘導ビームがアーマに送られ、正確にドッキングを開始。
衝撃のあと機体が揺れて、局地戦用フルアーマの装着が終わった。
まるで昔の西洋の騎士の鎧のよう、重く分厚い鎧姿。
背負った大型のビーム砲が二門。肩や腹部、腕にもミサイルポットを備える。
自国の基地を防衛するための砲台として想定されて設計されたオプション。
フルアーマ用に操縦室の再起動が行われ、重火器迎撃用バレットが作動開始。
「ふふ、見てろフィフス。俺の名前を忘れられないように刻んでやるからな」
勝てない。そんな事は分かりきっている。
だがシュティレは高揚感をもってフィフスに相対した、唇には強敵と戦う喜びさえ表しながら。
「あらら。まだやる気なの。絶対に勝てないのにさ」
フィフスドールの小柄なパイロットのリンが呟く。
「無駄死にはしないよ。やつは古強者。殺すのは惜しい気がするほどだ」
シュティレの戦う意思を確認したフィフスがリンに返す。
同じく正面スクリーンを見ていた、アイアンサンドがフィフスに問う。
「あのシュティレっていう大佐。フィフス、かなり気に入っているのだろう? いいのか今やってしまって」
少し非難の意味が込められった言葉。操縦者のリンが続いた。
「フィフスが気に入るなんて、めずらし! でもさ、だからこそ殺すんでしょ!」
二人の言葉にフィフスは珍しくまじめな顔をしていた。
そして横を向いて、非常用のシートに固定された、父親のシルバに答えを委ねた。
「ねえ、お父様。そろそろかな。私的には戦いたくない感じもする。このまま殺しちゃてもいい。でもさ計画があるんでしょ?」
戦闘中に全方向に強烈な動きを見せるフィフスドールに、身体を揺さぶられフラフラ状態のシルバが弱った声を出す。
「ふぅ、あ、ああ、もういいだろう。これ以上はな。おまえ、あの戦士とラバーズをもったないと思っているだろ。その言い訳が欲しいわけだ。だから私に聞いたんだろ? 計画のせいにする為にな、クク、困った奴だ。だがそれでいい」
フフ、自虐的な笑いフィフスは否定しなかった。
「もっと、正式な場所で堂々と殺してあげたいよね。歴戦の戦士はね。もったいないのさ、世間様にも華々しく散った姿を見せてあげたいじゃない? 鮮烈に散り記憶に散る、戦士の喜びとはそれじゃないの?」
補助席にガッチリ固められているシルバが頷いた。
「フィフスの美意識は科学者の私にはわからんが……まあ、そうなら、この辺でいいだろう。頃合いだ」
戦闘態勢で構える白きヘルダイバ。
対峙するフィフスドールは回転を止め空中で停止した。
シュティレは火器管制システムをスタンバって、フィフスの出方を待った。
「なぜ動かない。もうチームの半分は脱出した。あと数分で撤退は終わるぞ」
フィフスの静寂が理解できないシュティレ。
待機していたラバーズが驚きを見せた。
「大佐。今、放送されたニュースがあります。緊急で帝国、反乱軍の領地全てに流されています」
「なに? この状況で何を放送するというんだ」
ラバーズがVTRを操作して、放送の初めからシュティレに内容を見せた。
「ばかな。こんな事があるわけない……まさに計画通りというわけかシルバ!? だがどうする気だ! 銀河に嵐が吹き荒れる。たくさんの人が死ぬんだぞ!」
緊急放送は宇宙空間の映像から始まっていた。
そこに映っているのは国王専用機。
先ほどシュティレが逃がしたエール国王が乗っている艦艇。
「この映像はライブです、大変な事が起こりました。首都星に迫った反乱軍を避けるために脱出した国王ですが……」
アナウンスの途中で画面に閃光が走り、国王の宇宙船に命中した。
その一閃を契機に数百もの光の束が船に命中した。
シールドでしばらく耐えた艦艇は、徐々に砕かれ、最後には爆発を起こして、チリに消えた。
「……国王が崩御されました。反乱軍の攻撃によって……今、帝国軍の集結が指示されました。全面戦争へと進む模様です」
「あーあ、フィフスのせいで大げさな事になったねえ。楽しいでしょ? うふふ。またいっぱい戦える、強いやつを殺せるからね」
エイトドールの操縦者リンが、バカげた宇宙戦争の始まりに笑う。
もう一人の操縦者アイアンサンドは無表情で現状の感想を述べた。
「これも全部後ろの爺さんの計画だろう? つまらん。まんまと動かされる人間ども。どうしようもない愚かな行為だ。人類が衰退している今、二つに分けて全面戦争だと? 歴史的にみても帝国が滅ぶのは内部からで……」
人間の愚かさの解説にアイアンサンドが移りかけた時にディスプレイの画面が変わった。
全てに色彩が違った。落ち着いた数千年前の調度品が置かれた部屋。
一目で高貴な者の住処とわかる。中央に立つのはまだ幼さが残る少女。
銀色に輝く髪は足元の近くまでストレートに伸び、吸い込まれるような青い目、真っ白な肌。漂う気品がディスプレイからでも高貴な生まれと育ちを伺う事ができた。
「国民、帝国軍、反乱軍の兵士達。私は帝国第一王女エルセル」
十六歳になったばかり少女で帝国軍第一王女。
「私は戦いは望みません」
その姿は少女としての可憐さと王女の威厳を合わせ持ち、訴える言葉さえも麗しい。
「父エール国王が崩御されたました。速やかに、ここで任を継ぎ、第一後継者である私、エルセルが王位に就きます。これは元老院からの承認済みです」
王女の言葉を聞きながら、防衛軍のリーダーであるシュティレはラバーズに確認を怠らなかった。
「ラバーズ、王が亡くなったのは本当か? それと……あの王女は本物なのか?」
ラバーズが収集中の情報の検討を進めていた。
「王ですが王族の認識信号が消えました。消失時間は先ほどの画像とリンクします。また王女ですが、身体的な情報、送られてくる王族の映像に必ず含まれる認識用のシグナルは本物です。また、現在流れている放送は国営TVで、画像の加工の様子は見られません」
すべてのデータを確認し、足りない部分は自己判断を加えた最終的なラバーズの結果報告が出た。
「王は反乱軍の攻撃で崩御。現在、即位を宣言する女性は第一王女エルセル様。元老院からの認証も発行されています。よって、主張どおり現時点で彼女が帝国の主、新しい女王です」




