A.D.4020.初めて王が感じた感情
「フィフスですか。これは出来の悪い娘で兵器ではありません」
シルバの言葉を聞いたフィフスが文句を言った。
「ええ!? 出来が悪いって私が? それはエイトやセブンスの事だろう?」
シルバは笑いフィフスへ向く。
「こういう時に人間はへりくだって身内を悪く言うものだ。それが人間の美徳というもの」
不思議そうな顔でシルバを見たフィフス。
「変なの~~良い娘だと思っているなら、ただ良いって言えばいいじゃない……へんへん。絶対へん!」
「ああ、そうだな。おまえ達は我々、人間とは比較にならない、優れた者で世界を継ぐ。ついでに……良い娘だよ」
シルバはマシンウォリアの守られた王を見て、諭すように話し始める。
「王よ。巨大な帝国が滅びる理由は資源の浪費、そして起る一部者どもの独占的な支配。十分悦楽を楽しんだのに長生きもした、しかし支配階級とはなんとも強欲。王を中心に貴族と上流階級が小さな円を描く、その周りに王に近い者順で円がだんだん大きく描かれていく。巨大な帝国の円の一番外側、帝国を守る盾は陵辱された他国の奴隷達がその任にあたる。つまり帝国を守る兵士の殆どは、王に力で従わされているだけの者」
王は近づいてくる解放軍の艦隊を、ディスプレイで見ていて気が焦る。
「シルバ! そちは、そんなつまらぬ歴史の話で、我の脱出を遅らせて、あの艦隊をここに届かせるつまりなのか!」
「いえいえ、そんなつもりはありませんって。ちゃんと脱出できる時間は差し上げますよ」
「シルバ、立場が分かってないようだな……ならば分かりやすく、ハッキリさせてやる」
王の部屋の空気が変わった、赤いレーザーサイトがシルバとフィフスの全身を照らす。その数は40、瞬時にすべてのマシンウォリアはブラスタ砲を構えた。
「やれやれ……わたしはちゃんと逃げる時間を与えると言っているのに……仕方ないですな」
シルバは王に向って両手を挙げた。
「降参です、私は好きにしてください。ただフィフス、娘は助けて頂けませんか?」
無言の王へ言葉を続けるシルバ。
「あと、私の形見をフィフスに渡したいのですが」
一瞬で塵さえ残さず、シルバとフィフスを蒸発させる戦力を従えた王は、無言のままでその行為を認めた。
「では……フィフス、これはおまえの誕生日プレゼントだ」
フィフスに近づき、その首にネックレスをかけるシルバ。
「え~~? 誕生日って随分先……あ、これか……ついに完成したのね」
ネックレスの先に付いた大きな紫色の宝石に触れたフィフスは、速やかにシルバの意図を理解した。
シルバが頷きフィフスから離れたと同時に、発せられた王の命令。
「フィフスを狙え、今すぐ完全に消滅させろ! あれこそ銀河で一番凶悪な兵器!」
王の命令で40機のマシンウォリアが、ブラスタ砲をフィフスに向けた。
「シルバ、おまえは人類のドール化計画に必要だ。まだ生かしておいてやる」
王の言葉が終わった直後、人間には察知できない速度で、一気に走り出したフィフス。シルバから距離を取る
「なるほど、人間を越える神経速度と筋力。それにとても親思いだ。シルバに被害を与えないように距離を取った……だが」
巨大な王の部屋の入り口の扉の前に立ち、金の装飾がされたノブを開こうとするフィフス。
「この部屋はロックされている。出る事は叶わないな。我の許し無しでは何者も……フィフス、おまえでも!」
40の赤いレーザーサイトが、フィフスの身体の全てを紅に染める。
開かない扉、諦めたフィフスが王を振り向く。
「撃て!」
間髪を置かずに王の命令が下された。
部屋の中を高収縮されたエネルギーの束が、扉に向って部屋を横切った。
王宮の破壊を最低限にするために、出力を調整したブラスタ砲。
だがフィフスを消滅させるには十分な威力。部屋の中を一陣の風が強く吹いた。
部屋の一部の空気がブラスタ砲により急速に暖められた為に、空気の移動が起った。強い風が王とシルバの視界を無くす、しかし、機械であるマシンウォリアにはその姿がハッキリと認識出来ていた。王がつむじ風から目を開けたとき、褐色の肌、Vカットのワンピース、その短い丈から、ムッチリと伸びた脚を一歩進めたフィフスが近づく姿が見えた。
「なぜじゃ、なぜ消滅しない?」
ゆっくりと王に近づくフィフスは、その猫のようなつり目から、強い視線を向ける。フィフスの目力に王は二度目の攻撃命令を一瞬、遅らせる……その時、王の前に立つマシンウォリアの一機が振動を始めた。マシンウォリアの前の空気が渦巻き、金属製の両手両足を広げて、一トンを越す戦闘マシンが数メートルも浮きあがる。金属が砕かれる音の後に炸裂音、空中に浮いたマシンウォリアは、中から体液が噴出し床にそのまま落下した。
目の前で何が起ったか理解出来ない王に、静かに近づくフィフス。
「最凶のドールと呼ばれる私。でもナンバーズドールには正式な二つ名があるの。私の二つ名は”衝撃を操るドール”そう呼ばれるわけを王様に教えてあげるね!」




