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セブンスドール  作者: こうえつ
死に方を見つける為に
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A.D.4020.光を操るドール

エイトドール。浮遊要塞の中はざわめいていた。

銀河最強のエイトドールを睨む紅い目に。

自分たちに危機が訪れる? エイトドールに乗船している、誰もが考えていなかった事例。


「エイト! どうしますか? セブンスドール、あの紅い目は危険です。全てを見透かされているように感じます」

 浮遊要塞を制御する百人余りのドール達が冷静を無くす中、エイトは静かに立ち、全員に命令を下す。

「エイトドールの核融合炉をフルパワーへ。全システムを起動。攻撃衛星へ最大エネルギーを伝達せよ」

 百人のドールがエイトを一斉に見た。

「無理です。このエイトドールは、まだロールアウトしたばかりで、何のチェックもしていません。フルパワーで戦うなんて、自殺行為です」

 フフ、笑い出すエイト。

「所詮……人形の集まりか」

 呟きが聞こえなかった、ドール達が不思議そうな顔をした時、エイトが言葉を続ける。

「五分動けばいい。五分で決着をつける」


十二機の大型核融合炉が唸りをあげる。

エイトドールが、巨大なエネルギーの発生で白く光り輝き始める。


「全衛星へエネルギーを最大パワーで伝達中。エイトドールの全機能を起動しました。全コントロールをエイトへ渡します」

 巨大要塞エイトドールから、光が四方に弾け、八百余りの攻撃衛星に、最大パワーが送り込まれた。全ての衛星が光りを帯びて輝き出す。宇宙が、エイトドールの発する光を受けて、真白な空間になる。


「エイトドール”光を操る“ドール」

 セブンスがコクーンの中で呟く。

「ファルコン軌道修正は任せる。一直線にエイトドールへ飛んで」

「了解しました。戦いに集中してくださいセブンス」

 ラバーズFの答えに肯いたセブンスの両手。光の制御パットに、血液のように力が循環し、コクーンの内部が紅く変わる。セブンスの前に円形のスクリーンが開いては消えて、戦況とセブンスドールの状況を伝える。

「M・B・E臨界点へ。セブンスドールフルパワー。光速移動開始」

 セブンスドールの姿が揺らめき初め、同時に次元刀の重力の粒子の刃が大きく、広がり始める。大剣に成長した次元刀を両手で握り直し、機体から紅い重力波を炎のように揺らめかせ、セブンスドールは光の矢となり、エイトドールを目指して飛び立った。


「これが最初の変化。セブンスが見せた初めての感情。何者も止める事が出来ない、真っ直ぐな人への想い”恋”」

 エイトは瞳を閉じてパイプオルガンのように、衛星の操作盤を触れて、長く細い指が奏でるフーガが、八百もの衛星を踊らせる。最高までパワーを上げた、エイトドールとリンクした、エイトの髪は、光を湛えて白く輝き、光は全身に届き、クリスタルの像のような、光を通す体になった。


直線で進むセブンスの前に、数十機の攻撃衛星が陣を敷く。


「邪魔。どいて」

 光の移動体から、実体に戻ったセブンスドールのメインウェポン、次元刀の重力の刃は、数百メートルにも伸び、その粒子の幻影が、ゆらゆらと空間を流れる。セブンスドールが、次元刀を両手で大きく振り込み、瞬時に衛星を切り捨てる。光の残像が、幾つも漆黒の空間に現れ消えていく。セブンスの前方を塞いでいる衛星が次々と切り裂かれ、そして収縮・消滅していく。

その時、稲妻のように宇宙が光に溢れた……八百もの攻撃衛星からの、ブラスタ砲の一斉射撃。


セブンスドール一点に打ち込まれた、巨大な光の矢。

真っ白に輝く光に包まれるセブンスドール。

二億度を超えるエネルギーの炎に焼かれていくセブンス。


しかし、不死鳥のごとく、紅き重力波の翼を纏ったセブンスドールが、再び飛び立つ。

エイトはその姿を見て呟いた。

「一つ……」

 進む道を次々と攻撃衛星が塞ぎ、その度に光速移動を止め、実体を表すセブンスドール。

「……五つ」

 八百の攻撃衛星による一斉射撃が、五回行われた時に、数を呟くエイト。

 数える数が増える度に、笑みを浮かべるエイト。それとは反対に、搭乗している他のドール達は冷静を無くしていた。

「エイト! 衛星を障害物として置き、セブンスの光速移動を止め、そこへ全衛星をリンクして、ブラスタ砲の最大パワーで一斉射撃を行う……正しい作戦です。計算上、エイトドールの一斉射撃に、耐えられる装甲などありません。例えエネルギーシールドを展開しててもです。なのに……なぜ、セブンスドールに、まったく、ダメージを与えられないのでしょうか。もう、五回目です。五度のエイトドールの一斉射撃に耐えている……セブンスは、人知を越えた者なのでしょうか?」

 部下の問いには答えず、エイトは優雅にフーガを弾き続ける。そしてまた宇宙が光った。

「これで……六つ、フフ」

 再び笑みを浮かべて数を呟くエイト。エイトの優雅な指先が、セブンスドールに対して、最大の防御を展開。百機を越す衛星が、防御のフォーメーションをとる。再び実体化するセブンスドール。両手で、次元刀を真っ直ぐに構え、光速で回転を始める。紅き光の渦が大きくなり、周りを囲みつつある攻撃衛星を、重力の渦に巻き込む。


宇宙が揺れる……紅き重力の竜巻が全てを包み込み、衛星を一つ一つ砕いていく。


セブンスドールが回転を止め、剣を振り払った時に百機の衛星は全て砕かれ、異次元へと転送された。

 エイトの最大防御を打ち破ったセブンスの目には、煌々と光を発する、全長2KMの巨大な要塞“エイトドール”が映った。視界が開け、前に出ようとしたセブンスに、七百の衛星からの一斉射撃が行われ、再び光の渦に覆われる紅の機体。光に焼かれた数秒後、再び重力の炎を発して姿を現すセブンスドール。


エイトが突然、演奏を止めた。

他のドール達は、完全にパニックになっている。


「もう、七度の攻撃です。何故消滅しない? セブンスドールの装甲はヘルダイバと同じ、いやそれ以下。解らない……恐ろしい。理解できない事が」

 動揺する百名を越すドールざわめき、聞えていないようなエイトは静かに立ち上がり、再び数を口にする。

「七つ……これで七つ目ね」


「邪魔はこれで終わり?……エイト」

 前方の巨大要塞に、エイトを感じて次元刀を構えたまま、光速移動、一瞬でエイトドールのコントロール室前へ飛ぶセブンス。透明な防御壁からエイトが、こちらを見ているシルエット。

「エイトどうする? 覚悟は決まった?」

「フフ」

 メインコンソールに写った、セブンスを見てエイトが微笑む。

「セブンスドール、その無敵の攻撃力と防御力。一見、神の力にも見える……でも、私は知っているの。その力の秘密をね」

 エイトは光で透き通る、その手を目の前に翳しながら話し始めた。

「宇宙は初期の状態で、素粒子は自由に動きまわることができ、質量がなかった」

 壁際に立ち、セブンスにも見えるように自分の姿を見せるエイト。

「自発的対称性の破れが生じ、真空に相転移が起こる。真空に、ヒッグス場の真空期待値が生じ、素粒子がそれに当たって、抵抗を受けることになった。そして素粒子の動きにくさ、すなわち質量となる。つまり重量とは、プールの中に物質が沈んでいるように、水の抵抗を受けて重さとなる」

 右手をセブンスの方向に向けた、エイトの指先が紅の機体を示す。

「プールの水”ヒッグス粒子”の濃度を、自由にコントロールする。それが重力シールド、M・G・Fマスグラビデフォースセブンスドールが持つ“無敵のシールド”の正体」


エイトはメインスクリーンのセブンスドールを見つめる。


「セブンスドールはM・B・Eマイクロ・ブラックホール・エンジンの驚異的なパワーにより”重力を感じさせる”ヒッグス粒子を、機体の周りに展開している。M・G・Fマスグラビデフォースの優れている点は、自分の攻撃を阻害しない点。外部からの攻撃、エネルギーやミサイルや剣などは、全てヒッグス粒子の抵抗力で、重さが∞(無限大)まで増加する。無限大まで増加した重量により、敵の全ての攻撃は、運動量がゼロになり、力を失ってしまう。しかし、自分の攻撃時は、粒子の濃度を薄くして、抵抗を無くしている。その為、剣を振るなど、近接戦闘を行う場合でも、シールドを展開したままにできる」

 エイトの話を黙って聞いているセブンス、クスッと笑ってエイトが続ける。

「セブンスドールは、神ではなく”人間”が造ったのよ……そう、私達の父親”シルバ”がね。当然、私には”セブンスドールが何であるか”は知らされている……そして、その機体のメカニズムも、理論もね」


エイトが操作盤に右手を伸ばすと、同時にセブンスが、制御パットに戦いの意志を伝えた。


「さて……ここからが問題なのだけど……M・G・Fも物質であるならば、そこに強力なエネルギーを、送り込むとどうなるか? 粒子は限界まで濃度を濃くして壊れる。今、セブンスドールの周りに、漂う輝く光の欠片、それがM・G・Fの残骸。セブンスドールの名のとおり、M・G・Fは七枚展開出来ると聞いてる。私が数えた、破壊された枚数は七枚。さて、次の私の攻撃に、セブンスドールは、耐えられる……のかな」


瞳を大きく開き、セブンスを見つめるエイトの口元が僅かに緩む。

光り出すエイトドール、次元刀を構えるセブンスドール。

二人の細く長い指が微かに動きだした。


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