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セブンスドール  作者: こうえつ
死に方を見つける為に
13/74

A.D.4020.衛星軌道での戦い

レニウム、テルル、セブンスがいる艦橋、ヘルダイバ発着デッキの鈴々、戦艦サンタナの全員が驚きの表情のまま、口を開けないでいた。帰還しようとしていた黒きヘルダイバの中のクロムも同様。


五人が見つめる先、衛星軌道上に浮かぶ銀色の巨大な要塞。

周りををたくさんの攻撃用衛星が回っていた。

巨大要塞の内部。百人を越すオペレーター。その全てが戦闘補助のドール。

一段高い場所に、他を圧倒する力と美しさを持つ、一人のドールが座わる。

透き通るフロア、調度品の全てが光り輝くクリスタル。


「間に合ったようね。よかった、セブンス姉さん。フフ」

 意志の強そうな大きくて黒い目。髪は青い色。毛先にカールがかかったミディアムボブ。立ち上がったその姿は、小柄だが、どこかセブンスに似ていた。


「エイト如何しますか? まだこの要塞、エイトドールはロールアウトしたばかりで調整不足。7%程度の性能しか出ません」

 オペレーターからの質問に、答える銀色の瞳のドール。

「構わない。7%で十分。この程度の相手なら。相手は野蛮人」

 2KMを越す巨大な浮遊要塞は、セブンスの妹”エイト”専用に建造されたマシン。


 ”エイトドール”円盤型で外苑部に十二基の巨大な核融合炉を持ち、その無尽蔵なエネルギーで、数百もの攻撃衛星を操る事が可能だった。

 銀河を守り、破壊する女神達“ナンバーズドール”の最新作であるエイトが呟く。

「さあ、セブンス、姉さん。私のエイトドールと戦って頂戴、未来を継ぐのは誰なのかハッキリさせたいから」


ナンバーズドールは大貴族シルバが作り出したドール。世界を変える力を持つ。

彼女達一人々が持つ超破壊兵器。光のドールズと呼ばれるそれは、恐ろしい破壊力を秘めていた。

 8体の作成が確認されているが、現在、所在が分かっているのは、フィフス、セブンス、エイトの3人だけ。番号を名前に持つ彼女たちは、自身が人を越える性能と美しさを持ち、特徴から番号の名前だけではなく二つ名を持っている。


「おいおい! あんなの聞いてないぞ! 無理無理!」

 手を振ったレニウムが呆れ気味に呟く。

「いくらなんでも、でかすぎだろう!? 平和主義のおれとしてはパスしたいぞ」

「……新型みたいね。軍のコンピュータジャーナルにも乗ってない」

 レニウムの愚痴をパスして、テルルが目の前のエイトドールの情報の検索結果を伝える。

「テルル。空間ジャンプで逃げられないか? まだ距離はありそうだ」

「無理ねレニウム。滑走距離がとれない、それにジャンプの為に迷彩をとく必要がある。シールドもね。あのデカブツが丸裸の私達を、黙って通してくれるわけない」

 メインスクリーンに写る巨大要塞”エイトドール”を、ジッと見ているセブンス。


「どうしたセブンス? 何か知っているのか?」

 レニウムがセブンスを見た。

 セブンスが、メインスクリーンを見ながら呟いた。

「この子はエイトドール。まだ”起きてない”」

「エイトドールって言うのか。名前から察するにシルバが作った破壊兵器だな。光のメサイヤと呼ばれるシリーズ。こんな物騒な子供はいらないな、フッ」

 レニウムが苦笑しながら、クロムを通信で呼び出す。

「デカイ坊やがまだ寝ぼけている間に、サンタナの主砲と光子魚雷で援護する。クロムは脱出口を開いてくれ」

 ディスプレイに小さなウィンドウが開き、クロムがニヤリ。

「まったく簡単に言ってくれるな。作戦はそれだけかレニウム」

 レニウムもニヤリと頷く。

「ああ、そうだ。いい作戦だろ? モテ男クロムの株がさらにあがりそうだ」

 クロムがサブスクリーンで肯く。

「それはいい話だな。まあ、生きていればの話だが。相手は知らない仲じゃなさそうだ。前にコーヒーをおごる約束したし、肉を食わせるとも言ったしな。しょうがない、腹一杯食わせてやるか……エイト」


 レニウムが艦橋に並ぶ複数のコンソールを見て、素早く状況を確認し、実際の作戦を立案してテルルに指示を出す。

「主砲、光子魚雷を準備。五分間の敵浮遊要塞への攻撃を行う。その後は、クロムが先行し敵の攻撃を分散させ、本艦の軌道を確保、全速で脱出ポイントへ向かい空間ジャンプで一気に離脱する。作戦計画開始する!」


 巨大要塞”エイトドール”内部の百名を越す、戦術オペレーターから、矢継ぎ早に報告があがる。

「船艦サンタナが移動を開始」「黒きヘルダイバが移動開始」「敵戦艦よりエネルギー反応」

「敵戦艦より、ミサイル発射を確認」


中央の一段高い舞台のような場所に座るエイト。

両手を胸の前で組み、大きな瞳をコンソールに向け命令を発した。

「防御シールド展開、攻撃衛星へエネルギー伝達を開始せよ」


エイトドールの周りにオレンジ色の、シールドが展開されていく。

 直後、サンタナの長距離攻撃が着弾するがミサイル、レーザー砲の着弾でも、巨大な質量と、完璧なエネルギーシールドにより微動だにしない巨大な要塞。

 エイトが椅子に埋め込まれたクリスタルに手を翳すと、微かな振動の後に、目の前に現われた、透明な操作パネル。そこには、八百八十八の攻撃衛星が、チェスの駒のように、シンボルで表示され、星々のように白く瞬く。


「A001をA201へ。B221をB223へ」


チェスの駒のように、パネルに浮き上がる衛星を細い指で操るエイト。

 クリスタルの操作パネルには、位置と機体情報が表示され、エイトの意志により八百八十八の攻撃衛星は、命を吹き込まれ自在に動き始める。

「攻撃パターンを、十字砲火に切り替える」

 作戦を復唱しながらエイトが攻撃衛星の布陣を進める。

 素早く、優雅に、ピアノの演奏者ようにパネルタッチを続けるエイト。

 百人のオペレーターは、この母艦要塞の運営と情報管理だけを行い、戦闘についてはエイトが全て担当する。百人のドールを簡単に越える、エイトの驚異的な性能。

 正面のメインスクリーンに、クロムが乗るヘルダイバが映った。

「来たわねクロム。フフ、楽しみ。野蛮人の肉と血って、どんな色なのかしらね」

 エイトの右手が優雅に動き、桜色の口が小さく開戦を告げる。

「戦闘開始」


サンタナの艦橋でも、チームリーダのレニウムから指示を飛ぶ。

「いいか巨大要塞エイトドールはシールドを張っている、遠距離からの攻撃は無駄だ。脱出ポイントF999へ速やかに移動する。途中、邪魔な衛星のみ破壊、移動を重視せよ」

「了解」

「解った」

 艦のパイロットのテルルと、ヘルダイバの搭乗者のクロムが答える。

「よし、こちらもエネルギーシールドを全開、光学迷彩を維持。補助エンジンを最高速へ、メインエンジンをスタンバイ!」

 サンタに光学迷彩がかかり、同時にクロムの乗る黒きヘルダイバが一気に加速、サンタナの前に出る。

 クロムの元に集まってくる攻撃衛星。その一つが光り出し、ブラスタ砲を撃ち出した。

「いきなりかよ! この!」

 盾で強烈な光を、真っ正面で受けるクロム。

 ブオォォオオ、もの凄い反動と同時に、盾が赤く燃える。

「やばいな火力が違う、盾では受けきれない」

 攻撃衛星の尋常ではない攻撃力を感じクロムが呟いた。

 エイトが操る攻撃衛星は一個が直径20M程あり、中心にはヘルダイバが持つブラスタ砲を上回る、巨大な砲塔が装備されている。撃ち出されるブラスタの威力は桁違いだった。


ジュジュジュシュルル、数発の直撃を受け、ついには溶け始めるクロムの盾。

強制冷却システムが盾を素早く冷やすが、盾にはかなりのダメージが残った。


「クロム! エイトドールの攻撃衛星が複数接近中!」

 ラバーズの声にポップアップした球形の警告メッセージを確認したクロム。

 接近してくる衛星を迎え撃つ体勢に入るが、それより早く衛星の側面が開き、追尾ミサイルが発射された。複数の大きな円を描き、クロムの迎撃システムを外しながら、近づいてくるミサイル。

 着弾直前でさらに多段に分離し、数十の弾道がクロムを襲う。

「回避不能と判断! ヴァレット起動、対象物を破壊する!」

 ラバーズが機体の操作に集中しているクロムに代わり、自動攻撃を宣言する。

 ヘルダイバの肩の装甲がオープン。四つの光子レンズが現れた、素早く、強く、光瞬く光子レンズ。

 数十のミサイルが、瞬時に蒸発する。しかし再び輝き始める攻撃衛星。

「させるか!」

 レーザー攻撃の準備を行う衛星へと、フル加速で接近するクロムに、烈なブラスタ砲が撃ち出され、光の束が襲う。操縦パネルに高速でコマンドを入力、姿勢制御するクロム。機体を大きく傾け、ブラスタ砲を避ける。閃光がクロムの機体を縦にかすめる中で、小さく円軌道を描きながら、攻撃衛星の真横へ付け、ブラスタアックスを背から抜くと、それは赤く輝き出す。ブラスタの熱を切れ味にして、衛星の真横にアックスを力一杯打ち込み、縦にそのまま切り裂く。


衛星が爆発。輝きが周りを一瞬照らし出す。

まるで光に集まる蛾のように、集まってくる、たくさんの攻撃衛星。


「く……こんなの、あと幾つあるんだ?」

 クロムの言葉にテルルがコンソールで敵数を確認する。

「えっと……八百八十七個」

「たったの八百か。これはいい運動になりそうだな」

 クロムの呟きが終わらないうちに、数個の攻撃衛星が光り始める。

 攻撃衛星が複数同時に瞬き、クロムのヘルダイバをかすめて、光の筋が通り過ぎる。

 回避運動を続ける、クロムの前に迫った、数十もの衛星が瞬きだす。

 絶え間ない攻撃を、驚異的な操縦技術と体力で、ギリギリで回避、戦いを続けるクロム。だか、精神、体力。そして機体も武器も、全てが消耗していく。


「いったい、どれくらいだ!?」

 レニウムが苛立ちサンタナの艦橋で大きな声を出す。

「どっち? 脱出までの距離? それとも敵の数?」

 テルルが同じく苛立ちから、声を大きくする。

「両方だ!」

 確実に消耗するクロムと騎乗する黒きヘルダイバに、指揮官のレニウムでさえ苛立ちで冷静を保てない。

「怒鳴らないでよ! みんな同じ気持ちなんだからさ!」

 言い返したテルルが、メインスクリーンを見て戦況を確認。

「あっ」

 小さく声を出すテルル。そこには被弾し内部を露出し、機器がショートし青いスパークを発する、クロムの黒きヘルダイバが写る。

「あと距離は50%程、時間にすると一時間。敵の数は……833機」

 テルルが告げた絶望的な数字。あと一時間、クロムがこのまま戦えるとは、誰にも思えなかった。残る敵の残数は殆ど減っていないし、本体の巨大浮遊要塞は、少しも動いていない。相手はまったく本気を出していない。


セブンスがレニウムを見た。


「もう無理よレニウム。クロムを帰還させてあげて」

 レニウムが険しい顔をして肯いた。

「クロム帰還しろ。もう十分だ」

 スクリーンにクロムの疲労した灰色かかった顔が写る。

「ばかいえ、レニウム。このまま進め!」


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