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「初めての登下校」たこす
「いま、帰り?」
そう言う俺の声は、震えてる
小さくて、か細くて、甲高い
バレたかな?
バレるかな?
俺が密かに好きだってこと
気づかれたかな?
気づかれるかな?
バクバクバクバク
心臓の音がやかましい
神様、お願いです
今だけは
今だけは
俺に勇気を与えてください
お願いです
「うん」と答える彼女の顔は
とても綺麗で可愛くてはかなくて、
そして眩しくて……
そっと俺は目をそらす
ずるいよ、神様
これじゃまともに見れないよ
黙り込む俺に彼女が近づいて
小さな唇を動かした
「タイヤ……」
「……え?」
「タイヤ、パンクしたの?」
「うん……」
それ以上の会話はない
それ以上の言葉はない
彼女は俺の隣にきて歩き出す
ゆっくりゆっくりと
歩き出す
俺もパンクした自転車をゆっくり押して
彼女の歩調に合わせて歩き出す
彼女と初めての登下校
彼女の顔が赤いのは、
きっと夕日の色が赤いから
彼女の頬が赤いのは、
きっと夕日の色が赤いから……
真っ赤に染まった横顔に
俺はもう目が離せない




