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悪運の星の一般人《エキストラ》  作者: 島草 千絵
壱章
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7話 迷い少女



「ご苦労だったな、2人とも」



再び部屋に戻った俺とダルをマリーはそう言って出迎える。

だが、そんなことよりこっちは取り込み中だ。



「いい加減機嫌直せよ。 悪かったって言ってんだろ?」



「私だって女の子なんだよ!? 頭踏み台にされて許せるわけないでしょ!」



「しかたねーだろ。 ダルが引かないんだから。 わかったよ、今度街に行った時お詫びでなんでも付き合うからそれで許してください、お嬢さま」



「うーん、仕方ないなぁ。 それで手を打ってあげる」




俺らはマリーをよそにさっきのゴーレムを倒した時の件でまだ争ってる真っ最中だったからだ。



「はぁ、まだ君たちはやっていたのかね」



マリーは俺たちを見て呆れたように呟く。

























「改めてご苦労だったな、2人とも。 それより面白い情報があのゴーレムからわかったぞ」



マリーはモニターに先ほどのゴーレムとの戦闘で得られた情報を見せてくれるのだが、何が何やらちんぷんかんぷんであった。

もちろん、バカが代名詞になりつつあるダルも同様なようで、



「へー、どんな情報なの?」



と全く興味がない。

アトスやアミラスならまだ、例え興味がなくともうまい返しがあったのだろうが俺たちにそれを話したのが悪かった。

全くもって教え甲斐のない2人である。



「それがな」



だが、そんなの気にせずマリーは先ほど得られたものを自慢げに話そうとする。

どうやらマリーもマリーで話して自慢できればなんでもいいらしい。

どうやら今この場に不幸になる人間はいないみたいである。




「なんと………………ん?」



雄弁に語ろうとしていたマリーはモニターの一つを見て表情を変え話すのをやめてしまう。



「なんだよ、もったいぶってないで早く言えよ」



「いや、ゴーレムの騒動に紛れてこの魔女の館に侵入者が入ってきてしまったようだ。 おかしいな。 ちゃんと侵入者用のアラームを設定していたはずなのに。 故障かな?」



マリーは俺らに見向きもせずディスプレイを操作しながら言う。

だが、俺には次に彼女が何を言おうとしてるか想像できた。

我ながら自分の順応ぷりと社畜ぷりに脱帽する。



「つまりはなんだ。 俺たちにもう一仕事してこいと?」



「察しがいいな。 だが、今回はそんな装備を整えていく必要はないみたいだぞ? 魔力の探知にも引っかからないし、入ってきたのは魔物じゃない」



マリーはここでようやく俺とダルの方を向き直り、なんだわかってるじゃないか、と言う満足げな表情でおれたちにむかって言う。



「魔力もなくて、魔物じゃないって……一般人ってこと?」



「さぁ? まぁともかく様子を見てきてくれ。 侵入者は今エントランスから続く廊下を進んでいるからこちらから出向けば鉢合わせになるだろう。 それじゃあ後は頼んだ。 見つけ次第連絡してくれ」



俺とダルは渋々侵入者の元へ行こうと準備を始めるのだが、そんな俺をマリーは呼び止める。



「あ、一つ忘れていた。 ポルトス、お前の持ってる『風切』はおいていくといい。 前に約束した『風切』の処置をやっておくから。 さっきも言ったがおそらくそんな強い武器はいらない。 どうしても不安だと言うなら訓練用の剣でも持っていけ」



「わかったよ」



『風切』がないのは心許ないが魔力がない相手だと言うし、何より『風切』の制約を解除してくれると言うのだから俺はおとなしく刀を渡した。



































「だだいま戻ったぜ、マスター!」



日もすっかり暮れた頃、アルタイルとアトス、アミは魔女の館に街から戻って来た。

3人は例のリビングへ行き、バンっとアルタイルが勢いよく扉を開くがそこにはマリーどころかアトスやダルタニアンの姿も見られない。



「みなさん、どこ言ったんですかね?」



「あーあー、こちらアルタイル。 マスター、街から戻ったぜ」



部屋に誰もいないのを見るやアルタイルは自分の持つ腕輪状の通信デバイスでマリーに帰ったことを伝える。



「最初からそれを使えばよかったじゃない」



アミラスがジト目でツッコミを入れてすぐにマリーの方から応答があった。



『ご苦労だったな、アルタイル。 ベガはおそらく明日あたりには起きるだろうから明日からはいつも通りの仕事でいいぞ』



「了解だぜ!」



「ああ!アル待ってください! あの2人はいまどこにいるんですか?」



事務連絡を終え、通信を切ろうとするアルタイルを慌てて止め、アトスはポルトスとダルタニアンがどこへ行ったのか聞く。



『ふむ。 あの2人なら多分まだ外にいるだろう。 もう外も暗くなって来たからそろそろ帰ってくるとは思うが』



「? ポルトスとダルタニアンは何をしてるのよ?」



『まぁそれは彼らが帰って来たらわかる。 それよりアトス、今日も夕食を作るのか?』



と、マリーは唐突に話を変え、アトスに聞く。



「ええ、僕でよければ今から作りますけど」



アトスはそれに困惑しながらもそう答える。



『そうか。 なら食事は7人分(・・・)用意してくれ』



「は、はぁ。 それは構いませんけど…」



7人分とはどう言うことなのか。

今この施設にいるのは『勇者』の4人とマリーとアルタイルの6人のはずだ。

考えられるとすればもう1人の人造人形(ホムンクルス)であるベガが起きたと言うのが考えられるが先ほどの会話から少なくとも復帰できるのは明日だと話していたからこれはおそらく違う。

お客さんでも来ているのだろうか、それともあの2人が外に出ていることと何か関係があるのだろうか。

いくら考えても謎のままだった。



『それじゃあよろしく頼む。 私はちょっと調べ物があるから夕食ができたら呼んでくれ』



そうこう考えているうちにマリーとの通信は途切れてしまった。 結局今の話でポルトスとダルタニアンが外で何をしてるのか聞き出せなかったが、とりあえずアトスは夕食の準備にアミラスはその手伝いに食堂に向かった。































「なるほど、マリーが7人分と行っていた理由がわかりました」



アトスは目の前にいる3人の(・・・)姿を見て先ほどのマリーの発言に納得がいく。

夕食の用意を始めてしばらく経った頃、外に出ていたポルトスとダルタニアンが帰って来て食堂の方にお腹を空かせてやって来たのだ。

だが、その汗と泥に塗れた2人の姿に見知らぬサラサラのやや、茶色がかった髪に白のワンピース姿の女の子の姿もあった。

その女の子は2人と同様に泥まみれの汗まみれになっていた。



「いやー! 久しぶりに楽しみしたぁー!」



帰って来て早々、ダルタニアンは心底楽しそうな顔をして高笑いしている。

それと対照的なのがポルトスの姿であった。



「ぜぇ、ぜぇ、な、なんで、ゴーレムと戦った後なのにあんなに動けるんだよ」



元保安官で体力に自信があるはずの膝に手をつきぜぇぜぇと息を切らしている。

状況から見るにどうやらポルトスとダルタニアンの2人はこの女の子と外で遊びまわっていたようだ。



「あはは! 楽しかったー! ねぇ明日も遊ぶ?」



「いいよ! ポルタさんもいいよね?」



「ふ、ふざけるな………」



元気な2人はあーでもない、こーでもないと遊んでて楽しかったことを話しているが、ポルトスの方は限界だったようでダウンしてしまう。



「大丈夫?」



「大丈夫だ、心配すんな」



そう言ってポルトスは女の子の頭に手をポンっと乗せるが無理をしてるのは見ててはっきりわかる。



「だらしがないなぁ。 そういえば、ご飯まだ?」



ダルタニアンは座りこむポルトスにそう言うと、このやり取りについて行けずただ呆然と見ていたアトスに聞く。



「え? ああ、もう少しだけ待ってください。 すぐに用意しますので」



「待って、普通に会話進んでるけど一体その子はなんなのよ」



ようやく長いフリーズから解かれたアトスとアミラスはいきなり現れた謎の女の子についてダルタニアンに尋ねた。



「え? この子はナナちゃんだよ?」



ダルタニアンはキョトンとした顔で答える。



「いや、名前じゃなくて……」



「そこらへんは飯を食いながら後で説明する。 今はとりあえず風呂に入らんとマリーに何言われるかわかったもんじゃないぞ?」



アミラスは再びダルタニアンにこの女の子が何者か聞こうとしたのだが、ポルトスが間に入ってそう言った。

ダルタニアンは自分の格好と女の子の格好を見比べて頷く。



「確かに言われればそうだね。 ナナちゃんご飯の前にお風呂一緒に入ろ?」



「はいるー!」



「よし! いこー!」



ここに入ってきた時の元気そのままにまるで嵐が来たかのような勢いだったダルタニアンとナナちゃんと呼ばれる女の子は食堂を出てお風呂へとかけて行った。

後に残されたポルトスもよろよろと立ち始めてお風呂へ向かう。



「と言うわけで戻ってきたら話すわ」



そう言って食堂を出るポルトスを2人は黙って頷いて見送った。

























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@egu05



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