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悪運の星の一般人《エキストラ》  作者: 島草 千絵
壱章
6/47

6話 突然の侵入者


施設内にけたたましいアラーム音が響く。



「なになに!? 敵襲!?」



「なんでお前はそんな楽しそうなんだ!」



鳴り響くアラームにウキウキで反応するダルタニアン。 どうやら彼女は根っからの戦闘バカらしい。

まぁ軍人らしいといえば軍人らしいのだが、巻き込まれる方はたまったもんじゃないというのが本音である。



「どうやらこの施設を守っている結界を破って入って来た侵入者があるみたいだね。 とりあえず調べてみようか。 ベ〜ガ〜……は今使えないんだった。 しょうがない、自分で見て来るか」



そう行ってマリーは訓練室から例のリビングへ向かう。

俺らはその後に続いた。












部屋に入ったマリーはまずモニターの電源を入れアラームを切り、状況の確認をする。



「うむ。 入って来たのは一体か。 結界を破って入って来るなんて珍しいこともあるもんだが、まぁこの程度の魔力反応ならどうにかなるだろ。 2人とも早速仕事だ」



マリーは俺たちに向かって言った。

とはいえ、言われる前にダルタニアンはすでに準備している。



「その侵入して来たやつはどんなやつなんだ?」



「それは今解析中だ。 わかり次第知らせる。 2人ともこれを持っていけ」



そう言ってマリーはタバコの箱くらいの小型の機器とブレスレットを俺とダルタニアンに手渡す。



「これ、何?」



「通信機だ。 魔女式のものだが軍や保安隊出身なら使ったことくらいあるだろ? こちらからの情報はそれを通して伝える。 わかったら行ってこい。 魔力反応はまっすぐこの施設を目指してる。 エントランスから出てまっすぐいけばかち合うからさっさと倒してこい」



「「了解」」



俺とダルタニアンはそう返事をして部屋を飛び出した。























「全く…人使い荒いよなぁ。 とはいえここじゃマリーの言うことに従う契約だしな」



「それよりどんなやつなんだろうねっ!」



「だがらなんでそんなウキウキなんだよ。 戦闘バカか」



「バカいうな! バカを!!」



施設を出てすぐ目の前に広がる森を全く緊張感ない会話をしながら進む。

さすがに魔物相手に訓練用の剣で挑むとはいかないのでちゃんと『風切』を持って来た。

一方のダルタニアンは先ほどの訓練の装備のままであった。



「はいはい。 悪ぅござんした。………………くるぞ」



近くで森の木々がメキメキという音を立てて倒れる音が聞こえた。

そちらの方に目をやると、大きな巨兵の姿が目に飛び込む。



「ゴーレムですか! 腕がなります!!」



木々をなぎ倒し、ゆっくりと重厚な足取りで現れたゴーレム。

推定2、3メートルと行ったところか。

この前戦ったサトゥルヌスと同じくらいの大きさだがゴツゴツした屈強な岩石の身体を目の当たりにするとなんとも言えぬ圧迫感がある。

だが、ゴーレムとサトゥルヌスを比べるならはっきり言ってゴーレムの方が雑魚も同然だった。

なんせこいつらには1発で無効化できる弱点がある。



「こいつなら倒し方はわかる。 お前もわかってるな!?」



俺は剣を抜き魔力を込める。

魔力を充填させられた『風切』は独特の風を切り裂く音を発し始め徐々にその音を強める。



「へ? 力でねじ伏せる?」



俺の質問に対し同じく、戦闘態勢に入っていたダルタニアンはとぼけたように答える。



「ダメだ………、 聞いた俺がバカだった。 ダルはなるべくあいつの注意を集めてくれないか?」



「ダルって私のこと!? まぁそのくらいできるけど」



「お前も俺の名前あだ名で呼んでるだろ!? それにダルタニアンは長くて呼びにくい! それじゃあやつの足止めは頼んだ。 俺がやつの『術式』を見つけて叩く!」



ゴーレムの弱点はズバリ『術式』を叩くことだ。

『術式』を壊されたゴーレムはその形を維持できずガラガラと崩れ去ってしまう。

一対一ならともかく複数でやるときは誰かが囮になり他の奴が『術式』を叩くというのが常識として知られていた。

つまり、強力な力をもつ敵ではあるがやろうと思えば初心者勇者でも倒せる相手というわけなのだ。



ダルは俺の指示通りゴーレムの動きを引くためにヒットアンドアウェイを繰り返しゴーレムの動きを牽制する。


さて、俺の方も奴の『術式』の場所を探らないとな。


俺は少し離れたところからゴーレムの身体を見渡す。 別にダルの戦闘に関しては心配してはないのだが早く見つけないと後で何言われるかわからない。















「くぅ〜っ!! まどろっこしい!! これでもくらえ!!」



ダルは両手に持っていた銃を投げ捨て、軍服の懐からやや大きめのハンドガンを取り出しぶっ放す。

そのハンドガンとは思えぬ思い銃声とともに放たれた弾丸は先ほどまで全く歯が立たなかったゴーレムの頑強な身体を、そして頭を撃ち抜く。



「おいおい、『死神の誘いタナトス・インビテーション』なんて使ってんのかよ」



俺は呆れつつも感心する。

『死神の誘い』とはこの世界のアマデウス社という銃火器を製造する会社が作った銃で、威力だけを追求した一丁である。 威力だけを追求したとだけあって硬い魔物の皮膚をも撃ち抜けるというハンドガンにしてはあるまじき威力を秘めているのだが、なにぶん反動がでかすぎて撃ったら肩が脱臼する。 いや、脱臼なんてまだマシな方で下手したら腕の骨が砕けるとまで言われる有様で、まさにロマン砲の名に恥じぬ銃であった。




そんな銃をあろうことかケロッとした顔で連射しているダル。

彼女は反動を感じる感覚までバカになってるのだろうか。

俺はそう思わざるおえなかった。




















そんな威力の高い銃で頭を撃ち抜かれたゴーレムは動きを止めた。

だが、それも一時的なものでみるみると元の形に戻っていく。



「あれ? 弾幕足りなかったかな」



「弾幕の問題じゃねーよ! だけどおかげで助かった。 ちょっと踏ん張ってろ!」



「踏ん張るってなんで、ふぎゃっ!!!」



俺はダルの後ろから駆け出し、彼女の頭を踏み台にゴーレムの頭へと飛びこむ。



「『風切 弾指』!!!」



放たれた風の刃の一突きはゴーレムの喉奥へ深々と突き刺さる。

すると、剣の突き刺したところから赤い禍々しい光を帯びた紋章が浮かび上がり、ガラスの皿を落としたような音とともに粉々に砕けてしまう。

紋章が砕けたことによって魔力を失ったゴーレムはボロボロと崩れ去り、終いには目の前にはただの土クズだけになった。




「まさか口の中にあるとはな。 悪い、ダル。 『術式』見つけるの遅くなっちまった。 って、おい、どうした?」



振り返るとダルは肩をプルプルと震わせていた。



「言い残すことはそれだけ?」



そしてダルは恨みのこもった声でそういう。

あ、これはまずいかもしれない。



「は? なんだそれ?」



俺はとぼけたがそれがどうやらトリガーだったようでダルの怒りが爆発する。



「それが人の頭踏み台にした態度なの!? あったまきた!! 今すぐぶっ殺してやる!!!」



「おい! ちょ待て! 謝るから、悪かったって!」



「覚悟ー!!!」



「待て! 『死神の誘い』はシャレにならないって! 危なっ!!」


























「はぁ、全く何をやってるのかね。 あのバカどもは」



戦闘の様子をモニターで見ていたマリーはゴーレムを倒した後始まった2人の追いかけっこをみて、研究対象を間違えたかなと心の底で思うのであった。































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@egu05



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