44話 聖剣は呪われている?
『聖剣』には様々な制約がある。
それは前にも言ったかもしれないが、1つ1つ振り返る。
まず大前提、基礎中の基礎として
『同じ聖剣はこの世に存在することなく、唯一無二のものである』
ということだ。
これは勇者であれば、いや勇者でなくてもこの世界の戦いに関わる職業の誰しもが知っている事だ。俺の今の聖剣はマリーの作った贋作だが、アミのやアトスのはもちろんこれ一本しかない。なので彼女らのように一番最初に妙な能力の剣に当たってしまったらそこまで。死ぬまで一生のお付き合いである。
もちろんそんなことだったら他の勇者から剣を奪ってしまう。あるいは死んだ勇者から譲り受けるという手も使えそうではあるのだが、そうもいかない。
『ほとんどの聖剣はその持ち主にしか真の力を発揮するのみで他人が使うと本来の力を発揮しない。また勇者でないものが使っても能力そのものが発動しない』
『持ち主の勇者が死ぬとその剣は力を失い消滅する』
この2つの規則があるため自分の聖剣が微妙な能力だからといって他人のものを使えばいい、とはならないのだ。
とは言ってもこの2つの規則は曖昧な部分が多い。例えば俺の使っていた『風切』は持ち主である勇者が死んで1週間くらいでその力を失ったが、その持ち主の特異性という点ではあまり選り好みをしない剣であった。なので、俺が使っていても本来の力とまではいかないもののそれに近い力を発揮してくれた。ちなみにカステルの街での戦いの際、実は『風切』とは別の持ち主が死んだ聖剣を使っていたのだが、そちらは一時間もしないうちに能力を失ってしまった。つまり何が言いたいのかというと持ち主との相性や死別してからの件の寿命はその剣次第ということである。
そこへ来るとこの剣の異常さがだんだんと見えてくる。 この剣は持ち主が死んだにも関わらず数百年も力を持っているということだ。いくら剣によって寿命がまちまちだと言っても何百年も残るなんてことはありえない。長くてもせいぜい一ヶ月がいいとこだ。
俺らからしたら謎の薄気味悪い聖剣のはずなのだが、マリーはその事実に気づいた途端、柄にもなく鼻歌交じりにあれやこれや再検査の準備に取り掛かっている。
「確かに驚きの発見なんでしょうがマリーがキャラを捨ててまで喜ぶことなんでしょうか?」
マリーの浮かれた様子をぼーっと眺めながらポツリとアトスがつぶやく。
専門知識がない俺らからしたら彼女らが何をしているのかなんて知るよしもないがマリーフィーナたち森精種たちがウキウキで仕事をしてるところを見るとそれほどの発見だったのだろう。
「知らん。あの剣を調べたところでと問題の邪龍の欠点が分かったわけではあるまいし」
「とは言え仮にも聖剣、何かしらの能力を持ってるんじゃないの?だから、マリーがあの古代から蘇った剣を改造してでっかい邪竜にも対抗できるようなロボを作るんじゃないの!?」
「またあなたはお馬鹿なことをいって……。でも、あの剣の能力って実際なんなかしら。ポルタとアトスはあれ持ったんでしょ?何か分からなかったの?」
「えーっと、それはですねー、あの剣持って『聖剣』だということは分かったんですが能力とかは何も」
「普通だったら持った瞬間この剣はどんな能力か分かるもんなんだが、あれからはそれが全く伝わってこなかった。何百年も野ざらしになっていたせいで能力が無くなったのかあるいはとんでもなく身持ちの固い聖剣なのか」
「その身持ちの固いって言い方どうなのよ。まるで誰にでもある程度使える聖剣がまるでアバズレみたいな言い方じゃない。仮にもこの前まで『風切』振り回してたくせに」
「いや、可能性は他にもあるぞ?」
そんな難しい話に混じれない勇者四人がでまる放課後の学生のように全く建設的ではない会話で盛り上がっているところにいつの間にやらこちらの方にきていたマリーが会話に入ってきた。
「例えば?封印されてる伝説の聖剣だったり!?」
「ダル……。聖剣自体が元々伝説のものだということ忘れてませんか?」
「いや、そのアホ毛の言うこともあながち間違ってないかもしれない」
いつものように思ったことを口に出したダルの意見に俺たちがあきれているところに意外にも乗ってきたのはマリーであった。
「?」
「例えばの話だ。先ほど不老不死、あるいは時間を何百年も止める魔法は存在しないとは言ったが、あれは人間にはできないという意味だ」
「人間にはてことは例えば森精種とか? あ、でもそれフィーナがさっき使えないって」
「そうです。でもアミさん、私たち森精種も『人間』ですよ。森精種も獣人種もそのほかの種族もあくまで人類種とは亜種というだけですから。マリーさんがいいたいのはそれら以外、具体的にはその聖剣を持っていた勇者が戦っていた邪龍によってということですよね?」
俺らがマリーの話に首をかしげているとこちらもいつの間にか来ていたフィーナが説明に加わる。
「邪龍は遙か昔から存在している伝説の龍だ。文献で語られるもその詳細は不明、そんなやつが私たちの知らない魔法が使われていても不思議じゃないよ。仮に邪龍が聖剣を何の制約もなしに封印できる魔法が使えるとするならこの剣が聖剣だということ以外に何もわからないのも納得がいく」
「そんな規格外なものを相手にしなくてはいけないんですか、僕たち…」
二人の専門家の話を聞いたアトスが肩を落としこれから俺たちがやらなくてはならないことに大きなため息をついた。




