表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪運の星の一般人《エキストラ》  作者: 島草 千絵
弍章
37/47

37話 いざ、戦場へ


『さて、君たち各々準備をしてきたと思うが気を抜かず生き残るように。 君たちのナビは私とベガがする。 それでは健闘を祈るよ』



『ご武運を、であります!!』


































すでに海岸線には大勢の傭兵や勇者が集まっていた。 その中でもちらほら名前が知れている勇者も見えることから帝国、ギルドの本気度がうかがえる。



「やれやれ、この風景思い出すなー」



ポルタは着くなりそんなことをぼやく。

そんなやる気の全くないようなポルタにアトスが笑いながら声をかける。



「あはは、ポルタにはトラウマですか?」



「まぁ実際はもう始まって追い込まれたカステルの街に参戦したからここまで決戦前感はなかったけどな。 それでもたくさんの勇者や傭兵が集まった感はやっぱり思い出すなー」



「あのレベルを毎回やられてたらたまったもんじゃないわよ」



「そりゃアミの言う通りだけど……。 そういえば今回帝国が戦力を集めている割には軍の姿が見当たらないな。 帝国ご自慢の兵器の類は出ないのか? 」



先程帝国の本気度がうかがえるとは言ったが集められたのは『勇者』で軍の姿は多くは見えない。 本来なら陸上には戦車、海上には戦艦、くらいあっても良さそうなものなのだが、それらがない。



『今回は軍は動かないよ。 だから前回みたいに丸焼きになるかもしれないなんてことはないから安心するといいよ』



すると、マリーの方からその答えが返ってくる。

ちなみに無線はいつも使っている腕輪型のものではなく連携時の連絡に使いやすいイヤホン型に今回は変えてもらっていた。



「なんか嬉しいような悲しいようなですね。 なんで動かないんですか?」



「動かないんではなくて動けないんですよ。 色々とこちらにも事情がありまして」



アトスが苦笑いしながらマリーに聞こうとした時、後ろから声がかかった。 見ると軍服しかも一般兵とは違う物を着た男がおり、その人物を振り返って見て一番最初に反応したのはダルであった。



「あ! タネハル!!」



そう言って彼女はその後、男に駆け寄りハイタッチを求め、男もそれに答える。



「お久しぶりです、三佐。 あ、いえ、今は二階級特進で一佐になったんでしたっけ?」



「ダル? この人は誰なの?」



「この人はタネハルだよ! 私の相棒っ!」



アミの質問になんとも的を得ない回答をするダルの様子に慣れたように自己紹介を始める。



「そう言っていただき光栄です。 申し遅れました、私は帝国陸軍第5師団所属のタネハル・ウィルキンスです。 階級は二尉をやらせて頂いてます。元はユイ三佐の隊の副隊長をやってましたが、今は隊長がマリーさんのところへ行ってしまって不在のため私が臨時で隊長をやってます。 みなさんにはうちのユイ隊長がお世話になってるとのことで、どうかこれからも隊長のことよろしくお願いします」




タネハルと名乗る男はそう言って深々とお辞儀をする。 その丁寧な口調と落ち着いた態度からどうして破天荒なダルが軍の隊長なんてやれていたのかという長らくの疑問が解けたような気がした。

おそらく彼が縁の下で支えていたお陰なのだろう。



「あのー、さっきタネハルさんは軍の援軍は来ない、みたいなこと言ってたんですけど、どうしてですか?」



そんな軍の部隊を任される役職の彼に先程言っていたことをアトスが聞く。



「ええ、まぁそれにはいろいろありまして……」



そんなアトスの質問に苦笑いで頭をポリポリと掻きながら気まずそうに答える。









タネハル曰く、今回の防衛戦は先日のカステルの街の出来事を教訓に作戦を練り直し初めからそれなりの戦力を持って魔王軍を退けることが決まっていた。 それに加え、魔王軍が上陸すると思われる場所が獣人種との国境に近かったため自分たちの国にできるだけ被害を出したくない獣人種の王もこの防衛戦には積極的に協力してくれることになった。

ここまでは良いのだが、獣人種が協力することによって帝国軍としては両手を上げて喜べる状況ではなかった。 帝国軍の、特に海軍、陸軍はカステル防衛戦において大敗、全滅は免れたものの人間種が持つ技術兵器の類に大きな被害を負った。 海軍としては今回の戦いで使えるほどの戦艦はまだ修理が終わっておらず、陸軍も戦車の修理やカステルで失われた野戦砲の再製造も間に合ってなかった。

軍の上層部は魔王軍はもちろんのこと、停戦してるとはいえかつて殺し合いをしていた獣人種たちにも現在、自分たちが戦力的に空白があることを知られたくないと考えたのだ。 そこで今回は勇者や傭兵を中心とした白兵戦で挑むことに決め、兵器はなるべく温存することに決まったらしい。























「そんな手加減してたら勝てないよ!? もっとバァーンってやわなきゃ!!」



「ええ、私も三佐の言う通りだと思うのですが、我々軍人は上層部の意見には逆らえませんから」



「じゃあ、じゃあ! オヤジさんなら!!」



「三佐、あまり二将に無茶言っちゃまずいですよ。 最近もいろいろあって胃に穴があきそうだとボヤいてましたよ」



ダルがオヤジさんと呼ぶ人物はどうやら彼女の元上司らしく彼に相談してみては、と提案するダルの意見をタネハルは首を横に振る。



「ぐぬぬ!」



「タネハル二尉、ちょっといいか?」



そんなやりとりをする2人をポルタが割って入り尋ねる。 名前の下に階級をつけて呼ぶのはもともと保安官であった彼らしい。



「はい。 なんですか?」



「カステルの件で弱ってる戦力を見せたくないと言ってたがそれは今更じゃないか? あれで大きな被害を受けたのは森精種も獣人種も知ってるだろうし、今回の魔王軍もそう思ったから侵攻してきたんだろ?」



「わかってはいるが、というやつだと思われます。 悪あがきでも隠しておけばほんとに弱ってるかどうかは確証できませんから」



タネハルはポルタの質問にそう答える。

彼の顔はそんな虚勢が有効かどうかなんて言うのは正直微妙だが、軍の上層部が決めたことなのでどうしようもないと言うような困ったような顔であった。




『それは表側の建前だ。 実際は使おうとしていたがとある理由で使えなくなったが、正しい』



「? どういうことよ?」



そんな中、無線を通して2人の会話を聞いていたマリーが何か情報を知ってそうなことを言い、アミがそれを聞き返す。

その答えにそこにいる勇者4人やタネハルは耳を疑う。











『今回の戦いには森精種も協力してくれるからな』











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ