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悪運の星の一般人《エキストラ》  作者: 島草 千絵
弍章
34/47

34話 骨折り損


俺はラッキーホーネットからもらった魔法水を3人に飲ませひとまずベガたちがこちらへくるのを待った。

結果として魔王幹部クラスとはいえ勇者4人まとめてやられてしまったのだ。 これでは魔王倒すなんてはるか夢の彼方である。 とはいえ、勇者として復帰したのはついこの前なのだから第一線で活躍するラッキーホーネットのような勇者と比べたら確かに足元にも及ばないだろうが、ここまで差があるとさすがに来るものがある。

俺がそんな自分の無力感に苛まれているところに茂みの方で何かが動く音を聞き、咄嗟に剣を構える。



まずい………、魔鳥族の奴らが戻って来たのか!? 3人を守りながらは無理だぞ!?



音はだんだんとこちらへ近づいて背中を冷たい嫌な汗が一筋ながれる。



「おお! 無事だったか! ポルタの兄貴!!」



その聞き覚えのある能天気な声に俺は緊張の糸を緩めるとともに安堵する。



「お前、生きてたのかよ! てっきり戦闘機落とされてそのまま一緒に燃えたかと思ったぞ」



「落ちる前に脱出したから無事だったぜ! でも、F4一機無駄にしちまったから絶対後でマスターに大目玉くらうな」



そういい肩を落とすアル。

生きてれば儲けものだとは思うが確かにマリーの大切にしていた戦闘機落としたとなればせっかく生きて帰って来たのにそれが無駄にもなりかねない可能性は十分ある。 俺はそんなアルに苦笑いで答える。

そうこうしているうちにベガたちが来てお互いの情報を交換する。 それと同時にフィーナたちがダル、アトス、アミの3人の治療に取り掛かる。

彼らは戦闘職ではないといえ森精種であり、自分を守ったり治療をしたりという魔法はお手の物だった。












フィーナたちが3人を治療している間、俺とアル、ベガの3人はそれぞれで起こったことの情報共有をしていた。 共有といってもこちらからもたらすアドレアルフから聞いた情報をベガに話し、それを彼女がまとめるという形だったが、最後にアルから戦闘機撃墜の話を聞くと目を見開いて驚く。



「ええっ!? アル、あなたF4落としたんでありますか!? マスターにめちゃくちゃ怒られるでありますよ!?」



「あれは仕方なかったんだぞ! あ、ちなみに燃料はここに来る時2機ともほとんど使っちまってたからベガの方の機体のを俺が乗ってた方に合わせて動かしたぜ! だから、ベガの方の機体は燃料空っぽだぜ!」



「何をやってるんでありますか! 緊急事態とはいえ自分にも許可なしに!」



そう言って大笑いするアルをポカポカと殴るベガ。

一見有能そうに見えてどちらも無能とはいえないが何か抜けているのは果たしてマリーの仕様なのかなんなのか………



「おいおい、2人とも落ち着けよ。 それよりベガはマリーとはもう連絡取ったのか?」



俺はそんなくだらないことを頭に浮かべつつ、そう言ってベガを止める。

一通り暴れて落ち着きを取り戻したのかベガは俺の質問に答える。



「こちらで緊急事態が発生したこととそれがなんとかなったことだけは報告したであります! 後あの塊のデータも半分くらいしか解析できなかったですし、それにまだまとめてもいないので後で詳しいことも報告しようかと」



「あとF4のことも報告しないとな!」



「全く反省してないじゃないですか! 帰ってマスターにこってり搾られる前に自分の資料まとめを手伝うでありますよ!」



そう言ってベガはアルの腕を引っ張り連れて行ってしまう。

俺はその後村の人たちが避難したところまで行き、脅威は去ったことと、事情を話してダルたちを寝かせる場所を貸してくれるように頼んだ。

村長は魔物を追い払ってくれたのを俺の手を握り感謝し、負傷した3人だけではなく俺たち全員分を快く貸してくれた。




















「なるほどな。 そういう理由なら仕方ない。 私の魔力が回復したらゲートを繋げる、ベガはそちらで転移魔法陣の準備をしておいてくれ」



『了解であります!!』



緊急事態の報告があった次の朝、ベガからの詳しい報告と解析した資料をマリーは受け取った。

マリーの大切なコレクションであるF4一機が失われたことは痛かったが、F4を使った戦闘データとあの塊の興味を惹かれる(・・・・・・・)内容でイーブンむしろプラスであった。































「まさか、謎の生物があの伝説の『邪龍』だったとはね………。 もしかしてあいつはそれを知っていて私のところに持って来たのか?」



通信を切った後マリーはそう呟いて送られて来た資料を見てニヤリと笑う。



「それにしても彼ら、相手が魔王軍の主力の1人だったとは言えやはりまだまだ実力不足が否めないね。 このままだと研究に支障が出かねない…………。 仕方ない、あいつらの実力向上のメニューでも考えるかね」






































「おや、君も来てたのかい? でも、残念だったね。 目標はもう消失(ロスト)したよ」



ラッキーホーネットが帰路についていた目の前に凛っとした顔立ちにきちっとした身なりのポニーテールの女性が立ちはだかる。

それを見た彼は意外そうな顔をしてその女性に話しかける。



「それは気配からわかるわ。 なに? あなたがいながら見失ったわけ?」



ラッキーホーネットとしては笑顔で友好的に話かけたつもりだが、女性はツンっと淡白にそう言い返す。



「面目無い。 僕のハニーも今日はご機嫌斜めでね。 それにかわいい後輩が嬲り殺しにされるのも見たくなかったし」



彼は困ったように頭をかくが女性は大きなため息をつくと口調を強めて困り顔のラッキーホーネットに言う。



「はぁ、相っ変わらず甘いわね! そんなんだからまだ47位なんでしょ!?」



「はっはっは、さすが10以内に入る勇者様は言うことが違うなぁ。 僕はこれでもここに来る前結構ハードな仕事した帰りなんだけどなぁ」



「仕事ってあれでしょ? 大量のアンデッドが出たっていう。 どうせまた、あのアンデッドのお姫様目当てだったんでしょ?」



「うーん、そうだったんだけど今回はみんな野良だったみたいでね。 珍しいこともあるもんだよ、野良で500近く溢れるなんて」



「『邪龍』が関係したってこと?」



「そう考えて来たんだけど結局分からずじまいさ。 どうやらあの魔王軍のカラスの人も驚いてたから魔王軍の仕業じゃないみたいだけど」



「魔王軍以外で………自然発生、もしくは封印されていてそれが解けた?」



「さぁね。 ドラゴンの考えることなんてわからないさ。 それよりギルドから防衛任務への協力依頼来てたけど行く?」



ラッキーホーネットは話を逸らす意味も込めて先日ギルドから上位ランカー各位に出された依頼の件を女性にきく。

その依頼とは1ヶ月ほど前に壊滅的な被害をカステルの街を襲って来た魔王軍と同程度の勢力がまた攻め込んで来るというので、今回は上位の『勇者』も参加してほしいとのことであった。

女性はラッキーホーネットの質問にキッパリと答える。



「ええ、前回私たちが遠征行っている間に随分と派手にやられたみたいだし、さすがに帝国も1ヶ月そこそこじゃまだ対抗できないでしょ」



「前回は酷かったみたいだしねー。 なんでもカステル所属の『勇者』はほぼ壊滅、応援に行った近隣の町や帝都のギルド所属の『勇者』も大きなダメージ受けたみたいだよ」



「ともかく、あなたも参加するなら甘い考えは捨てないと死ぬわよ?」



さっきまで言いたい放題だった女性が彼に気を使うようなことを言う。 するとラッキーホーネットはニヤニヤとした顔で怒るの承知でからかうように言う。



「あれ? 僕のこと心配してくれるの?」



「そんなんじゃないわよっ! ただ知り合いに死なれると胸糞悪いだけだし!」



「あはは、はるるんもかわいいなぁー」



「その名で呼ぶな!」



女性は真っ赤になり彼をぶっ叩くが、ラッキーホーネットは楽しそうに笑うだけであった。





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