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悪運の星の一般人《エキストラ》  作者: 島草 千絵
弍章
31/47

31話 大きな塊がある村


轟音を立て、まるで空を切り裂く矢のように飛んでいく二機の戦闘機。



「ねぇ!! これ大丈夫なの!? やけに振動大きいし、何より狭いんだけど!?」



アミは後部座席から飛行機を操縦しているアルに叫ぶように聞く。



「そりゃそうだぜ、アミの姉御! そもそも定員オーバーだからな! まぁマスターのこの機体は帝国のより出力あげてるから心配いらないぜ!!」



「マリーのって単語に激しく不安を覚えるけどな……。 アル、その村まではこの飛行機でどれくらいなんだ?」



「ざっとノンストップで3時間ってとこだぜ!!」



「まぁ本来2週間かかる道のりが3時間で済むならいいんでしょうけどこの状況どうにかならないんですかね」



「そう愚痴らないでよ、アトス! ファントムに乗れるなんてそんな経験滅多にないんだよ!?」



「いえ、戦闘機に乗れるのは確かに貴重な経験なんですが、さすがに後部座席に4人詰め込むんだ状態で3時間というのは……」



飛行機が揺れるのとか移動時間とかまぁそれはこの今の俺たちの状況からしたら些細な問題であえて誰も触れなかったのだが、ここでアトスが今俺たちが置かれている状況に初めて触れた。

そう、彼のいう通りこの戦闘機は本来操縦席に一人、その後ろに一人の定員2名である。 だが、俺たちは全員で9人どう考えても2機では乗り切れないのである。 そこで鬼畜な魔女ことマリーが思いついたのは後部座席に人を詰め込むというバカのような作戦だった。 もちろんこれにはいの一番にダルが抗議したのだが実力行使で結局詰め込まれてしまったのだ。 なのでアルが操縦するこの機体には俺たち勇者組4人が、ベガの操縦するもう1つの機体は森精種組3人が詰め込まれている。 ちなみに森精種組は自らの身体を小さくする魔法を使えるので俺らほど窮屈な思いはしてないはずである。

だが、実際に口にされるとやはりこの状況は耐え難い。




「それを言ったらおしまいだぞ? それにまだ酸素マスクが人数分与えられてるんだからましだと思わんと……。 それにこの件はアミでさえこのことにはツッコンでないんだから」



俺は苦言を呈するアトスにそう答える。



「私でさえってどういう意味よ!! 私の趣味がツッコミみたいに言わないでくれる!?」



「暴れんなって! こんな狭い機体で暴れたらいろいろとあれだろうが!」



俺の発言にアミがその芸人ばりの反射神経で反応したのだが、いかんせん狭い機体なので自由に身動きが取れない。



「はっはっは! 大丈夫だよ! アミさんの胸もお尻も触るとかないから」



そんなアミにダルはぽろっと言ってはいけないことを言ってしまう。



「ふんっ!」



「なんで俺!?」



アミからの鉄拳制裁は発言したダルではなく理不尽にも俺へと下される。

そんな感じでぎゃあぎゃあやりながら戦闘機は馬車で2週間かかる目的地へあっという間に到着したのだった。





























「んー、ようやくついた!」  



機体から降りたアミは大きく背伸びをする。 

着いたのは人里離れた山の中、一応ちゃんとした手段で入手したわけではないこの2機の戦闘機を隠すためである。 しかし、ここから村までは歩いてすぐだという。 



なるほど、帝国軍もこんな辺鄙な場所に人員を割きたくないという気持ちも分からなくない。



俺はあたりを見渡して俺たちがここに来る理由となったわけに納得する。

みな各々村へ向かう準備をしている中、ダルとアルはいつまでも乗ってきた戦闘機の話題に花を咲かせていた。


「まさか垂直離着陸できるようにしてるなんて!!」



「まぁこの世界には滑走路がないからな!」



「はいはい、二人ともちゃっちゃと準備する!」 



そんな二人をまるで引率の先生のようにアミが急かす。

ダルとアルはアミを怒らせるとまずいと思ったのかそそくさと自分たちの準備に取り掛かった。

その様子をほほえましく見守っていたアトスがポツリとつぶやく。



「にしてもその問題の塊はどこにあるんですかねぇ」



「さぁな。 でも、デカイってんだからすぐ見つかるだろ? とりあえずその村に行って話聞こうぜ」








山を少し下りようやく目的の村へとたどり着いた。 

そしてついてすぐその問題となっている謎の塊が目に飛び込んでくる。 

それは俺たちがいる村の入り口とは逆側にそびえたつ赤黒い塊。 大きさは集落の建物より二回りほど大きくビル3,4階はあるのではないかというほどの高さでその不気味な見ためからかなり独特な異彩をはなっている。



「あれか、問題の生物らしきものってのは、見た目グロいな」



「確かに近寄りがたいですねー。 どうします? 早速調べますか?」 



「いや、まず村の人に話聞いてからでもいいだろ。 この服着ているおかげで話も聞きやすいだろうしな」



俺はそういってマリーに着させられた軍服の腕章部分をつまんでアトスにそう答えた。

村に着いた俺らは持ってきた機材で早速問題の塊を調べる組みと村の人たちに聞き込みを行う組みに分かれた。 聞き込み組の俺たち勇者4人とアルの5人まず、村長の家へ向かい挨拶と調査の許可をもらってから村の人達に聞き込みを行なっていった。


















集合場所と指定した例の塊の元へ俺が聞き込みから向かうとすでに全員集合していた。



「悪い! 遅くなった」



「はい、お疲れ様です。 どうでした?」



「まぁあんま詳しいことは分からずじまいだな。 先週くらいに起こった大きめの地震の後現れた。 たまに薄気味悪く光る。 鼓動を刻んでいる。 これくらいか」



俺は聞いてきたアトスにそう答える。 実際どの村人からも聞く話は一緒で、それよりも早くなんとかしてくれというような声の方が圧倒的に多くマリーが最初に俺たちにくれた情報以上のまともな情報はあまり得られなかった。



「なるほどね。 私たちも同じようなものだったわ」



「地震で現れた謎の生物! 実は地中深くに埋まっていた古代に生きていた伝説の怪獣とかいうオチはないのかな!?」



「なに小学生みたいなこと言ってるのよ」



「そっちはどうだ? なんかわかったのか?」



俺は塊のことを直接機材などを使って調べてるベガに話題を振る。

俺ら素人からしたらなにがなにやらチンプンカンプンな道具を使っている調査組なら何かわかったかもしれないと思ったからだ。

しかし、ベガは困ったような顔で答える。



「うーん。 今はまだなんとも分からんであります……。 ただやはりわかってることはこれが『生物』であるということと、今見えてる部分はほんの一部で大部分は地中に埋まってるということであります」



「ってことはこれよりももっとデカイってことか………。 本当に冗談抜きでダルの言ってる通りになりそうだな」



「そうなったら僕らじゃどうしようもないですからね。 そうじゃないことを祈りましょう」



「とりあえずベガやフィーナたちの調査が終わるまでは待機だな」



結局今日わかったことは突然現れた謎の生物は調べた結果より謎が深まったということだけであった。













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@egu05



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