オリオン座周遊期
勢いのままに書いたプロットのようなものです。
よろしくお願い致します。
玄関の鍵が開かなくなって三日経つ。開けることに四苦八苦したのも10分くらいだ。そ
んなことよりTwitterの更新が忙しい。昨日友人から電話が来た。「なにしてんの?」「ドアが開かない」「必修どうするん?」「部屋から出られない」友達が不動産屋に電話をしてくれることになった。今気づいた、自分からは電話ができない。
食べ物が尽きた。そろそろ何か行動しなければまずいと思い出しカーテンを開けた。底の
見えない宇宙が広がっていた。いつも見えていた峰山も、裏の墓地もない。どころか地面も
ない。この部屋はどうも宇宙を漂っている。いつもより動揺していることに気づきとりあえずTwitterを更新し寝た。
『宇宙遊泳、夢だったんだ』
次の日、おそらく次の日、太陽が頂点にいるような時間に起きた。天気予報を見れば今日
は快晴。まだ肌寒い日が続くでしょう。カーテンを開けた。赤道直下の太陽を間近で見たような光が差し込む。慌ててカーテンを閉めた。一瞬でわからなかったがすぐ近くに光源がある。きっと太陽だ。これでは外を調べることも難しい。昨日のうちに調べておけばよかった、と後悔するわけでもなくTwitterを開き更新した。
『太陽間近で見える』
空腹に耐えきれず冷蔵庫を開けたら食べ物が詰まっていた。よくわからないが食料に困ら
ないようだ。友人から電話がかかってきた。「宇宙遊泳とか、太陽とか、何アレ」「自分でもわからん」とりあえずこちらからは電話が掛けられないことを伝え、不動産屋がなぜかこの部屋のことに関しては動いてくれないことを伝えられた。
友人が親に連絡してくれたらしく父親から電話が来た。「出られないのか」「そうみた
い、大学行けない」「明日そっちへいく。それから考えよう」何してんだ、自分。
親はこっちまで来たようだが、下宿を見つけられず帰っていった。大学は休学することに
なった。嫌な予感しかしない。しばらく日光が強くカーテンが開けられない日が続いていたが、今日になってやっと日陰に入った。星座を見て位置を知ろうとしたが全く分からなかった。カーテンを閉じた。食べ物は無限に出てくる。水も使い放題、電気もネットも使える。
難しいことはわからないがおかしいことがおきている。
『死んだと思ってください』
半年が過ぎた。新しいものは増えないが、不自由のない生活を送っていた。親と相談して
大学は辞めた。部屋の外と中では同じ時間が流れているようだ。たまに日光を浴び部屋の中を歩き、Twitterで時間をつぶす。もう一生関係がないニュースに詳しくなってしま
う。
やはりこの光源は太陽ではない。オリオン座の恒星、ベテルギウスらしい。部屋の周りを
恒星が回っているのではなく、この部屋がくるくる回っているらしい。実は二日前まで気づいてなかったが、ドアが開かなくなった日から毎日メールが来ていた。内容はオリオン座一生周遊旅行について。
≪オリオン座一生周遊旅行へいらっしゃい!いつもの部屋で、いつもの生活、そのまま一生 オリオン座とともに......。そんな夢の旅が今始まります!≫
どのメールもこの文章から始まり長々と数式を織り交ぜた文章が続く。なぜか1+√13 の解がオリオン座誕生の秘訣だとか、エドガワ・シュメール理論によるオリオン座命名の謎解きだとか、突然楔形文字に成ったりだとか。解読できる部分は少ない。返信をした。「な んで俺なん」
≪オリオン座一生周遊旅行協会です!ご連絡ありがとうございます!返信は次営業日まで一
億年お待ちください!≫
三年経った。携帯が壊れた。パソコンも限界に近い。親には先週最後の電話をした。「連
絡手段なくなりそう」親は泣いてるみたいだった。家出したとか、ヤバいことに手を出したとか、まったく考えてないらしい。月並みにいままでありがとうと伝えたが返事はなかった。携帯は壊れていた。
パソコンも壊れた。食べ物みたいに増えないかと思ったら下駄箱の中に新しいパソコンが
入っていた。見たことないメーカー、聞いたことのないOSだ。形だけはパソコンだが中身が別物だった。一度起動すると脳内にパソコン画面が入ってきた。なぜパソコンの形をしたものを送ってきたのだろうか。Twitterも出来るしネットサーフィンもできる。メー
ル機能もある。ただし受信のみ。Twitterを親には伝えてなかった。友人がもしかしたら伝えているかもしれないがもう無駄だろう。作り物のインターネットを与えられていた。今まで見てきたタイムライン、今まで見てきたサイト、それらしいゲーム。インターネット、のようなもの、は楽しめるがもう地球と連絡を取るのは不可能になったようだ。
メールは相変わらず送られてくる。
読んでいただきありがとうございました。
もっと掘り下げて書き直していく予定です。