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序章14:一日の終わりに




 冒険者互助組合の施設からディーノの家に着く頃には、日は完全に落ちていた。

 玄関扉を潜ってスリッパへと履き替えたディーノは、土間に佇む小歳に振り返る。


「思ったよりも時間食ったな。直ぐに飯の用意をするから居間で待っててくれ」


「飯の支度なら俺も手伝―――――」


 突如として突き刺さったディーノの鋭い視線に、小歳は言葉を詰まらせる。

 眉間に皺を寄せた睨むような面持ちには、嫌悪と敵意、そして警戒心が見て取れる。

 互助組合で生死に関する事柄に触れた時の反応とは明らかに違う、違和感を感じさせない感情発露。


「ディーノ?」


「っあ……悪い。御免、お前は知らないんだよな」


 意識して困惑を乗せた小歳の声に、ディーノは我に返ったのか、少しばかりの戸惑いと申し訳なさが混じった表情をした。

 人によって逆鱗は異なるのは当然だが、今の僅かな会話のどこに問題があったのか、小歳には皆目検討も付かない。

 翻訳が誤訳をしたのか、或いは何か言い回しに問題があったのか。

 それとも宗教的な禁則かもしれない。


「これな、常識の問題なんだけどさ。

 女の家や女が居る家で男が台所に足を踏み入れんなっていうルールがあんだよ」


 宗教的タブーなのか、それとも常識、風習の違いか。

 前者に思えるが、小歳には今ひとつ判別が付かなかった。

 確かに日本でも昔は男子厨房に入るべからず、とは言ったもの。

 ただ、あれは家電製品が普及する前の炊事場は、男なんて足手まといの存在を許さない場所であり、忙しい炊事場に役立たずが入ってくるな邪魔臭い、という女側からの宣言に他ならない。

 とはいえ、炊事場に足を踏み入れることで邪険に扱われることはあっても、敵意に嫌悪、警戒心を抱かれるということも無いだろう。


「男が足を踏み入れた場合……どうなる?」


「刺される。んで、周囲に叱咤されたり笑いものにされたりする。

 ああ、女が罪に問われるって事はないぞ、台所に入った男が悪いからな」


 なにそれ怖い。

 腕を組んで語るディーノは至って真剣で、曲がり間違っても冗談を述べているようには見えなかった。

 迷宮はおろか、争いとは全く関係ないところで死ぬんじゃないかな、なんて不安を抱くくらいに怖い。

 過剰反応とも思うが、そういう環境下で反射的に悪感情を抱くに留め、しかも一声で我に帰ってくれたディーノの懐深さに有り難味しか感じない。

 これ、人によっては台所に入ることを明言しただけで、殴られるのではなかろうか。


「そうか。知らなかったとはいえすまなかった」


「ああ、いや、謝られる様なことはないよ。私の思慮が足りなかったんだからさ。

 台所に入るようなことを言われたから、つい反射的にな」


 要するに、それは脊髄反射で反応してしまうような、生活の中で体に染み付いた反応だということだ。

 文化風習として根付いた常識なのだろうが、なぜそのようになっているのか小歳には皆目検討が付かない。


「ところで、喉が渇いた時とかはどうすれば?」


「台所の脇に水瓶置き場があるから、そっから取ってくれ」


「解った」


 家の作り自体が、完全に台所に足を踏み入れさせない作りになっているようだった。

 小歳は、当面はディーノに付き従って行動しようと心に決める。

 異国異郷という認識はあったが、流石に刺された方が悪いとされる常識があるというのは予想外だった。

 いや、少し違うか。

 刺殺しようが関係がないのだ、この世界の住人には。

 死んでも後で蘇らせればいいというだけのことなのだから。

 それを考えれば、ディーノと共に行動し、指摘と忠告を受けながら常識を学んでいくのは急務だろう。

 問題があるとすれば、お互いに常識の差異があると理解しながらも、その差異が何なのか把握でないことくらい。


「んじゃあ、私は飯の支度をしてくるわ」


「その前に水と布巾をくれるか、足を拭っておきたい。

 スリッパがあるとはいえ、このまま上がるわけにもいかないだろう」


 身を翻そうととしたディーノは、言葉を受けて小歳の足元へと視線を移す。


「それ、素足なのか?」


 五指それぞれに感覚はあるものの、外見的には足袋のような形となった足。

 ライダースーツのようになった体と一体になったそれは、素足というべきか、靴を履いているというべきか、小歳にも解らない。

 ただ。


「感覚としては靴を履いているんだが、それはそれで土足で上がることになるからな……」


「わかった。少し待ってろ、桶に水入れて持ってくる」


「手間をかける」


 身を翻して奥へと下がるディーノの背中にそう声をかけると、ひらひらと手を振って答えた。

 気にするなというように。




 *




 夕食も終わり、木の食器の片付けも済んで、小歳とディーノは向かい合ってホーラ茶を飲んでいた。

 全く関係のない話だが、江戸時代の農民、漁民の食事は、都市圏に住んでいる人間よりもよっぽど豪勢だったらしい。

 冷凍技術が発達しておらず、輸送にも限界がある以上は、産地が最も豊かになるのも当然といえば当然だろう。

 全く関係のない話だが、ここは都市圏である。


「そういえば、俺が学生と答えた時、何やら妙な反応をされたが、あれはなんだったんだ?」


「あー、あれなー」


 歯切れが悪く、言いづらそうにディーノは口淀み。


「村とかだと巡回講師の青空教室がある程度なんだけど、都市圏だと学校があって、私みたいに市民権があると一定年数の在籍が義務付けられるんだよ」


「それは一人で暮らしながらか?」


 ああ、とディーノは頷いて続ける。


「序に食い扶持を自分で稼ぎながらな。

 だから職業を聞かれて学生って答えるのは、親の脛を齧ってる世間に出れないボンボンって見られるな」


 …………あれ、認識としては正しくね?

 実家に暮らして食費だなんだと親の庇護下で暮らしていたわけで、小歳としてはそこに異論を挟もうとすら思わない。

 むしろ、ああ、その通りだ、と力強く肯定する所存であった。


「あながち間違ってないからな、その認識でいいんじゃないか」


「いや、お前のところと成人年齢違うんだから、一緒くたにできないだろ……」


 どこか呆れたようにディーノは言った。


「まあ、今後は冒険者と名乗るから問題ないだろう」


 学生身分を証明する手段が無いので、職業冒険者を名乗らないと無職になってしまう。

 というか、現時点において稼ぎが全く無く、ディーノに金銭、生活的に依存している以上、無職ではなくヒモである。

 異世界で同年代の少女のヒモになる………恥ずかしくて死にたくなる話だった。

 早く稼いで、立て替えてもらった金を返して、家賃と食費を納められるようにならなければ、と焦燥感が小歳の胸を焦がしていく。


「それでさ、お前のステータスってどんなんだったんだ?」


 世知辛くなってきた会話を切り替えるように、ディーノが小歳に問いかける。

 それに小歳は無言で机の脇に丸めて置いておいたステータス表をディーノへと差し出した。

 内容に関しては、食事が来るまでの間に一通り読んでおいたのだが、能力値に関しては平均が解らないので何とも言えず、《スキル》に関してはお察しとしか言いようが無い。

 どんなものかと言うと。


【Lv1 *】【クラス:――― *】【属性:白/白】【種族:人間種】【法則:地の理】

+Hp18 Mp―

筋力 / 7  耐久 / 6  器用 /10  俊敏 / 8  反応 / 7

魔力 / 0  抵抗 / 0  知力 /12  感知 / 7  幸運 / 4


【固有スキル】

+《異世界人:―》

+《修羅修験道:―》


【アクティブスキル】

+《互換項目該当:無》


【パッシブスキル】

+《神護の肉体:―》

+《不壊の加持:―》

+《第三種共通言語:―》

+《諱の守り:―》

+《双血の半身:Ⅲ》

+《装備制限/篭手・具足・鎧・兜・指輪》

+《武器熟練/刀:10》


 これがゲームだったら、エンディングまで拠点で仲間を待つだけの簡単な仕事か、縛りプレイ専属キャラ待ったなしだろう。

 パッシブスキルがLv1にしては多く見えるが、多く見えるだけなのだ。

 実質的に、天の加護を除けば小歳の持っているものは、《諱の守り》と《双血の半身》、《武器熟練・刀》の三つに限られる。

 《―》というのは、レベルのないスキルであり、《双血の半身》はレベルの上げようのないスキルである。


「え、何これ、何だこれ?」


 どう反応すればいいのか解らないといった風情のディーノは、ステータス表と小歳の無貌を交互に行き来させた。

 優れたステータスに驚きを隠しえない……なんてわけがない。

 自身の能力と比較して、そこにある差異に困惑を隠しきれないのだろう。


「《修羅修験道》って、これ……」


「書いてあるそのままの効果だろうよ」


 その顔から血の気が引いていくのを横目に、小歳はホーラ茶を一口飲んで、どうでもいいことのように言った。

 ディーノは随分と過剰な反応をしているが、そのスキルの効果は、本当になんてことは無い。

 仰々しい名前に反して、至極当たり前で在り来たりなことが書かれているに過ぎない。

 地球人類を通り越して、地球の生物のほぼ全てが、そうだね、と答える程度のものだ。



 誰であろうと、何であろうと、死せば帰らず。帰らせず。



 要約すればこれだけで、言ってしまえば自他の蘇生拒絶だ。

 己が死すれば蘇生せず、殺せば蘇生を受け付けさせない。

 ただそれだけの、当たり前の事象に過ぎないが、どうにも死者蘇生というものが身近にある世界の住人であるディーノにとっては、恐ろしいまでに重いものであったらしい。

 己が世界に死者蘇生の法はないと小歳は告げていたが、明確に文言として蘇生がない、ということを突きつけられた事で、実感として理解したのだろう。

 片手で頭を支えるような姿勢のまま、ディーノは沈黙する。

 死んで蘇らない、蘇らせない、という事実を受け入れがたいのか。


 ああ、いや、と小歳は思いつく。


 この世界の住人にとって、ディーノにとって、死んで蘇らない、蘇らせない自分はきっと怪物と変わらない。

 『蘇生を前提とした死』を覆す存在など、それこそ魔物よりも恐ろしいものだろう。

 そう考えれば、小歳という存在に怯えを抱いたとしてもおかしくは無い。

 居候生活も今で終わりか、と受け入れる。どのような故があれ、目の前の少女に無理を強いるべきではない。


「なあ……」


「なんだ」


 次に続く言葉は出て行ってくれか、と小歳は受け入れて。


「お前のスキルさ、全体的にマイナス面大きすぎね」


「は?」


 そんな予想外の。

 そして当たり前に続く会話に、間の抜けた声が漏れた。


「なんだよ、その反応」


「ああ、いや、てっきり出て行けと言われると思っていてな」


「はあ? なんで……って、ああ」


 何か察したようにディーノは、小歳を呆れたような視線で見据え、それから、はっ、と鼻で笑った。


「そりゃな、昨日今日の付き合いで、お前は私を殺したりしないなんて言うほど能天気じゃないさ」


 それは当然だ。

 出会って数日も立っていない、そもそも言えばまともに会話したのだって、今日が初めてだ。

 そんな人間を無条件に信じる方がどうかしている。

 ディーノが小歳を家に住まわせる選択をしたのも、あくまで彼女の命を助けたからだ。

 そしてその事実があったとしても、越えられぬものは存在する。

 『蘇生を前提とした死』を文明と文化、そして人格の根底に持つ彼らにとって、『蘇生を否定する死』を齎す小歳は、それら全てを否定するものであるが故に、相容れようが無いはずだ。


「だけどさ、

 それが出来るってだけで、何もしてねえ人間に脅えるのは違うだろ」


 言い含めるかのような声に淀みはなく、また迷いもない。

 その言葉は、そのように生きてきたからなのか、そのように生きようとしているからなのか、解らないけれど。

 小歳は眩しがるように、無貌の奥の双眸を細めた。


「ま、どうあれ恩人を追い出すにゃ理由が弱いってこった。

 安心しろよ、助けられた恩義の分は面倒を見るさ。


 早々に投げ出せちまうほど、私の命は安くもなくなったからな」


 ふっ、と柔らかに笑うディーノに、小歳は細めていた双眸を閉ざした。


「死んで蘇らないというのは、お前にとって不自然だろう」


 特に意識せずに言葉を吐き出してから、言うべきでない意地の悪い言葉だと小歳は歯噛みした。


「いや、蘇らせないことって結構あるぞ、老衰とか」


 あっさりとした返答に、小歳は矛盾を感じて片目を開いた。

 ディーノは嘗て、死者を死者のままに捨て置くことを錯乱しているのではないかという勢いで否定した。

 だというのに、今は平静に受け答えている。

 あの時の反応からするに、もっと過剰かつ強烈な応対を覚悟していたのだ。

 この違いは何なのか。やはりおかしい。何かが、おかしい、と小歳の胸中に疑念が募る。


「ああ、あと病気な。

 体内の病毒を祓ってからじゃないと蘇生できないらしいんだけど、流行病みたく一気に来るような病気だと病毒祓が間に合わなくて、蘇生できないくらいに肉体が腐敗したりとかはある」


「そうか、すまなかったな」


「ん、ああ、別に気にしてねえよ。お前がそう考えるのも当然だとは思うしな。

 頭下げんな、むず痒くなる」


 言いながら頭を下げていた小歳は、その言葉に、少し呆れたような、それでいて何処か居心地が悪げな面持ちのディーノに向き直る。


「……話を戻すが、俺の《スキル》にマイナス面が多すぎるという話だったか」


「ん、ああ、そうそう。ほぼ全部のスキルにマイナス補正が付いてるぞ、これ」


 うむ、と小歳は頷くと、意識して白々しい口調―――具体的にはどうしようもなく棒読みな口調で言った。


「このよには すきるのけってんやたんしょをさかてにとって たたかうにんげんも いるらしいぞ」


「なんだよ、その口調……。

 しかし、これを逆手に取れる奴がいるなら見てみたいんだけど」


 微苦笑しながら言うディーノに、小歳は首肯する。

 本当に、これを逆手に取れる人間が居るというのなら教えて欲しいものだ。

 そんなことを考えながら、小歳は《スキル》の内容を思い返していく。



《異世界人:―》

 現状世界から見て、異世界の住人であることの証明。

 出生世界と環境が異なるため、生体活動を正常に行えない。

 現行世界においては最大30分前後生存が可能。


《修羅修験道:―》

 本人の命の在り様と世界を覆う法の差異が、本人の性質と組み合わさり顕在化したもの。

 複合型特性。自身と殺害対象の死者蘇生を不可能なものとする。

 また瀕死時に知力/抵抗/幸運以外の能力値を小上昇。


《神護の肉体:―》

 神格《天を照らす女》の加護を受けている証明。

 肉体と衣類の変貌と引き替えに地球上に存在しないものを遮断する個人単位の環境改変能力を付与する。

 肉体強度の変動はないが、強度のない外殻を纏うようなものでないため、俊敏が少減少、反応/感知が中減少する。

 また大きく肉体に作用する加護であるため、対象神格の影響から性欲の消失による不能状態となる。


《不壊の加持:―》

 神格《天にて最も鋭き剣の祖》の加持を保有する証明。

 日本刀の係累を装備した場合、武器に自己再生の効果を付与する。

 武器性能に変動は発生しないが、効果が発生した場合は神格干渉の影響から技能値を少低下。


《第三種共有言語:―》

 《神護の肉体》に付随する加護。

 同階梯の知性体と言語を触媒にした意思疎通を可能とする。


《諱の守り:―》

 名を秘する事による呪詛、呪術に対する対策。

 呪術呪詛の成功率を半減させ、発動した呪術呪詛の効果を半減する。

 術者に諱を知られている場合、効果を発揮しない。


《双血の半身:Ⅲ》

 双子の片割れの生死を感覚的に認識可能。

 また同一の世界に居る場合、経験を一部ながら共有できる。


《武器熟練・刀:10》

 刀の習熟度合い。

 刀以外の剣を用いる場合、半分の数値を適応する。


《装備制限》

 肉体の変貌により、鎧、兜、具足、篭手を装備出来ない。



 お分かり頂けただろうか………。

 戦いで機能しそうなのが、《武器熟練》と《諱の守り》以外にないのである。

《修羅修験道》のHp減少時の能力向上があるが、要するに火事場の馬鹿力であって頼るようなものでもない。

 十二年の鍛錬して得たものが、この表によると《武器熟練・刀》のみであるらしい。

 その点に無常を感じる小歳であった。


「ディーノ」


「お、おう、なんだ?」


「お前のステータスも見せてくれ」


 ディーノは無言のまま、なんともいえない微妙な表情で自身のステータス表を小歳に手渡した。

 無言で小歳はそれに目を通していく。



■【Lv1】 【クラス:軽戦士】 【属性:青/黒】 【種族:人間種】 【法則:形成法】

+Hp26 Mp26

筋力 / 8  耐久 / 8  器用 /10  俊敏 /12  反応 /12

魔力 / 8  抵抗 / 8  知力 / 8  感知 /10  幸運 /11


【固有スキル】

+多芸貧才:-

 物事の要点が掴むのが得意な反面、真髄を得るのを不得手とする特性が顕在化したもの。


【アクティブスキル】

+《パリィ:1(6)》 [1]

 盾、剣による受け流しを行うスキル。

 盾を用いる場合、打ち払いにより相手の体勢を崩す場合がある。


+《致命の一撃:1(6)》[4]

 体勢を崩した相手に対して攻撃した場合、確定でクリティカルを発生させる。


+《シールドブロウ:1(6)》[4]

 盾による打撃。相手を怯ませる効果がある。


+《チャージ:1(6)》[5]

 突撃の勢いを利用した刺突攻撃。


+《狙撃:1(6)》[8]

 弓による精密射撃を行う。


+《投擲:1(6)》[3]

 石、投げナイフ、小、中剣を相手に投げ付けて攻撃するスキル。


+《ドッチ:1(6)》[2]

 機敏な動作での回避行動を行う。

 大盾を装備時は補正にマイナス。


【パッシブスキル】

+《アサルトエンゲージ:1(6)》[0]

 機先を制する行動を行うスキル。

 戦闘開始のみ、俊敏にSLを上乗せする。


+《罠探知:1(6)》[0]

 罠の存在を察知するスキル。

 自動判定時には感知にSLを上乗せした数値で判定。

 また罠探索時、感知にSL×2を上乗せしてよい。


+《諱の守り:―》

 名を秘する事による、呪詛呪術に対する対策。

 呪術呪詛の成功率を半減させ、発動した呪術呪詛の効果を半減する。

 術者に諱を知られている場合、効果を発揮しない。


+《武器習熟/中型直剣:1(6)

 武器の習熟を示すスキル。中サイズの直剣限定。


+《武器習熟/弓:1(6)》

 武器の習熟を示すスキル。大弓を除いた全ての弓に適応。


+《防具習熟/中装備:1(6)》

 防具の習熟を示すスキル。中装備に適応。



 知力以外全部負けていた。

 しかもMpと魔力のない小歳にとって、知力は死にステータスだ。

 曰くにして魔法に対する感受性の高さを示す以上、それを扱う能を持たないので高くとも意味は無い。


「このスキルレベルの横にある数字はなんだ?」


「スキルレベル上限と使用時の消費魔力だとさ。

 何でもスキルレベルの上限は個々人で違うんだと」


 ………今ひとつ解せないが、体系の違いだろうか。

 技術を用いるのに魔力とやらを消費するというのが解らないが、まあ自分も剣を振るえばスタミナ的な意味での体力を消費しているし、この世界では魔力を消費するものなのだろうと納得しておく。

 ただ上限があるというところに納得がいかない。

 才能の差によって伸びる速度に違いはあれど、上限などありはしないだろう。

 どんな人間でも、果ての果てに到達する前に寿命が来るだけで、個々人に異なる上限がある訳ではない筈だと小歳は思うのだ。


「手の種類が多いというのは利点だな。能力も俺に比べれば高い」


 十二年鍛えた体は同年代の、特に鍛えてもいない女の子に劣ってはいたが、まあそれはそれと小歳は割り切って受け入れた。

 形成法という魔法のようなものを受け入れなかった結果がこれであるのなら、それは仕方のないことなのだ。

 小歳からすれば、ディーノに身体能力で劣ったという事実よりも、形成法とやらに縛られない状態であることの安堵が勝っている。


「そういうもんなのか?」


「ああ、戦いようが増えるというのは、それだけで強みだ。

 お前のスキルを例にするなら、投石で牽制して剣で斬りつけるという手段が取れる」


 ああ、なるほど、とディーノは納得したように頷いた。


「しかし魔力があるのに魔法は使えないんだな」


「魔法を使うには、えーと……魔法適正だっけか?

 そんな感じの能力がないと使えないんだよ。


 学校に入学する時に調べたんだけどな、私にはそれがなかった」


 肩を竦めてディーノは言った。


「そうなのか」


「そもそも魔力なんて誰でも………」


 あ、と何かに気が付いたように呟いた。

 うん、魔力ないからな。


「俺の世界だと魔法自体が本の中だ」


「お前の世界がどんな風なのか、すっげぇ気になる」


「鉄の箱が空を飛んで、地を走る、そんな世界だ」


「なんだそりゃ?」


 からかわれたと思ったのか、呆れと微笑がない交ぜになった面持ちで言った。

 その反応に小歳は小さく小さく笑う。


「にしても、遠まわしにディスられてる気がするんだよな」


「ああ、多芸貧才か……」


 これ器用貧乏の言い回しを変えた、というか、オブラートに包んだだけだよな。

 そんなことを考えながらずずっと茶を啜る。









 こうして夜は静かに更けていく。

 例え異分子を含もうと、世界の巡りは変わらないと言うように。











6/23:抜けてた部分の修正。

+《防具習熟/盾:1(6)》

 盾の習熟を示すスキル。小・中装備に適応。


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