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Trick or Sweet 〜トリック・オア・スイート〜  作者: かがみ透
第三夜 『トレジャー・ハンター』
11/16

相棒

 丸い月が照らす静かな海上を、一艘のボートが、静かに進んでいく。

 波は静かに、やがて、引いていった。


 ボートの上から見ていた男は、驚愕し、思わず立ち上がっていた。

 見たことのない小島が、浮いているように見えるのである。


 男は、ボートを小島の岸に寄せ、降り立った。

 小島自体が小さな山であるようで、浜からゆるやかな起伏があり、人が通れるほどの洞穴が見える。


 穴の奥へ進むと、潮風が通り過ぎていった。トンネルのように、筒抜けであることがわかる。


 さらに進むと、子供が入れそうな大きさの、頑丈そうな箱が、無造作に置いてあった。


 男は、すぐに、それが宝箱だと気が付いた。

 カギを開けることは、彼には簡単だった。

 中には、宝飾品などの財宝が入っていた。


「本当だよ、ここんとこ観察してたら、一月に二回、海の水が引く時があるんだ。それを、干潮って言うんだが、その時、地図でいうと、だいたいこの辺りに、小さい島があったんだ。そこの洞穴に、お宝があったんだよ!」


 ユウの酒場では、開店前に、アッカスが訪れていた。珍しく興奮した言い方で、ポケットの中から、財宝の一部を取り出した。


「昨日は、満月から三日後だった。最初は、いつものように、洞穴内の苔と石を調べようと、採取してたんだ。そうしたら、見たことのない箱があった。その箱には、紋章らしいものはなかった。


 おそらく、あれは、つい最近、海賊が隠したんだと思う。貴族が持つような貴金属類が、ほとんどで、男性物、女性物、両方あったし、この近隣のものや、北方と思われるデザインのものもあった」


「よし! 一緒にそこに行こうぜ!」


 何の疑いもなく、そう言ったのは、カイルであった。


「カイル、俺の話を、信じてくれるのか!」

「ああ、信じるぜ!」


 そこには、カイルとアッカス、そして、バーの主人ユウのみがいた。

 南の海域では、財宝を見つけた場合の決まりは特になく、手にした者の物としてしまうことが多かった。そのため、海賊が出現することもあった。


「次の干潮は、新月の時だ」


「新月じゃあ、真っ暗だろ? 海は危険だぜ。満月まで待ったらどうだ?」


 カイルが顔をしかめる。

 アッカスは、わかっているとばかりに笑った。


「だからこそ、だ。例えば、あそこに宝を隠したのが海賊だとすれば、海が危険だと良く知る海賊は、新月の晩は大人しくしてるはず。宝は、満月の干潮時に取りに行くだろう。その前に、新月のうちに行動すれば、海賊より先に、お宝をいただけるってわけだ」


「なるほど。海賊をあざむくには、それがいいだろうな」


「だからといって、新月の海を甘く見ちゃいけない。いろいろ準備が必要だ」


 アッカスの目は輝いていた。

 次の干潮時までの間、カイルは、ユウのところに来る用心棒や傭兵の仕事を、ちょこちょこと引き受け、その合間に、アッカスの家に顔を出していた。


 アッカスは、家の裏の畑で、ポケポケ芋や、珍しい木、植物を育てていた。以前、カイルにも見せた天然の重曹と、自作の肥料を与え、木には、色鮮やかな実がなっていた。


「父さんが冒険家というか探検家というか。小さい頃から、いろんなところに連れていかれて、この木も、その時の土産で、最初は細い苗木だったけど、今では、こんなに実をつける立派な木になったんだ」


 アッカスは、木の枝を、大事そうになでた。ポケポケ芋や、この実を付けた木を始め、育てている植物に、水をやりながら、よく話しかけていた。


 人でもないのに、話しかけるのか? 言葉なんかわからないだろうに、とカイルが言うと、「こうした方が、芋は大きくなるし、実は甘みが増したんだ」と、彼は笑って答えたのだった。


 収穫したポケポケ芋を、アッカスは、細長く切ったものと、薄く切ったものに分けていた。カイルが皮をむこうとすると、「皮はむかない方が、美味いよ」とアッカスが止めた。


 カイルは、細長く切るのは手伝ったが、薄く切るのは難しかったので、アッカスにまかせた。


「で、アッカス、父さんは、どうしたんだ? お前、ずっとひとりで暮らしてるのか?」


 アッカスは、にっこり笑った。


「今、両親は、世界旅行に行ってるんだ」


「世界旅行!?」


 カイルは驚いた。


「はあ~、お前んち、金持ちだったのか」


「いや、ごく一般的な平民の家庭さ」


「じゃあ、なんで、世界旅行なんか出来んだよ?」


「俺が、ギャンブルで当てたんだ」


 またまたカイルは、驚いて、アッカスのあどけない笑顔を、見つめた。


「ライミアには、世界でも指折りの賭博場があるんだ」


 カイルも、そう聞いたことがあったが、行ったことはない。


「俺も、そんなに行ったことはなかったんだが、ある時、ウマのレースで当てたんだ」


「ど、どんなふうに?」


 アッカスは、得意気な笑顔になった。


「競馬は、見たことはあったが、実際、賭けてもたいして儲かったことはなかった。その日のレースでは、事前調査で、俺は、いつもトップの方を走るウマたちが、どうも不調らしいのがわかった。毛並みが悪かったり、蹄鉄(ていてつ)が傷んでるのに、取り替えられてなかったり、俺でさえ気付いたくらいだった。俺が見たところ、その時、一番調子が良さそうな、十五番のウマに賭けることにした。よく見ると、それは、いつもビリを走っていたウマだった」


 芋を切り終わると、細長いものは、網の上に天日干しにし、薄く切った分は、アッカスが、油で揚げていた。


「そのレースで、悲劇が起きた。俺にとっては、奇跡だったが。いつもほぼトップを走る一番のウマは、腹をこわして棄権(きけん)し、二番手、三番手のウマがトップを争っていた。そうしたら、二番手のウマの蹄鉄が外れ、暴れ出し、三番手のウマは、よけようとしてコケた。近くを走っていた他のウマたちも巻きこまれ、次々に倒れていった。そんな中で、十五番のウマだけは、最下位で離れていたために、巻き添えを食うことなく、無事一位でゴール出来たんだ」


「そ、それって、……大穴じゃねえか!」


「そうなんだ」


 アッカスは笑った。


「じゃ、じゃあ、その金は……!」


「ああ、その金で、両親に世界旅行をプレゼントしたんだ」


「なにーっ!?」


 カイルは、思わず、立ち上がった。


「おっ、お前、それ、自分で使わずに……親にプレゼントしたのか!?」


「まあ、研究資金とか、冒険資金に、ちょっとばかし取っておいたけどな」


「ちょっとばかしだけ!? なんで、お前、そんな大金を、親なんかに……!?」


「勉強しろ、勉強しろ、あんまりうるさいからさ。俺が欲しかったのは自由! そのために、どうしても、ギャンブルで大金を当てたかった! 親は世界旅行で、当分帰って来ない。これで、やっと好きな研究が出来るんだぜ!」


 後悔などまったくしていないとばかりに、アッカスは、晴れやかな笑顔だ。

 カイルは、そんなアッカスを、信じられない思いで、穴の開くほど見つめていた。


「だが、アッカス、俺からみれば、お前のやってるポケポケ芋の調理法だとか、重曹から研磨剤とか洗剤を作るとか、海の干潮時を調べるとか、それも、勉強に思えるぜ?」


「それは、親の言う勉強とは、違うんだよ。文字の読み書きとか、計算とか。それも、嫌いじゃないんだけど、違うことがやりたくてさ。俺は、もっと、自然のことに興味があって、例えば、月の満ち欠けなんか。


 あと、これ磁石っていうんだけど、普通の石の中にも、こうやって、くっついたり、反発し合ったりするものもあるんだぜ。これで、コンパスっていう羅針盤を作って、父親は必ず旅に持っていってた。あの浮き島にも、俺の自作のコンパスで行ったんだぜ。そういう道具とかも、もっと考えたくてさ」


 アッカスの持つ道具には、カイルは、いつも不思議な思いがし、感心させられていた。




 半月後、カイルがアッカスとボートに乗り込み、小島を目指す日の夕方だった。


「袋は、このくらいで足りるか?」


 カイルの持って来たのは、宝を入れる用の皮袋が五枚ほど。それと、パンや干した肉など、ちょっとした食料だった。


「ああ、そのくらいで充分だろう」


 アッカスの荷物の袋には、自作のコンパスを始め、干した芋や肉、日持ちのする豆、乾燥させた果物、ロープや、護身用短剣、そして、小瓶がいくつかあった。カイルの用意したものよりも小さい皮袋もいくつかある。


「敵や魔物もいるかも知れないからな。最低でも、このくらいはないと」


「おい、武器がないじゃないか。その短剣だって、護身用だろ?」


「ああ、でも、いざとなったら、大丈夫。用心棒にカイルがいるし、これでも、危ない場面は、なんとか切り抜けて来られたんだぜ」


 アッカスが、のほほんと笑っているのを見て、カイルは、少し心配だった。


 日が落ちる頃、二人は、出発した。


「追い風だ。順調だな。この調子なら、予定通り、干潮時間に間に合うだろう」


 オールを漕ぐ手を止め、指に海水をつけ、風向きを調べたアッカスは、自作の星読み盤でも方向を確認してから、カイルに伝えた。

 カイルは面白そうに、オールをボートの中に入れ、アッカスから星読み盤を受け取り、見方を教わっていた。


 海が、いよいよ暗くなり始めた頃、アッカスが、『月明かり灯』と名付けた筒を持ち、空に向けて、紐を引いた。

 火花が散り、空には、ぽうっとした灯りが浮かぶ。


「これで、二時間は明るいだろう」


「これ、魔法か?」


「ああ、俺の作った仕掛けに、ちょっとユウさんが手を加えてくれたんだ。俺だけで作ったものだと、せいぜい二、三分しか持たないからな」


「でも、すげぇじゃねぇか、アッカス! お前の発明って、全部魔法みてぇだぜ!」


 アッカスは、照れながら笑った。


「俺が父さんから教わったのは、科学ってもんらしい」


「へえ、科学っていうのか。すげえもんなんだな!」


「俺には魔法は使えないけど、この不思議な力を、役に立つことに使えないかって、考えてるんだ。まだまだ魔法には追いつかないけどな」


 月明かり灯の下に浮かぶ、アッカスの照れたような笑顔を、カイルは、尊敬のまなざしで見ていた。


 ふと、水面で、ぴしゃっと、音を立てるものがあった。


「おっ、結構、あちこちで、魚がはねてるな!」


 カイルが目を凝らした。あちこちで、銀色に光るものが、飛び跳ねていた。


「ああ。干潮時には、魚がいっぱいいるからな。……っていうより、海水が少なくなるから、その分、魚が、普段よりも見えやすいんだ」


「釣りにも最適だな!」


「そうだな! だから、満月の夜には、漁をする人も多いんだ。新月に魚釣ろうなんて無謀(むぼう)なことは、誰も思わないけどな」


 釣りたい気持ちは、ぐっと我慢して、カイルとアッカスは、静かにボートを進める。


「カイル、あれだ!」


 アッカスの指さす方向には、水面に反射した月明かり灯が、うっすらと映し出す、ただの黒い山のようなものが見えた。


 カイルの目元が引き締まる。


 ボートが着岸し、必要な道具を持った二人は、ランタンで足元を照らし、静かに洞穴を目指した。


 突然、穏やかだった海から、波が起こった。


「なんだ? 魚にしては、デカいぞ!」


 足を止めたカイルが、魔法剣の柄に、手を伸ばす。


「もうひとつ、月明かり灯を点けよう」


 アッカスが、洞穴の上を狙って、筒の紐を引いた。


 ぼんやりとした灯りが、辺りを照らした途端、巨大な、長い胴体の魔物が、海面に跳ね上がったのだった。


 背ビレと両サイドのヒレは、ドラゴンの翼のように開き、頭の頂上には角が生え、口の両端にも、太くカーブした牙があった。


 着水すると、雨のような水飛沫(みずしぶき)が、降りそそぐ。


「トビウオみたいな魔物!? 新月に現れるって聞いたことがある! 灯りで、俺たちのことが見えてたんだろう」


 アッカスの説明を聞いたカイルが、進み出ると同時に、魔法剣を抜いた。

 それを見たアッカスは、早口で付け加えた。


「待て、カイル! 浄化したら、魔物は消えてしまうんだったな? その前に、あいつの牙と角、できればウロコも採取するんだ。なるべく、牙は根元から削ぎ落としてくれ。牙の部分が多いほど、量売れて儲かるからな!」


「アッカス、お前、抜け目ないな」


 カイルは、ちらっとアッカスを見て、にやっと笑った。


「俺の言いたいことは以上だ。危ないから、気をつけてくれ!」


「ああ、まかせろ!」


 トビウオがもう一度、飛び上がると、二人のいる島の岸辺に、舞い降りた。


「こいつ、陸でも息が出来るのか!?」


 アッカスが岩の後ろで、身を潜めながら、大きく呟いた。


 魔法剣を両手に構えたカイルは、精神を集中させた。


「プラチナ・ストーム!」


 魔法剣からは、白銀の風のようなものが勢いよく発射された。


「ええっ!? 浄化しちゃうの!?」


 アッカスが慌てて、身を乗り出す。


「大丈夫だ!」


 カイルは答えると、銀色の霊気がトビウオの片方の翼を斬り落とし、消滅させた。


「飛ばれたら厄介だからな、威力を抑えて、翼だけを狙ったんだ」


「なるほど!」


 カイルが、もう片方の翼も消すと、暴れて身体をくねらせていたトビウオは、ずしん! と地響きとともに、横たわった。


 すかさず、魔法剣を横に持ち直したカイルは、魔物の長い胴体を、走りながら、一直線に(さば)いていった。


 どす黒い緑色の液体を吹き出させ、どろっと、濃い緑色をした浮き(ぶくろ)や、内蔵がこぼれ出た。

 魔物の胴体は、けいれんし、やがて、動かなくなった。


「いやぁ、すげぇな! さすがカイル!」


 不気味さと、魚臭さを通り越したひどい悪臭に顔をしかめながら、アッカスが、岩陰からやってきた。


 カイルは、満足そうに微笑むと、魚の口元の牙を、剣で、叩くように切って、落とした。


 アッカスは、碧く銀色に輝くウロコを、短剣で、丁寧にはがしていく。


「そんなの、何に使うんだ?」


 もう片方の牙を叩きながら、カイルが尋ねた。


「これは、防具の素材に使えるんだ。鎧の一部分だったり、もっと安くて手に入りやすい防具の一部になったりもする。主に、海の男たちの防具や、短剣の持ち手の飾りとか、貝細工みたいに、アクセサリーの素材にもなったりするから、材料屋たちには、重宝されてるんだ。特に、このウロコは、色が綺麗だから、高く売れそうだぜ!」


 アッカスは、カイルに答えながら、てのひらほどもあるウロコの一枚を、灯りに照らして、カイルに見せた。


「へぇー、言われてみりゃあ、きれいなモンだな!」


 カイルも感心した。


「とにかく、こんな大物、見たことなかったぜ。カイルがいてくれて、助かった! 俺だけだったら、手に負えなかっただろう。新月の晩は、得体の知れないものが活動してるっていう、港の(うわさ)は、本当だったな!」


 アッカスは、巻き紙と、木炭を細く削ったものを取り出すと、トビウオの魔物の絵を、ざっと描き出した。カイルが切り取ってしまった翼や牙の位置などは、記憶に頼るしかなかったが。


 芸術的な絵というよりは、細部まで描き込まれた観察画といった方が合っている。


「へえー、うまいもんだな!」


 のぞきこんだカイルが、ますます感心した。


 二人は、魔物の角と牙、ウロコを取ると、持って来た皮袋に詰めて、ボートに乗せた。

 それから、別の袋や、小瓶などを持つと、洞穴の中へと、入っていった。


「これでやっと、財宝にありつける!」

「な!」


 嬉しそうに笑う二人は、海水でぬめっている岩肌を、ランタンで照らしながら、慎重に進んでいった。


 財宝の詰まった宝箱を見つけると、アッカスの提案で、箱は残しておき、中身の宝だけを、皮袋やビンに詰め込んだ。入り切らない分は、箱の中に残しておくことにした。


 何事もなく、往復して宝をボートに積み、何度目か洞穴から出た時、彼らのボートとは違う方向から、ランタンを持った男たちが、やってきた。


「今日は新月のはずなのに、なぜ月が出てるのか、おかしいと思って来てみれば、まさか、こんなことになってるとは……!」


 暗がりの中、カイルは、さっと見通した。

 男たちは、十五、六人ほどと思われた。


「てめえら、盗賊のお宝を盗むとは、いい度胸してるぜ!」


 ランタンにおぼろげに映った男たちは、人相の悪い、大柄な者ばかりであり、見るからに村人とは違う、いかにも盗賊らしい男たちであった。


「おまえら、盗賊か?」


 カイルが、()いた。


「ああ、そうだ。小僧ども、はやく、盗んだものを返せ」

「素直に返せしさえすりゃ、殺さないでやってもいい」

「ただし、明日の朝には、黙って海を泳いでるかも知れねえがな、永遠に!」


 盗賊たちは、笑い出した。


「お前たちの宝とは、思えないな」


 アッカスが言うと、カイルは目だけ横に向け、彼の横顔を見た。


「そりゃ、どういう意味でぃ!」


 盗賊のひとりが、目を光らせて、アッカスを見た。


「この宝は、どう見ても、海を渡らなきゃ手に入らない物が多かったぜ。北の物も南の物もあった。この近海の物から異国の物からまであった。……ってことは、お前たち、この近隣に住む盗賊のじゃなく、いかにも海賊のお宝って気がするが、違うか?」


「……ってことは、お前ら、海賊の宝を横取りしようとして、見張ってたんだな?」


 カイルが続いた。


「お前たちの宝じゃないんなら、先に手にした俺たちのもんだ」


 アッカスが真面目な顔でそう言うと、盗賊たちは、ゲラゲラと笑い出した。


「小僧、正気か? たった二人で、俺たちにかなうとでも、思ってんのか?」


「宝探しごっこは、もうやめて、おうちに帰んな」


「トレジャー・ハンター気取りも、そこまでだ!」


 盗賊たちの目は、笑いながら、残忍な色を浮かべていく。


 宝の入った袋を地面に置くと、カイルは、剣を引き抜いた。


「ほう、ずいぶんご立派な剣じゃねぇか。それも、盗品か?」


「これは、正真正銘、前から、俺の所有物だぜ」


 答えたカイルに、盗賊は笑い声を上げた。


「その豪華な細工は、異国のもんだな? 安心しろ、俺たちがもらってやるからよ」


「持ち主は、どうせ、いなくなるんだからよ!」


 斧や鎌、剣を手にした盗賊たちは、一斉に、カイルとアッカス目がけて、走り出した!


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