地球人観察2
満点の星空。
円盤型の飛行体が一機、夜空を浮遊している。
「今回は『正義の味方』の調査ですね」
「うむ。さっそく仕事に取り掛かろう」
二体の生物はツルリとした青い三頭身の体型に真っ黒な目、頭には一本の触手のようなものが着いている。
彼等はほかの星から来た調査団。
地球に生息する知的生命体の調査にやってきた。
某県某所。
リビングで兄弟がTVに食い入る。今日は毎週欠かさないヒーロー番組だ。
TVの中では巨大な怪獣がビルを破壊している。
人間の兵器じゃ太刀打ち出来ない。
そこへヒーロー登場。
ヒーローが怪獣に挑む。
互角の戦い。時間の関係上そろそろ必殺技が出る頃だ。
画面が派手に点滅する。必殺技炸裂。
兄弟はリビングで大興奮。
怪獣を倒しヒーローは空へ飛んで行った。
「正義の味方とは結局なんですかね?」
「……」
「あの怪獣とやらは、そもそも人間に悪いことをしてる自覚があったのでしょうか?」
「……」
「怪獣は人間とコミュニケーションすら取れていなかったようですが」
「……」
「案外仲良くしようとしただけってこともあるのでは?」
「……」
「もしくは怪獣もいきなり文明の違う場所に来て慌てただけかも?」
「……」
「まだ意思の疎通も取れてない相手を、有無を言わさず殺してしまう『正義の味方』とは何でしょう?」
「分からん。もしかしたら『正義の味方』とは人間にとってのみ都合が良い、ということではないか?」
「なるほど。自分たちの文明にそぐわない者は敵ということですか……危険ですね」
「うむ。引き続き調査を続けよう」
円盤型の飛行体は飛び去っていった……