杉の子
良いタイトルが思いつかなかったのでこれにしました。
どうせ初手オチみたいなものですし良いかなと。
「いってらっしゃーい!」
「行ってきまーす!」
大きく体を揺らし見送られた僕達は、ふわりと風に身を任せ、空を飛ぶ。
周りを見ると皆、どこへ辿り着くのかと期待で胸いっぱいの様子。まぁそう言う僕だって同じなんだけどね。
広い広い青空を背に、地上を眺めてみれば大きな川が流れてて、あそこに落ちればひとたまりもないぞと仲間達と笑った。
「今日は風が全然止みそうにないな」
「そうだね、僕達の番にこんな良い天気。僕達かなりツイてるんじゃない?」
するとそう言ったのが悪かったのだろうか。今まで穏やかだった風が突然ーーびゅう! と強く吹いた。
「嘘だろ! 助けてくれぇ!」
あぁ、なんてことだ。仲間が川の方へ飛んでいってしまった。ほんのついさっきまで一緒に笑い合っていたのに。
僕はそれを見ているしか出来なかった。
それなのに……最後に一言、自分の分まで生きろと言ってくれた。
それから僕の命は2つ分になった。
最初は大勢居た他の仲間も、いつの間にか色々な方向へ飛んでいってるのが見える。このまま離れてしまうのだろうか?
ーー風よ吹け、僕をもっと遠くまで連れて行ってくれ。
ふわり、ふわり。時にはびゅうと、それでもなかなか目的地は見つからない。
そんな僕の心を写したのかポトリと何かが降ってきた。
ーー雨だ……!
1人、まだ1人と雨粒が皆を撃ち落としていく。僕は必死に風に願うけれど……
「ぐはぁっ!」
一回り大きな雨粒に体を打たれ、地に落とされた。
地面は何故だか、ものすごく固く、灰の色をしていた。僕はそこにポツリと存在して、独りぼっちだった。
あぁ、僕も途中で見かけた花のように綺麗になりたかったな。僕はもうびしょ濡れで、相方を探す事も出来やしない。
そうやって悲観していると……不意に、声を掛けられた。
よくよく周りを見てみれば、小さな花がこんな固い地面の上に咲いていた。
「ねぇ、貴方は誰を探しているの?」
「分からない、分からないけど相方さ、みんな大人になるために探してるの」
「へぇ、じゃあどうしてこんな所で休んでいるの?」
「だって、雨に濡れて飛べなくなっちゃったから」
多分、僕はもうこのまま死ぬんだろう。そう思ってたのに、綺麗な花の子はーー
「? 乾かせば良いじゃない。 乾けばまた飛べるのでしょう? 晴れるのを待てば良いのに、どうしてそんな事で諦めてるの」
それはもう、至極当然とでも言うように不思議な声で言ってきた。
そうか、晴れればまた飛べるのか。そんな事すら思い出せなかった僕はまだまだ子供なのだろう。
花の子にお礼を言って僕は晴れを待った。
ーーそれからどれだけ時間が経っただろうか?
カンカンに晴れた良い天気。風も良く吹いている。きっとこの風が僕をまた空へ飛ばしてくれるだろう。
「それじゃあありがとうございました」
「気にすることでも無いのに。行ってらっしゃい」
ふわっと風が僕の体を持ち上げたと思うと、そのまま宙に舞い上がる。
空を見ればまた青空がーーどういう事だろう。真っ暗だ、さっきまで凄く明るかったと言うのに。
風もなんだか右に左に、不安定な動きをしている。あ、あれ?なんだか急に……
「ハックシュン!」
こんな事があったとしても……正直、花粉を許す事は出来ませんよね。




