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痴漢をされてます。触っているのは手だとばかり思っていたのですが。

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/07

満員電車の中で感じる、得体の知れない違和感。

私の太ももを撫で回しているのは、本当に「人間」の手なのでしょうか――?

※短時間で読めるショートホラーです。

 私は今 友人にメールを送っています。私は痴漢をされているのです。触さわっているの手だとばかり思っていたのですが……。

 太ももを撫で回すその感覚は、少しずつ上へと這い上がってきます。満員電車の密着した闇の中で、私は必死にスマホの画面をタップしていました。

『助けて。隣の男に触られてる。次の駅で降りるから一緒に降りて』

心臓が早鐘のように打ち鳴らされる中、送信ボタンを押します。

すると直後、太ももを這う「手」の動きがぴたりと止まりました。そして、私のコートのポケットの中で、送信したばかりの私のスマホが、別の振動を感知して短く鳴ったのです。

ゾッとしてポケットの中に手を突っ込むと、そこには画面の明るいスマホがありました。画面には、たった今私が送ったメッセージが表示されています。

じゃあ、私の太ももを撫でまわしているこのヌメりとした長くて冷たいものは……?

振り返ろうとした瞬間、首筋に冷たい吐息が吹きかけられ、耳元でねっとりとした声が囁きました。

「メール、届いたよ」

私の隣には、誰も立っていませんでした。

ご一読いただき、誠にありがとうございました。

本作は、日常生活に潜む身近な恐怖が、いつの間にか人知を超えた不気味な存在へとすり替わっていく絶望感を描いたショートホラーです。

誰もいないはずの隣から聴こえる囁きと、触れられた肌の冷たさ——読み終えたあと、いつもの通勤電車や暗闇の中でふと背後が気になってしまうような余韻を感じていただけたなら幸いです。

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