第五話 決意
「…………」
ジュリアを魔王国へと送り出し、臣下たちも無事である。残る問題は俺自身だ。
何せビュレット公爵は隙あらば、俺に傀儡の魔法をかけようとしている。その為、俺は唯一使える結界魔法を自室以外で使用しているのだ。
このブルーリナ王国を支配するには、自身の言いなりにある王が必要である。その候補が俺だ。現国王を傀儡にする手もあるが、新体制をとるには新国王を立てる方が自然である。その様な理由があり、ビュレット公爵は俺に魔法をかけようと画策しているのだ。現にジュリアの訃報や両親の件について話題にしていた。それは俺の動揺を誘い、結界魔法が揺らぐのを期待しているからだ。
ジュリアがアレンと婚約や結婚をしても、幸せになれないのはこれも原因である。婚約や結婚までは幸せでも、その後アレンの態度が豹変するのだ。同僚から聞いた際には、本当の性格が悪いからではないかと思っていた。しかしビュレット公爵の策略だったのだと、今になれば分かる。
聖女ジュリアの存在が邪魔なビュレット公爵が、アレンを操り排除するというルートもあると聞いた。大変趣味の悪いことだ。
「出会ってから……13年か……」
不意にジュリアと出会ってからの日々を思い返す。俺とジュリアは幼い頃の付き合いである。
ジュリアの身分は平民だが、幼い頃に聖女の力に目覚めた。その知らせを受け聖女を守る為、ジュリアは5歳で親元から離されて王城へと連れてこられたのだ。前世の記憶がある俺とは違い、彼女は寂しがると予想していた。
しかし自分に、できることがあるならと気丈に振る舞っていた。明るく優しい性格で、前世の記憶がある俺が逆に励まされたことの方が多い。何よりも王子である俺に抵抗なく、接してくれて嬉しかったのだ。そして俺が危険な目に遭った時は、危険を顧みず助けてくれた。
そして彼女はずっと、その力を国の為に尽力してくれていたのだ。
彼女には幸せになる権利がある。
「まあ、私にできることをするしかないな……」
俺はベッドから立ち上がると、服装を正す。
ジュリアが魔王と共に、ブルーリナ王国に戻ってくるのは三年後である。それまで、一秒でも長く魔族との戦争を遅らせることが、俺にできる最低限のことだ。ビュレット公爵が何処まで本腰を入れてくるかは分からない。だが俺の意思が変わることはないのだ。
ゲーム内の操られたアレンに、自我が残っていたかは分からない。魔王と共に居るジュリアの姿を見たい気持はあるが、その際には俺の意識があるかは予想できないのだ。意識があっても、彼女の前で醜態を晒すなど耐えられない。
同僚の話によれば、魔王と共にジュリアが幸せになるルートでアレン王太子は亡くなるようだ。ビュレット公爵が倒されるのだ。その争いに巻き込まれてもおかしくはない。更に言えばジュリアを魔王国に送り出し、ジェームズたちの裏切りで危険にも遭わせた。魔王との恋にも、俺は不要だろう。
バッドエンドでも、彼女が幸せになるのならば喜んで受け入れる。




