第四話 独白②
「……はぁ……」
俺の秘密の計画は順調だが、ビュレット公爵は目敏い。自室でも発言には気を付けなくてはならいのだ。意図的にため息を吐き、ジュリアの訃報に落ち込んでいる風を装う。
心配することはない。ジュリアは無事である。そして彼女がジェームズたちに裏切られ、魔王国に置き去りにされるのはシナリオ通りだ。
ゲームの中では、宰相の命令で聖女ジュリアは魔族の領地にて裏切られる。心身ともに傷付き、疲弊したジュリアの目の前に魔王が現れるのだ。それから、ジュリアの優しさに触れた魔王は心を開き、人間との和平へと動き出す。そしてブルーリナ王国と乗り込み、宰相たちを倒すのだ。最終的にはジュリアと魔王が結婚することにより、和平とジュリアの幸せエンドを迎えることができる。
因みに、ジェームズ騎士団長やパルスとリンジーも裏切り者だ。ジェームズは元々騎士団長ではない。信頼の厚いルーク騎士団長を任務の事故と見せかけて、崖から突き落としたのだ。パルスやリンジーも地位と金の為に、上司や同僚を罠にかけている。
「…………」
本来ならば、その様なメンバーとジュリアを同行させるのは気が引けた。だが、魔王国に彼女を怪しまれずに送り出すのにはこの手しかなかったのだ。
ジュリアには、俺が唯一使える魔法を掛けたお守りを渡してある。ジェームズたちの攻撃は彼女を傷付けていない筈だ。
勿論、ジェームズたちに嵌められた上司や同僚たちにもお守りを渡してある。彼らも無事だろう。和平が成立した暁には、ジュリアの為にも尽力してもらいたい。優秀で貴重な人材たちである。
「はぁ……どうするかな……」
俺は仰向けになりながら、窓の外を見上げる。
青空には初代国王が施した結界魔法が浮かぶ。ジュリアを魔王国に送り出すことができたことで、俺の役目は終わっている。後は、魔王と共にジュリアが乗り込んでくるのを待つだけだ。
両親に魔法を掛けられるのを見過ごしたのは理由がある。宰相がこの国を牛耳る為に、両親に魔法を掛けることは事前に知っていた。他の人と同じように、お守りを渡せば防ぐことはできただろう。
しかし俺はそれを選択しなかった。それは両親の安全の為である。ビュレット公爵はこの国を支配したいが、この国の結界魔法は惜しいのだ。領土を大きく覆う結界魔法はこの国の要である。結界魔法の秘密は代々、国王だけが知ることを許されているのだ。
その為、両親の命が危険に晒される確率は低いが、正義感溢れる両親である。ビュレット公爵に反抗するだろう。悪人に結界魔法の技術を渡すようなことはしない筈だ。両親が危険を回避する為に、俺は敢えて眠らされることを見逃したのだ。全てが終われば、ジュリアが聖女の力を使い眠りから覚ませてくれる筈である。
だが、その時に俺が俺自身で居られるかは分からない。




