第三話 独白①
「…………」
俺は自室に戻ると、部屋に誰も居ないことを確認すると鍵を掛けた。そして、俺自身にかけていた魔法を解くとベッドに倒れ込む。それらの行い俺は漸く、張り詰めていた緊張を解く。
「……はぁぁ……」
長いため息を付く。
最近の習慣になっているが、監視される環境に身を置くのは慣れないものである。俺の名前はアレン・ブルーリナ。このブルーリナ王国の王太子だ。だが、その中身は、前世の記憶がある一般人である。サラリーマンとして働き自宅で寝た記憶を最後に、俺はこの世界に転生していた。
この世界は、前世で同僚が熱弁していた恋愛ゲームの世界だ。聖女ジュリアである主人公が様々なルートを選びエンディングを迎える。しかし聖女ジュリアが迎えるのは、その殆どがバッドエンドだ。命を賭して魔族と人間の和平の架け橋となったり、魔族との和平を望まない者に命を狙われたりと何かと物騒である。
本当に恋愛ゲームなのか疑いたくなるが、同僚の話によればそれが逆に良いそうだ。主人公であるジュリアを幸せにするルートを探すのが、逆に意欲を駆り立てるらしい。そのような世界に俺はアレンとして転生した。
アレンは王太子であり、ジュリアと婚約したり結婚したりするリートがある。だが、アレンと結ばれるルートを選択すると、ジュリアが幸せになることはない。だから俺のやることは一つだ。
超高難易度であり、聖女ジュリアの幸せルートを全力で支援することである。この聖女ジュリアの幸せルートは唯一、聖女が幸せな結婚と魔族と人間の和平を成立させることができるルートだ。完全パッピーエンドルートである。ゲームをやり込んだ同僚から、聞くことができた唯一のルートだ。
「まさか……こうなるとは……」
今日告げられた報告を受け、俺は独り言を呟く。
万が一監視されていても、怪しまれないように気持ちとは逆の発言をする。魔族との和平として、聖女ジュリアたちを送り出したのは幸せルートの為だ。順調に幸せルートを進んでいるようで安心する。同僚の話だけでは分からなかったが、王太子の立場になると色々と分かることがあった。
ジュリアが幸せになるルートは、このブルーリナ王国には存在しない。
それは宰相であるビュレット公爵が暗躍しているからだ。上辺では聖女であるジュリアを持ち上げているが、実際には聖女という存在を邪魔だと感じている。その為、大抵のルートでは不慮の事故を装ったり、刺客を送り込んだりしてジュリアを排除していたのだ。
それからビュレット公爵は宰相という立場で満足していない。自身で国を支配したいのだ。その為、魔族との戦争を進言する裏では魔族と協定を結んでいる。裏切り者だ。
俺の両親である国王と王妃は、宰相の用意した魔法により眠っているのだ。それを魔族の仕業だと騒ぎ立ている。戦争を起こす理由と、俺をコントロールするのに両親の状態は最良だ。
だが、俺は同僚から宰相は怪しいと言われていた。その助言により宰相を信じることもなく、ジュリアを和平の使者と送り出すことができたのだ。
加えて、ジュリアを幸せにできるのは魔王だけである。




