2-6.
Sな王子が垣間見えます。
先生方が走ってきて状況説明を始める王子。
私と王子は先生に呼ばれてついていくことになった。
他のグループのメンバーは、先に戻って夕食を作ってくれるみたいだ。
助かる。
先生たちも、合宿の地で魔物が出た理由はわからないようだった。
合宿は引き続き行うが、魔法解除され、もし何かあれば魔法で戦えるように。
そして、みんなが寝泊まりする場所は保護シールドを何重にも張ることになった。
先生は一息ついてから、ゆっくりと口を開いた。
「ソランティア殿下。まずはよくやってくれた。被害が出なかったのは、君の判断力と技術あってこそだ。」
淡々とした声なのに、言葉には確かな敬意がにじんでいた。
「だが、君は騎士団所属とはいえ、まだ学生の身。あの場では、まず教師に助けを求めるべきだったぞ。」
「……なるほど。君は騎士団に所属しているから、魔物の特徴が見抜けたのだな。納得だ。」
「えっ? 騎士団……?」
わたしの質問に、先生は驚きもせず頷いた。
「知らなかったのかね? ソランティア殿下は、最年少で騎士団に入団した逸材だよ。今や次期隊長候補とまで言われている。」
情報が一気に入りすぎて、わたしの思考が止まる。
騎士団? 最年少?次期隊長?
王子って、そんなにすごかったの?
「それにしても、記憶魔法で戦いの様子を見させてもらったが――実に見事だった。」
先生方の言葉が続く。
「三体の魔物を相手にしながら、魔物に攻撃が当たらないように周囲に保護シールドを張っていた。しかも、マミーナ君にはエリア治癒魔法まで施していたようだな。」
「え……?」
わたしは、思わず王子を見た。
エリア治癒魔法? あの戦いの最中に?
確かに、私は全然疲れなかった。
むしろ力が湧いてきた感じさえした。
それって、あのとき――。
「マミーナ君への指示も的確だった。無理に守ろうとはせず、能力を見て判断していた。あれは、実戦経験がなければできない判断だよ。まさに、将来の騎士団隊長の姿を見た思いだったよ。」
エリア治癒、圧倒的な指揮力……。
この一連の戦いで、わたしは王子の“本当の実力”を見せつけられた気がした。
「ところでマミーナ君。君はどうして剣をもって合宿に参加したのかな?」
先生はくるっとわたしのほうへ顔を向け、穏やかに尋ねた。
「わたしは将来、騎士団で働くのが夢です。いつも鍛錬をしていますし、剣はいつも持ち歩いていて、合宿に持ってくることは当たり前すぎて、剣を持ってこないという選択肢を考えていませんでした。」
ほっほっほっと柔らかな笑い声が響く。
「おお、なんとたくましい魔女さんだ。しかも、珍しい黒魔法の使い手ではないか。
黒魔法の使い手は、将来みんな騎士団に入ることが決まっている。しかも、今の時点で剣の才能が開花している。将来が楽しみじゃな。
今回はソランティア君と一緒だったから良かったものの、これからはまずは助けを呼ぶんだぞ。わかったな」
怒られると思っていたけれど、注意だけで終わってほっとする。
しかも、ちょっと褒められた?と内心喜んでいたら
「君は対人戦は慣れているようだけど、対魔物はまだまだだね。隙だらけだったよ。君、攻撃しか見えてなかったろ? …ま、最初はそんなもんだけどね。」
急にわたしをにらみながら、毒舌モードの王子が現れた。
さっきの電車の上ではやわらかい笑みを浮かべていたのに、打って変わってこの姿…
本当に同じ人物なの?
「確かに、攻撃で一杯一杯になっていたかも」
毒舌王子の言うことも一理あるなと思い、肯定する。
「僕が見えているところで戦うのが安全だから、僕のそばで一緒に戦い方を学べばいい」
戦いはもうするな、と言われると予想していたから、王子の提案が意外だった。
私にとっていい提案なのには変わりない。
ここは提案に乗らないと!
「教えてくれるの?下がっててって言ってたのに、一緒に戦っていいの?」
「僕は気づいたよ。君は止めても聞かないってね」
あきれながら言う王子の顔が、ほんとに呆れてて笑える。
今回の討伐で王子がとてもすごい人なのがわかった。
そんな人から学べるのは、わたしとしても吸収できることがたくさんありそうで嬉しい。
わたしのこともわかってる感じだし、わたしのことをこんなに理解してくれる人と戦えるなら、私も安心だわと思い、ここは素直に言う。
「ご指導お願いします」
「わかりました。言っとくけど、僕の指導はスパルタだからね」
ニヤッとしながら睨んでくる王子。
ほーんとにSなんだから、この人は。と私もあきれた。
私たちが部屋を出るときに、教師たちは魔物についての会話を続けていた。
「この魔物、本当に“偶然”ここに現れたのでしょうか……?」
「ふむ。知能の痕跡を感じたか?」
「ええ。何か、目的があって動いていたような――そんな気がしてなりません。」
「僕が見えているところで戦うのが安全だから、僕のそばで一緒に戦い方を学べばいい」
このセリフが好きです。




