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流月記  作者: 吾之去
1/2

別の宇宙から来た訪問者

「ワームホールの読取値安定、時空安定度97.629%、通行許可。」


「天文級“遥かなる無限”号、出発準備完了。」


「今日は西暦4926年の元日であるだけでなく、人類が初めて巨大なワールドバブルへの探査を開始する日でもある。文明の歩みにおいて濃密な一筆を刻むであろう。連邦は諸君を忘れない。」


「エンジン充電開始!」


全長1.2天文単位に及ぶ巨艦が、ゆっくりと前方のワームホールへと向かう。連邦首相は演壇に立ち、直立不動で敬礼した── 


「ワームホール貫通、カウントダウン!」


5


推進装置がまばゆい青い光を放ち、艦体の周囲の空間が膨大なエネルギーにより微かに歪む。


4


壮麗な宇宙が、億万年前の輝く星光をもって旅人に敬意を表し、時間の大河の彼方から文明に祝福を贈る。


3


連邦市民は手元の作業を中断し、旅立つ者たちに最大の敬意と祝福を捧げる。


2


量子コンピュータが最終軌道計算を完了し、艦船制御AI“ノア”が主制御を引き継ぎ、ワープバブルを構築。


1


アルクビエレ・エンジン起動。天文単位サイズの戦艦がワームホールへと跳躍し、空間安定装置が歪んだ空間を修復、そこには空間波動だけが残された。


「こちら“遥かなる無限”号。W-1ワールドバブル到達2日目、“䥓”濃度は適正、意識場干渉を試みる。時間の流れは1000:1、不明エネルギー体を複数検知・排除。」


「こちらW-1ワールドバブル到達5日目、“䥓”を意識場干渉によりチタンへ変換成功、力への変換を試行。不明エネルギー体が増加・強化、エネルギーシールドと接触し、FUES-2639区域において原因不明のシールド過負荷を引き起こす。」


「こちらW-1ワールドバブル到達7日目、“䥓”の力への基本変換に成功。不明エネルギー体が初めて第七級兵器によって撃破された37時間後に再出現、強度は1.5倍に増加。攻撃により強化され、“同化”を通じて物質とエネルギーに損傷を与える。他のワールドバブルで発見した際は、攻撃しないこと。」


人々は出航から10分後、次々とメッセージを受信した。ワームホールは正常に機能しており、第二艦の派遣も検討される。


しかし、その後、異変が起きた。


ワームホールが崩壊を始めたのだ。


全力で救出を試みるも、それは閉じられてしまった。


8ヶ月後にワームホールは再び開いたが、そこはかつてのW-1ワールドバブルではなく、太陽系に類似した、“䥓”濃度の高いミニ宇宙だった。そこには、不明エネルギー体は存在しなかった。




「こちら“遥かなる無限”号。W-1ワールドバブル到達43日目。“䥓”の研究を進める。不明エネルギー体の特性を定義:同化、再生、エネルギー吸収。これを“天火てんか”と命名。」


「こちら到達257日目、“天火”は恒星クラスに成長。」


「こちら到達3620日目、第二次元兵器では“天火”を抑制できなくなる。」


「こちら到達4491日目、“天火”のエネルギー反応が天文級主兵器のレベルに達する。」


「こちら到達6303日目、“天火”が高度な脅威となり、ジャンプを実施。目標は720光年彼方のG-947星系。」


「こちら到達6307日目、艦隊がG-947星系へジャンプしてから74時間28分44秒後、“天火”が方位334、1.35天文単位の距離に再出現。FTL(超光速)能力を有している可能性あり。」


「こちら“遥かなる無限”号、W-1ワールドバブル到達……」


「こちらW-1ワールドバブル到達77639日目……」


「こちら“遥かなる無限”号到達……」


「こちら……」


「こちらはW-1ワールドバブル到達526898日目……」


「“遥かなる無限”号到達……」


「こちら……到達……」


「こちらは“遥かなる無限”号到達……」


「こちらは……」


「こちらは“遥かなる無限”号、W-1ワールドバブル到達15928846日目……」


「こちらは“遥かなる無限”号、W-1ワールドバブル到達……」


「こちら……は“遥かなる無限”号、W-1ワールドバブル到達……第27486570日目。我々は誘導AI:ボセ、主制御AI:カッシーニ。抑制装置の成功を確認、配備準備中……」


「もうすぐ、私たちは故郷へ帰れる……」

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