追放
……ついに、この日が来たか。
親父と兄貴から追放される日が……。
兄貴の結婚が決まった日、俺は親父と兄貴に呼び出された。
「ユウマ! 当主の名において——お前をこの家から追放する!」
「そうだ! さっさと出て行け!」
「親父、兄貴……ああ、わかったよ」
俺は振り返ることなく、当主の私室から出て行く。
「さて……どうしたものか」
「お兄ちゃん!」
「ユウマ……」
「母上、エリカ……」
大嫌いな親父と兄貴とは違い、大好きな妹と母上が、俺を心配そうに見つめている。
「ど、どうして?お兄ちゃん、何も悪いことしてないのに……」
「エリカ、泣かないでくれ。お前泣かれると……俺は困ってしまうな」
「グスッ……だってぇ……」
まだ十歳のエリカには、これを理解するのは難しいだろうな……。
「十八歳になり成人を迎えたとはいえ……ごめんなさい、私のせいで……」
「何を言うのですか! 悪いのはあの2人であって、母上とエリカは何も悪くないですよ」
母上はとある事情から、俺が疎まれているのが自分のせいだと思い込んでいる。
「お兄ちゃんは……会えなくなるの?」
「いや、そんなことはないさ。確かに追放はされるが、こっそりと会いに来よう」
「ほんと……?」
「ああ、約束だ。俺が約束を破ったことがあるか?」
「ううん! ないよ! だからお兄ちゃん好きだもん!」
「そうか、俺もエリカが好きだぞ」
「わわっ!? 頭をわしわししないで——!?」
「フフ……ユウマ、辛くなったらいつでも帰ってらっしゃい。夫であるランドと、長男のバルスは、私が何としても説得するわ」
「いえ、それには及びません。母上はあの2人の味方でいてあげてください。でないと、また諍いになるでしょう。特に兄貴は、それが気にくわないようですし……」
母上の、銀色の髪と整った容姿。
そして、元聖女と言われる希少な回復魔法の使い手。
俺は容姿や才能を引き継いでおり、それが気にくわないのだろう。
さらには、剣の家と言われるミストル家において、自分より剣の才能があることも。
「どうしてこうなってしまったのかしら……昔はこんなではなかったのに……」
「母上、顔を上げてください。俺は、貴方の息子として生まれたことを後悔などしていないですし……可愛い妹もいますから」
「えへへ〜」
「ユウマ……いけないわね……息子が成長してるっていうのに……」
「では、そろそろ……うるさいのが来ると面倒ですからね」
「お兄ちゃん、またね……絶対だよ?」
「ああ、もちろんだ」
「ユウマ、当てはあるの?」
「叔父上のところに行こうかと思います」
「保険をかけておいて良かった……」
「えっと……?」
「お、お兄ちゃん、お父さん達が出てきた……!」
「おっと、では失礼します」
俺は何かを言われる前に、屋敷を出ていく。




