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009:ハイラルの街

 ハイラルは丘の街。下れば川へ上れば領主館だ。

 領主館の前は公園になっていて川方面の平原を見渡せる憩いの場になっている。当然、領主館には衛兵が居るので勝手に入ることは出来ない。丘の上だが公園の真ん中には噴水がある。川から水を汲み上げる魔石装置が設置されていて、噴水の他に各家庭に水を送る役目もある。と噴水前の案内には書いてあった。

「すごい装置があるんだな・・・」

「ええ。水を汲むのって大変じゃないですか。大きな街だと装置を使っているみたいです。私の村には無かったので共同井戸から毎日運んでました」

 こういうのを見ると、日本、というか現代社会は発展してたんだなぁと思う。水、電気、ガス、それに交通機関。ここじゃ歩きがメインだしな。

 そんな事を考えながら公園を散歩しているとベンチで睦まじいというか、イチャついているバカップルが多い。日の高い時間からベンチで何してんだか・・・俺はまだしもエリスは俯きながら歩いている。この公園は良くないな。

 噴水まで戻って来た。何つう公園なんだか。噴水周りには露天や屋台が出ている。適当に覗くと胡散臭い男がアクセサリーを売っている。

「兄さん。彼女さんに1つ、どうだい?」

 目ぼしいアクセサリーは無かった。俺の若いころ、日本で高校生になったぐらいだろうか。シルバーアクセサリーが流行っていた。十字とかドクロとかあった。本物は買えなかったから、それっぽいのを着けてたなぁと懐かしく思う。


 そんな露天の近くに、三角帽を被り、テーブルに水晶玉を置いた、俺の感覚では魔女に見える女性がいた。テーブルには『良く当たる占い』と看板が出ていた。俺は占いの類は信用しないのだが、女性は興味があるのかとエリスを見るが、同じようにテーブルを見てキョトンとしていた。この感じは興味がないのだろうと占い師の前を素通りしようとした。

「そこのジャイアントの方。少しお話しを・・・」

 俺が呼ばれた気がしたので占い師の方を見た。

「どうにも気になったので、少し話をさせてもらっても良いでしょうか。お代は結構です」

 壺とか売られるんじゃないだろうか?と俺は警戒しつつ話す。

「俺の事か?何が気になるんだ?」

「こちらへ座っていただけますか。貴方に女難の気配と何か悪いもの、悪霊・・・が付いている気配があります」

「女難に悪霊?」

「はい。高齢の女性、何か、とんでもない事態になりそうな予感がします。それと何か黒いものが見えます」

 俺は、高齢の女性はクロスケの言う魔女のことだろう、黒いものはクロスケを指しているじゃないかと考える。魔女は強くなってからだが、クロスケは悪霊だとしても構わないと思っている。1度死んだ俺を生き返らせてくれたんだし、例え、クロスケが豹変して俺を殺しに来たとしても、俺はクロスケを恨む気はない。

「それは確定している未来だな。それだけか?」

「それだけって・・・大事なことなんですよ。あと・・・貴方は魔法使いを必要としています。私は高位の魔法使いです」

「・・・なんだよ。売らないじゃなくて、売り込みかよ・・・」

「売り込みではありません。貴方の言う確定している未来です」

「あっそ!考えておくよ」

「私は、毎日、ここにいます」


 変な占い師、改め、魔法使いに捕まったなぁと思いつつ、俺たちは夕飯の時間になりそうなので宿に戻った。外で食べても良いのだが、宿の料理を食べて見ないことには宿の良し悪しは分からないと思ったから戻って来た。酒場兼用の宿なので泊っていない客も利用する。今のところ客層は中の上ぐらい。静か過ぎず、五月蠅過ぎずだった。宿お勧めのシチューと肉とパン、サラダ、エールを注文した。先に運ばれてきたエールでエリスと乾杯する。

「お疲れ!」

「お疲れ様です」

 エールはベリカで飲んだのと少し風味が違う。作っている所が違うからか、材料が違うからかは分からないが、このエールも飲みやすい。

「ん。美味い」

「ふふふ」

 暫くして、シチュー、肉、サラダ、パンとテーブルに並ぶ。何となく豪勢に見える。俺はシチューを口にした。

「何だ?この肉?柔らかくて美味めぇな。鳥肉かな?」

「鳥?これはカエルですね。ボンさんが狩りに行くかもしれない沼カエルの肉ですよ。この街の名物みたいです。近くに沼があってそこに生息している大きなカエルです。皮膚に毒腺がありますが、肉は美味しいですね。毒腺は錬金の材料になるので狩りにいった時は確保してくださいね。後で毒用ポーションをお渡ししますね」

「おう?助かる。沼カエル?鳥じゃねぇのか・・・」

「この辺りに居る鳥は、ダットという飛べない鳥だけです。強靭な足での蹴りで怪我するとか。お肉は焼いただけでは硬いので煮込んで食べるそうです」

 ダットねぇ。鳥のくせに蹴りとか、ダチョウみたいな鳥かと俺は想像する。


「あの魔法使いの方を仲間にするんですか?」

「う、う~ん。あの魔法使いもエリスと同じ感じがするんだよなぁ。売り込み方も同じだしなぁ」

「えぇ?私と同じ・・・」

「あぁ。だから仲間にしてもいいかなぁって。俺って近距離だから魔法使いのような遠距離の攻撃ができる仲間がいると楽だなって。こっちに近づく前に少しでも倒せるんなら怪我も少ないだろ」

「私には狩りは分かりませんが、数が多いと大変ですもんね。遠くから攻撃出来れば楽ですよね」

「あっ!エリスが嫌なら断るぞ」

「え?私・・・私はどちらでも。ボンさんが決めてください」

 俺の提案をエリスは何を思ったのか赤い顔で俯いた。何でだ?

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