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008:ハイラルへ

 クロスケと話をしつつ夜が明けるのを待った。薄っすらと明るくなった頃、エリスが起きてきた。

「おはようございます。ボンさん代わりますから少し休んでください」

「エリス1人で大丈夫なのか」

「えぇ。ダメな時はボンさんを起します」

「そうか。分かった」

 俺は毛布など持っていないのでエリスが寝ていた場所まで下がって横になった。


 2、3時間寝ただろうか。起きると日の光が結構な位置にあった。

「おはよう。エリス」

「おはようございます。寝れましたか?」

「あぁ。バッチリだ」

 エリスが温めてくれた昨夜のスープとパンを頬張る。エリスのスープはやっぱり美味いと思う。エリスの淹れてくれたお茶を啜りながら今日の予定を確認していく。

「今日はハイラルに入るのか?」

「はい。半日ぐらい行くとハイラルに着けると思います。ハイラルに入ったら、教会でボンさんに生活魔法を授けれもらって。その後はハイラルの観光ですかね?何日ぐらい滞在しますか?」

「えっと・・・クロスケ。ハイラルで修行は・・・」

「ふむ。ハイラルの近場に4か所ほどある・・・5日ぐらいでいいじゃろ」

「だそうだ」

「はい。分かりました。それと、これ、ポーションです。時間があったので作りました」

 エリスは赤いビンを俺に寄越して来たが、いつものとちょっと違う。俺は雑貨商で買ったポーションを鞄から取り出して見比べた。

「これって・・・中級ポーション?いつものより赤が濃いけど。お高いんじゃねぇの?」

「売値は分かりませんけど、素材は普通に採取できる薬草ですから。上級は設備がないと出来ませんけど、中級までなら、この錬成空間で直ぐに作れますよ」

 エリスは手のひらを上にして両手の出し、ブラックホールのような黒っぽい丸い球体を作った。

「すげぇ!エリスってもしかして、とんでもない錬金術師なのか?」

「いえいえ。上の下ぐらいです。上級錬金術師ならこれぐらい普通ですよ」

「・・・分かんねことバッカリだ」


「そう言えば・・・昨日の行商はどうしたんだ?謝りに来たのか?」

「いいえ。ボンさんが寝て直ぐぐらいにそそくさと出て行きましたよ。歩けない護衛は馬車に乗ってたみたいです」

「何だかなぁ。あいつ等、エリスに謝罪ぐらいしろよ。まぁ慰謝料で金貨5枚貰ったからハイラルでは宿に泊るか。エリスの分もあるぞ」

「えぇ?金貨5枚?大金ですよ。4人家族なら2年ぐらい生活できます」

「いいんだよ。あいつ等はそんだけの事をやったんだから。さて、俺たちも出発しよか」

 カップを仕舞い、エリスが鞄を担ごうとした所で、俺はロバの事を思い出した。

「そうだ。荷物運びに便利なのがある、いや、居るんだ」

 俺はペットのロバを召喚した。

「ロバのロシナンテだ」

「ボンさんって、召喚魔法が使えるんですね。結構、珍しい魔法なんですけど・・・」

「そうか。珍しいのか・・・俺が召喚できるのは、こいつと猫のタマだけなんだ。召喚はクロスケからスクロールを貰ったから出来るんだけどな」

 俺は猫のタマも呼び出した。

「あっ!カワイイ」

 エリスはタマを抱っこして撫でまわし、ご満悦だった。俺はエリスの鞄をロシナンテに載せて落ちないように括りつけた。


 俺たちはハイラルに向けて街道を歩き出した。今日は話すことねぇなと思っていると、エリスは街道脇の草むらにしゃがみ何かを取り始めた。

「どうした?何か珍しい草なのか?」

「これはポーションになる薬草です。こんな道端にも生えてるんですね・・・」

「この辺は村から遠いから誰も採りに来ねぇんじゃねぇの?」

「そうかもしれませんね。少し取りながら進みましょうか。この薬草があるとボンさんのポーションも出来ますし」

 俺とエリスは移動しつつ、時折道端で草を摘む。俺には雑草と薬草の見分けがいまいちつかない。これも経験の差なのだろうとは思うのだが、エリスに渡した8割ぐらいが道端に捨てられる。

 休憩を挟みながら薬草を採取しつつ歩くこと半日、俺たちはハイラルの街が見える丘の上に出た。


 ハイラルは丘の上に領主館があり、少し下った所に初期のハイラルの名残の塀があり、その周りに新しく作られた家々が並び建っている。ここの建物は屋根はオレンジだが石壁は石色そのままでベリカ村のように白には塗っていないようだった。丘の下には大きな川が流れ、その水を生活や農業に使い、豊かな農村地帯となっていた。

「これがハイラルか・・・大きな街だな」

「ええ。ハイラルは農業が盛んなので美味しい野菜や料理があるみたいです」

「そりゃあ楽しみだ」

 ハイラルに入る前にロシナンテを送還して、エリスの鞄は俺が持っている。そして、俺たちはハイラルの街の門前で衛兵の検査を受け、俺は冒険者証、エリスは錬金術士証をだしてハイラルの街に入った。

「取りあえず、組合に寄って安くて良い宿を聞いてみましょう」

「組合?」

「ええ。錬金術士組合が大きな街にはあるので、そこで聞くと街のどの辺りに何があるかとか、安い宿、美味い食堂なども教えてくれますよ。冒険者組合も同じだと思いますよ」

「冒険者組合もあるのか。行った事ねぇな。証明書もクロスケから貰ったし」

 エリスは無言で俺を凝視した。

「・・・」


 錬金術士組合は石造りの2階建て。1階は依頼や納品の受付、売店、2階は事務所らしい。エリスは受付で登録証を出して宿と食堂を聞いている。暇な俺は売店を覗く。手前のガラスケースには、何に使うのか良く分からない機材が並んでいる。後の棚には色んな色、大きさも様々なポーションが並んでいる。俺に分かるのは赤の回復、青の気力ぐらいだが、緑や黄、紫の物もあるよだった。


 エリスが聞いた街情報で数件の宿を廻った。1軒目は安い宿。値段相応の佇まいで貧乏冒険者が良く利用するらしい宿で俺は良いがエリスには遠慮して欲しい部類の宿だった。2件目は普通の宿。まぁ普通だな。3件目は中ぐらいの宿。部屋に鍵が掛かり宿への出入りもチェックされる仕様らしい。1階にある食堂やサロンも申し分ない。料金も特に問題なさそうなのでこの宿にすることにした。

 1人部屋を2つ借りる。受付で『ご夫婦ですか?』と聞かれた時は2人して焦った。夕飯には早い時間なので荷物を部屋に置き、2人で街の散策に出掛けることにした。

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